韓国の電力自由化

韓国の電気事業

韓国のエネルギー資源は、石炭、石油、天然ガス、水力などがありますが、いずれも埋蔵量や包蔵水力が極めて極めて少ないため、エネルギー供給量のほとんどを輸入に頼っています。

そのため自給率の向上を目標に、原子力開発が積極的に進められてきました。例えば、2008年に策定された「第一次国家エネルギー基本計画」では、原子力による発電設備の比率を2030年までに41%に引き上げる方針が示されました。しかし、福島第一原子力発電所事故等を考慮したことで、2013年に策定された第二次計画は、2035年までに29%増とするに留める修正が入りました。

また、エネルギーの安定供給を目指し、天然ガス開発などの国内での資源開発も進めています。そして、エネルギーの効率的利用を促進するとともに、地球温暖化対策として太陽光発電風力発電といった、再生可能エネルギーの開発を進めています。

再生可能エネルギー発電の普及策については、2002年から固定価格買取制度(FIT)が導入されました。これは、個人や法人が発電した再生可能エネルギーを国が定めた価格で電力会社に販売できる制度です。また、2008年の第三次新・再生エネルギー技術開発、及び普及の基本計画において、2030年には再生可能エネルギー全体でエネルギー供給量の11%にする計画が示されました。

韓国の電力自由化

韓国の電力自由化への取り組みはもともと1989年に始まりましたが、電力自由化への本格的な流れが始まったのは2000年前半からです。韓国の電機事業は今まで韓国電力、韓電、もしくはKEPCOと呼ばれる国有企業である韓国電力公社が発電、送電、配電の全てを独占し、発送配一貫の独占供給を行っていました。

その後、KEPCOは1989年に株式公開され民間企業になりました。しかし、当時の韓国政府は株式の5割程度を保有したままで、新規で電力業界に参入してくる企業の妨げとなりました。

2001年には、発電部門の新規参入を認める法律が公布され、その結果、KEPCO は分社化され新規参入も可能になりました。2001年に経済構造改革の一環として電力自由化が実施された結果、KEPCOの発電部門は6社に分割・子会社化され、残りの送電や配電及び供給部門はKEPCO本体が引き継ぎを保持されることになりました。

もともとはKEPCOの発電部門が分割された上で配電を担う電力会社の株式公開が行われるはずでした。しかし、市場環境の悪化によって株式公開はできない状態になってしまい、2004年には配電部門の民営化の中止が決定しました。

さらに、韓国政府は発電部門の自由化は認めたものの、電力の小売り価格を決める権限を持ち続け、電力の卸売りができたのはKEPCOのみでした。このように韓国政府は、発電部門の自由化は認めましたが、小売部門の自由化までは認めていませんでした。

小売部門に関しては、韓国はKEPCOが基本的に小売りを独占しているので一般需要家が支払う電気料金は国から定められた変動しない価格となっています。つまり卸価格が変動しても小売価格は変えられず、小売り自由化については原価以下に押さえられている家庭用・農業用電気料金の扱いが難しくなっています。

高騰した発電価格と変動できない小売価格の間に挟まれたKEPCOは2008年以降も赤字が続きました。その結果、韓国の電力自由化が認められたのは「発電部門」のみで、小売りに関して自由化はされず、KEPCOの独占状態が続いています。このように、韓国は日本とは違った電力自由化の仕組みを採用することとなりました。

電力不足の懸念

韓国では電力不足が懸念されています。2013年に原発に使われる部品の安全証明者が偽造されていることが発覚しました。このことが原因で2013年には稼働中だった原発2基の運転が停止され、当時全23基の原発があった中で10基が運転していないことになっていました。その影響が、韓国の電力不足の懸念につながっているのです。

また、KEPCOの電気料金水準が低いために、需要家の多くがエアコンで暖房しているという状況が冬季の最大電力を引き上げる原因になっています。このため発電所の定期点検期間が春と秋に限定されてしまい、電力不足に陥るリスクが高まります。

2011年9月には、多くの発電所が定期点検に入る中、突然気温が上昇し、供給力不足により合計5時間にも及ぶ輪番停電が実施されました。輪番停電とは、国内で電気が使える地域と停電地域を当番制で分け、代わる代わる電力を使うことです。

この輪番停電は60万世帯に影響を及ぼす結果となりました。政府はこうした状況を打開するためにも、2011年から夏季と冬季にビルの温度規制を実施するとともに、大口需要家に電力需給調整の強化を指示するなどして、非常時電力需給対策を実施しています。

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