原油スポット価格

原油スポット価格とは

原油スポット価格とは、一定期間先までモノを確保しておく長期契約における価格 (先物価格) とは区別され、その時の需要に基づいて契約の度に当事者間で決定される価格のことです。現物価格とも言います。

先物取引と現物取引

先物取引とは、原油など変動しやすいモノの需要や市場価値の先行きを予測して取引価格を決定し、長期間の供給を“予約”するものです。前もって将来のモノの取引をすることになるため、契約時点では現物の受け渡しは行いません。あらかじめ契約を交わしておくことは、モノを買う側にとっては“在庫を確保できる”、モノを売る側にとっては“安定した売値をつけられる”といったメリットがあります。

現物取引とは、契約時点でモノの受け渡しが前提とされている取引のことです。契約時の需要に基づいて価格設定がされます。先物価格と比べて、現物価格 (スポット価格) の方が需要を反映しやすいため、重要視される傾向にあります。ここで原油市場における現物取引の具体例を挙げたいと思います。

ある日本の会社3社がサウジアラビアとそれぞれ20年間で数万バレルの原油の輸入取引を交わしたとします。この時、20年間分の原油を契約成立時に一度に受け取るわけではなく、20年先までの原油を確保した、ということになります。そこで、この取引の契約期間中にA社で一時的に原油が不足したとします。

その場合、A社は不足分を補うため、サウジアラビアと結んでいる長期的な契約の他に、原油に余剰のあるB社とC社に融通してもらう必要があります。ここでの契約が現物取引です。また、この現物取引が行われる場を『スポット市場』と言います。

現物取引ではその時々の需要を反映させて価格決定を行うため、仮にその後B社の原油が不足し再度現物取引を行うことになったとしても、A社の時の取引価格と同一だとは限りません。この現物取引の価格のことをスポット価格と言い、原油取引のスポット価格を特に『原油スポット価格』と言います。

先物取引の現物取引の成り立ち

古代から、市場といえば現物を持ち寄って、直接売買が行われる場所でした。食糧を主として生活に必要な物資が現物取引で扱われてきました。特に穀物は天候変動や輸送機関の影響により価格の変動が大きくなりやすい傾向にあります。昔は、穀物を保存するための機能性の高い巨大貯蔵庫もなく、秋に収穫をしたらすぐに売る必要がありました。

また、冬になって河川が凍結してしまったら、船で輸送することもできません。そのため、農家は収穫直後に、全てを売り払わなければなりませんでした。その時期には供給量もあるため、穀物は安く売られることになります。しかし、輸送のできなくなる冬場には市場で穀物価格は高騰します。

そこで、農家は作物を売るタイミングをずらし、需要の多い時期に供給することができないかと考えるようになりました。このように、リスクを避けて上手に商売をしようとしたのが先物取引の始まりです。次第に先物取引は穀物のみに限らず、価格変動の大きいモノを数多く取り扱うようになっていきました。

原油に関しては、1973年・1979年の第一次二次石油危機を経て、OPEC (石油輸出国機構) の価格支配が揺らぎ始めると、1983年にNYMEX (ニューヨークマーカンタイル取引所) はWTI (West Texas Intermediate) 原油を上場し、先物取引が行われるようになりました。

世界最大のスポット市場

NYMEX (ニューヨークマーカンタイル取引所)

アメリカ合衆国ニューヨークにある世界最大の商品、エネルギー先物の取引所。代表的な商品として、次の項目で言及する三大指標の一つである、WTI (West Texas Intermediate) 原油を扱っています。

原油価格の三大指標

WTI原油 (West Texas Intermediate)

アメリカ合衆国テキサス州とニューメキシコ州の沿岸部で産出される原油の総称のことです。硫黄分の含有量が0.2パーセント (2016年度) と少なく良質であること、消費地の近くに位置しているため輸送費が比較的かからないことなどからドバイ原油やオマーン原油などに比べて高値で取引されています。また、先物取引における出来高の実績から、WTI原油はアメリカ合衆国内に限らず、世界における原油価格の指標となっています。

ブレント原油

イギリスの北海にあるブレント油田で産出される原油で、EUの原油市場の指標です。WTI原油と並んで、世界の原油市場を支えています。硫黄分の含有量は0.38パーセント (2016年度) でWTI原油に次いで質の高いものとなっています。

③ドバイ原油・オマーン原油

ドバイ原油は、アラブ首長国連邦の構成国の一つであるドバイで産出される原油です。硫黄分を2パーセントほど (2016年度) 含有するものの、仕向地の制限がなくどこにでも輸出ができるために、便利な取引先としてスポット取引が盛んに行われており、中東の原油価格の指標でもあります。

しかし、近年産出量が減少しており、価格指標としての適性を疑問視されていました。そこで、中東のオマーンで産出されるオマーン原油が新たに価格指標に加わりました。オマーン原油はドバイ原油と同じく仕向地の制限を持たず、ドバイ原油よりも産出量が安定しています。