WTI原油

WTI原油とは

世界の原油取引は、消費地ごとに、アジア(中東産原油)、欧州(北海ブレンド原油)、北米(WTI原油)の3つの市場が形成されています。世界の原油相場は、これらの価格を相互に参照しながら決まっていきます。

それらのうちの1つであるWTI原油とは、米国テキサス州沿岸部の油田で産出される原油の総称です。WTIはWest Texas Intermediate(ウエスト・テキサス・インターミディエイト)の略称です。

WTI原油はガソリンや灯油が多く含まれ、硫黄分も0.2%ほどと少なく、高品質の原油であることから「軽質スイート原油」とも呼ばれています。暖房の燃料やジェット燃料などにも利用できるため用途が広く、原油価格の「先物取引」の1つでありながら、原油価格全体の代名詞とも言われ、世界経済の重要な経済指標の1つに位置付けられています。

WTI原油の影響力

WTI原油はニューヨーク・マーカンタイル取引所(NYMEX)にて取引されており、北米市場では域内で流通されているほとんどの原油はWTI原油価格に連動して決定されます。そのため、NYMEXで形成されたWTIの先物価格が、北米における原油や石油製品の価格指標となり、現物の価格指標となっています。

WTI原油自体は、一日当たりの産出量は50万バレル前後で、アメリカ国内で産出される原油の約5%、世界で産出される原油の約0,6%と割合は非常に低いです(2011年時点)。しかし、WTI原油を取り扱うNYMEXが、裁定取引が容易などの理由から、流動性や透明性が高く、市場参加者が非常に多い取引所となっています。

さらにWTI原油は世界の原油価格の指標としても大きな影響力を持っています。日本においても、「原油価格=WTI先物価格」として取り扱われています。

その理由として、WTI先物の一日当たりの取引量は約6億バレル(2011年時点) であり、世界最大規模の取引量となっていることがあげられます。また、一日当たりの世界の消費量約8,500万バレルに対し、米国は約1,900万バレル(2011年時点) と世界最大規模のエネルギー消費地であるということも理由の1つです。

WTI 原油の価格動向は、他のエネルギー価格や世界の物流、商品価格に影響し、米国内の消費動向に反映されます。そのため、NYダウや日経平均株価などの世界の株価指数にも影響を与え、世界経済の先行きを予想する重要な経済指標の1つとなっています。

WTI原油活性化の背景

石油需要の拡大

もともと米国には採掘しやすい油田が豊富に存在していました。米国における石油産業は、1859年の機械堀りから始まったと言われています。20世紀以降、石油は自動車や航空機の燃料として用いられるようになり、需要が拡大していきました。

米国のメジャー時代

1960年代までは米国を中心とする石油メジャーと呼ばれる巨大石油資本が石油資源を支配しており、国際的な原油価格もメジャーによって決定されていました。その一方的なやり方に不満を持った産油国は、OPECを結成し、石油価格の安定を要求したが、当時の米国が最大の産油国であったことから、大きな影響を与えることはできませんでした。

OPECの時代

しかし1970年代から、需給バランスの変化により産油国の力が強まると、OPECによる石油会社の国有化が進みました。1973年の第4次中東戦争にて、アラブ産油国がアラブ非友国に石油禁輸を宣言するなどで、OPECの優位性はさらに高まりました。

メジャーが価格をコントロールすることは困難となり、OPEC最大の埋蔵量を持つサウジアラビアがリーダーシップをとるようになっていきました。

市場による価格決定

石油危機による原油価格の高騰により、コストが高い非OPECの原油生産が進み、また、先進国における需要減少や省エネルギー対策も促進しました。徐々に石油価格規制が緩和されていく中、1981年にレーガン大統領が就任すると、それまでの石油価格規制を廃止し、市場メカニズムに任せる方針に転換しました。

1983年にNYMEXでWTIが上場すると、、メジャー、OPECが原油市場を支配する時代が終わり、市場が石油価格を決める時代になりました。

WTI の取引拡大

WTI の上場後、金融機関などの市場参加者の広がりによって徐々に市場が拡大し、商品先物取引の中で高い地位を占めるようになりました。1994年より、サウジアラビアが米国向けの輸出価格について、取引量の多いWTIを指標とする価格フォーミュラを利用し始めました。

WTIが米国産の原油取引だけでなく、他油種の値決めにも適用されたことで、世界的に大きな影響力を持つようになりました。

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