固定価格買取制度

固定価格買取制度とは

固定価格買取制度は、再生可能エネルギーなどで発電された電力の買い取り価格を法律で定め、普及促進させるための助成制度のことです。この制度により、系統運営者や電力供給事業者は、再生可能エネルギー発電者が発電した電力を定められた価格で一定期間買い取ることを義務付けられます。

この買取に要する費用負担は、電気を利用する国民全員から、2014年8月より再生可能エネルギー発電促進賦課金(以下、再エネ賦課金)という形で収集されています。つまり、再エネ賦課金は、電気料金に上乗せされる形で、電力会社より各需要家に請求されます。なお、再エネ賦課金は、年度ごとに国が全国一律で決定しており、全国全ての電力会社で同一の料金体系となっております。

日本の固定価格買い取り制度の歴史

日本では、1970年代の石油危機を契機に、新エネルギー技術開発計画や地球環境技術開発計画などを通じて、エネルギー問題とそれに付随する環境問題の抜本的な解決を目指すようになりました。その中の一つとして、1992年から電力会社による太陽光発電システムのみを対象としたボランタリーな余剰電力買取制度が始まりました。

当初の余剰電力買取制度は、再生可能エネルギーにより発電した電力を、各電力会社が自主的に、自社が販売する電力料金で買い取るものでした。制度の採択後は徐々に太陽光パネルの量を拡大していき、2004年には太陽光発電では世界一の生産量を有するまでとなりました。しかし、2005年に住宅用の補助制度が打ち切られてからは他国の後塵を拝する形となり、市場も縮小していきました。

そのため、2009年1月に補助制度が復活することとなりました。また、経済産業省により初期投資の費用を10年で回収できる買取価格の増加計画が発表されました。買取価格変更計画は同年の11月に採択され、その後の太陽光発電システムの出荷量を飛躍的に増やす効果をもたらしました。ただし、再生可能エネルギーでも太陽光発電に限定した支援であり、その他の再エネが普及しないことが課題となりました。

全量性固定価格買取制度の導入

東日本大震災への対応により当時の菅直人首相が、退陣の条件として固定価格買取制度の成立を掲げたことが、議論の場の創造、そして制度成立のきっかけとなりました。これにより、余剰制度から全量制への以降に加え、太陽光発電だけではなく、水力、風力、地熱、バイオマスにも経済インセンティブを付与する議論が進められることとなりました。

RPS制度から固定価格買取制度への移行に関しては過去にも議論が展開されており、2005年には総合資源エネルギー調査会新エネルギー部会においてRPS法評価検討小委員会が開催されました。ここではRPS制度の再生可能エネルギー普及効果に疑問が投げかけられており、対象電源毎の特徴にあった個別の適正な取引価格を決める等固定価格制度への改正も含めた抜本的な見直しが必要だとする意見が報告されました。

また、競争力のない再生可能エネルギー発電の開発が進まないことや、諸外国を事例とした固定価格買取制度の高い再生可能エネルギー発電普及効果、そして脱原発による将来的な代替エネルギーの模索などの条件が加わり、2012年の7月1日から、全量性の固定価格買取制度が始まりました。

RPS制度から固定価格買取制度に

日本の再生可能エネルギー発電普及政策は、補助金や税制上の優遇措置など、従来型の政策のみの手法から、2003年4月にRPS制度の導入へと移行しました。

その後、日本版RPS制度は、上記の通り、2012年7月当時、再生可能エネルギー発電のより高い普及効果が見込まれる固定価格買い取り制度(FIT)へと移行しました。

RPS制度においては、再生可能エネルギー発電の導入量が定められるが、固定価格買取制度においては、買取価格が発電費用を回収できる水準に定められます。そのため、固定価格買取制度はRPS制度とは異なり、再生可能エネルギー発電の導入量が、システム価格の下落や、制度の認知度向上、制度廃止を見越した駆け込み需要など、社会的要因により大きく変動します。

また、価格が予め決定されているため、化石燃料や原子力、そして各種の再生可能エネルギーによる発電事業者との間で価格競争を行う必要がなくなります。

このような性質を持つため、固定価格買取制度は、NFFOなど初期のRPS制度にみられる供給プッシュ型の政策ではなく、需要プル型の政策であるということができます。

固定価格買取制度の目的は、再生可能エネルギー発電の普及による環境問題への対処や、石油資源に対する代替エネルギーの確保、そして量産効果による価格の低下にあります。一方で、買取価格は普及量や生産コストの推移によって定期的に見直され、計画に従って逓減していきます。

このように固定価格買取制度は、法律に定められた期間の経済的助成が保障されるほか、生産コストや社会的状況の変化、技術の発達具合に応じて助成の水準を調整できる性質を持っています。

海外の固定価格買取制度の歴史

下記にて、海外の固定価格買取制度に関する歴史の事例を見ていきます。

世界初の固定価格買取制度

固定価格買取制度が最初に導入されたのは、アメリカのカーター政権時代であり、1978年10月に成立した公益事業規制政策法Public Utility Regulatory Policies Act(PURPA法)と考えられます。これは、アメリカの再生可能エネルギー発電促進法で、固定価格買取制度の仕組みを利用した最初の法律です。

この法律は、再生可能エネルギー発電とコージェネレーションの育成策として、回避費用 と同じ水準で電力会社に再生可能エネルギー電力の買取義務を課しました。

デンマーク

デンマークでも1984年に風力発電協同組合と電力会社と政府との三者合意によって固定価格買取制度が導入されました。

この三者合意は、風力発電で発電した電気を、10年間、平均電気料金の85%の値段で買い取るというものです。第2次世界大戦中に石油や石炭の欠乏対策として風車が普及した下地もあり、制度の導入後はより風力発電の普及が推し進められることとなりました。

ドイツ

1991年、固定価格買取制度の原型となった電力供給法が制定されました。この制度は、北海とバルト海の海岸線を持ち、年中北風が吹きこむ地域特性を利用するため、主に風力発電の拡大を狙って制定されました。

この制度により、ドイツの風力発電量は急速に伸びていきました。それまで世界の風力発電は、アメリカのカリフォルニア州とデンマークが主導していましたが、制度導入以降はドイツの風力発電が成長を続け、1997年には累積設置容量でアメリカのカリフォルニア州を逆転し、世界最大の風力発電国になりました。

電力供給法では、再生可能エネルギー発電普及に伴う経済的負担が、再生可能エネルギー電力を買い取った電力会社に集中するような仕組みとなっていました。

そのため、風力発電が急増した地域の電力を供給する電力会社は、その費用負担により経営が悪化することとなりました。その状況から逃れるため、電力事業者はこの法律は市場競争を妨げる不当なものであるとして訴訟を起こし、連邦基本法裁判所(最高裁)で争いました。しかし、最終的に電力事業者は敗訴する結果となりました。

また、買取価格に関してデンマークから制度を輸入したドイツでは、デンマークで定められた買取価格である平均電気料金の85%を四捨五入して、平均電気料金の90%を買取価格として定めていました。

その結果、風の強い北部の風力発電は導入が進んで急激に伸びたものの、条件の悪い地域の風力発電や、太陽光など他の種類の再生可能エネルギー発電は経済的インセンティブを得られないため、ほとんど普及することはありませんでした。

こうした2つの問題を解決したのが、1998年に政権についた社会民主党と緑の党との連立政権です。アーヘン市が1995年から試みていた仕組みを参考にして、連邦政府の電力供給法を見直しました。

アーヘン市では、連邦政府の政策では自然エネルギーが普及しなかったという問題意識を基に、1995年から電気料金に地方税を上乗せして、それを原資にして風力発電を電気料金の1.3倍の価格、太陽光発電に至っては10倍以上の価格で買い取ることを定めました。

このモデルはドイツの各都市に広がり、現在のドイツ政府が定めるコストベースの固定価格買取制度へと改正された電力供給法を引継ぎ、2000年には固定価格買取制度である再生可能エネルギー法(EEG)が施行されました。

電力供給法との変更点は多岐にわたりますが、主なものとしては系統への優先接続の確保、20年の固定価格で買取価格を定めたこと、買取価格の逓減率を定めたこと、技術ごとに買取価格が定められたこと、適格技術や設備容量の上限を拡大していること、平準化スキームが法律のなかに明記されたことが挙げられます。その後も、買取価格や逓減率の変更、適格技術や発電規模など、諸条件が社会情勢に合わせて修正されていきました 。

固定価格買取制度のメリット・デメリット

固定価格買取制度のメリットとしては、第1に買取価格が定められているため将来的に回収できる資金が予測し易くなり、事業リスクが少なくなることが挙げられます。

この特長によって金融機関からの資金調達も容易になり、結果として再生可能エネルギー発電の普及が進み、規模の経済による価格低減が促進され、一層の普及が進むという累積的効果がもたらされます。また、長期にわたって価格が保障されるため、短期に資金回収をする必要がなくなり、長期的な視点での事業を可能とします。

第2に、多様な技術や手法の開発が促される点が挙げられます。固定価格買取制度の下では電源によって価格を変動させることが可能であり、コスト的に不利な技術や手法であっても普及が進むためです。

第3に、行政費用、取引費用がRPS制度と比べ低くなる傾向があることが挙げられます。これは、TGCのような市場を新たに作る必要がなく、既存の電力料金システムを基盤とした運用が可能となるためです。しかし、買取価格の改定を頻繁に行えば、行政費用、取引費用もその分大きくなります。

一方で、デメリットもあります。第1に、再生可能電力の導入目標を達成するための買取価格水準を適切に設定することが容易ではないことが挙げられます。

機器メーカーは価格や仕様などの情報を公表しており、発電量もある程度は予測が可能であるため、投資案件として一定の信頼がおける価格を設定することは可能です。

ここで導入目標量との関連で得られ難い情報は、発電事業者による投資の規模です。例えば、IRR を1%上げると、再生可能エネルギー発電への投資が10%上がるという保証はないため、投資の規模を予測することは困難となります。

ほかにも、投資案件の将来的な技術革新の進捗度合いや、量産効果による価格の低下を予め予測することは難しいため、市場価格と買取価格の間に乖離が発生する傾向があります。それらは予定していたIRRを変動させるため、普及や技術の進捗に従って定期的な見直しを行う必要性が出てきます。

第2に、再生可能エネルギー発電の負担を国民に転嫁する部分が挙げられます。そのため、仮にシステム価格が急落し、買取価格の水準が必要以上に高くなると、国民への経済的負担が増大することや、電気料金の値上げが国内産業を空洞化・停滞させる可能性も起こり得ます。

これは再生可能エネルギーの発電事業者が必要以上の利潤を得られる構造になっていることを意味しているため、迅速な修正が求められますが、買取価格の変更は事後的になるため、市場の急速な変化に迅速に対応できない可能性があります。

固定価格買取制度の理論

下記図は、Menanteau et al.(2003)による固定価格買取制度の価格と供給量の関係性を表したものです。

発電事業者が再生可能エネルギー電力を発電するのに必要になってくる限界費用曲線は,MCのように表されます。買取価格の算定委員会が価格の水準をPinに定めたとすると、発電事業者は固定価格買取市場において,Qoutまでは利益が出ることとなります。

固定価格買取制度においては、国民一人一人が制度を活用し、発電事業者となることが可能であるため、RPS制度のように0からQoutに向けて再生可能エネルギー発電の普及が進みません。

例えば、自宅の屋根に太陽光パネルを設置したいと考える個人の発電事業者にとって、仮に日照時間などの条件が悪く、太陽光発電の発電効率が他の地域より劣るとしても、わずかでも利益が出るならば発電設備を設置するインセンティブが発生します。

そのため、利益率の低いQoutに近い部分の開発が進む可能性も考えられます。これらにより、あくまで論理上では、経済効率性において固定価格買取制度はRPS制度に劣ることとなります。

固定価格買取制度の価格と供給量の関係性(Menanteau et al.(2003)p802,fig1)