JPEA公開、太陽光発電事業の評価ガイド、保険料率の優遇や融資評価等に利用できる可能性

2018年08月27日

一般社団法人エネルギー情報センター

新電力ネット運営事務局

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現在、太陽光発電事業の評価指針としては、「太陽光発電事業の評価ガイド策定委員会」が2018年6月に策定(2018年7月18日改訂)した「太陽光発電事業の評価ガイド」があります。評価ガイドをうまく活用することによって、メンテナンスや再投資の促進、中古市場の活性化などが実現すると期待されています。

太陽光発電のリスク確認に利用できる「評価ガイド」

太陽光発電事業は、企画立案、設備設計・施工、運用管理、撤去処分に至るまで、さまざまなフェーズにおいてリスクが存在します。リスク自体も多様であり、例えば土地の権利、発電設備の安全性、発電事業の収益性、地域との共生などといったものが存在します。

こうした各種リスクを軽減することができれば、太陽光発電の長期安定電源化に一歩近づきます。リスクの軽減には、そもそも太陽光発電事業にどのようなリスクが存在するかを評価できるようにする必要があります。

現在、太陽光発電事業の評価指針としては、「太陽光発電事業の評価ガイド策定委員会」が2018年6月に策定(2018年7月18日改訂)した「太陽光発電事業の評価ガイド」があります。この評価ガイドは、リスクを評価することで、太陽光発電を長期にわたって安定的な電源としていくための指針です。策定委員会では、太陽光発電関連だけではなく、法律、金融、保険など各分野の専門家が参加して、「太陽光発電」「土地」「土木・構造」の3つのワーキンググループに分かれて検討されました。

評価ガイドの対象は、住宅用以外の太陽光発電設備です。「権原・手続き」、「土木・構造」、「発電設備」の観点におけるリスクの存在を評価する際に、必要な評価項目・ポイントや評価方法がまとめられています。また、太陽光発電は目的に応じて評価項目や評価方法のレベルが異なるため(中古市場における売買や発電設備の安全性チェックなど)、それぞれの目的に応じて必要個所を参照できる作りになっています。

そのため、発電事業の評価結果にもとづく適切な運用だけではなく、これから拡大が予想されている「セカンダリー取引」についても、公的なガイドによる客観的な評価が促進され、取引の活性化につながると考えられます。

保険料率の優遇や融資評価等に使える評価ガイド

評価ガイドはさまざまな場面で利用されることが想定されています(図1)。以下にて、評価ガイドの想定される使い方について、概要を見ていきます。

発電事業者による稼働中の発電所の評価

発電事業者がみずから評価を実施することで、リスクを発見し、保守点検や修繕などを行うことができます。評価ガイドに則った形で事業リスクを低減することで、融資も受けやすくなる可能性があります。

太陽光発電所事業の評価

損保会社は、現在も保険の加入要件として、健全性の評価結果を利用しています。更新時の健全性の確認資料作成の際に、本ガイドの活用が考えられます。また、金融機関は、プロジェクトファイナンス等の組成時において、計画段階から厳しくプロジェクトを評価しており、計画の健全性等を判断する書類作成の際に、評価ガイドの活用が想定されます。

保険契約時における第3者評価を

保険契約時に、評価ガイドにもとづいた第3者による評価が行われることで、リスクの有無が確認できます。大きなリスクがない場合は、保険料率が優遇される可能性もあります。

太陽光発電所運用・保守点検時の評価

保守点検事業者の営業活動時に利用できると考えられます。保守点検事業者は、保守点検契約前に簡易評価を実施し、改修の要否の判断を行う際に、本ガイドの活用が想定されています。

また、既にメンテナンスを実施している発電所において、追加のメンテナスオプションを営業したい場合にも活用できます。発電所の一部または全部の評価を行い、精密点検や是正改修の必要性を明らかにする際に、本ガイドの活用が想定されます。

加えて、評価ガイドを売電収入減少の回避や損保の要件等と絡めてメリットを提示することにより、保守点検契約の機会となり得ます。

購入希望者による第3者評価依頼

発電事業の売買がおこなわれる場合、評価ガイドを客観的な指標とすることができます。評価ガイドにもとづき第3者が評価をおこなうことで、適正な価格が導き出され、売買時のリスクを減らすことができます。透明性が向上すれば、中古市場の活性化にもつながります。

太陽光発電トラブル時の評価

災害による被害発生後や発電電力量低下といったトラブル発生の際に、保守点検事業者等が原因調査に評価ガイドを利用することが考えられます。そのほか、損保の利用要否のための判断等に利用できる可能性もあります。

太陽光発電所売買時の評価

発不動産鑑定士等がエンジニアリングレポートを活用し、鑑定書を作成する際に、本ガイドの活用が想定されます。売買物件の正確なリスク提供により、公平な条件提供による売買市場の透明性の促進が期待できます。

評価ガイドの今後の展開

図1 評価ガイドの今後の展開 出典:太陽光発電協会

JPEA,「太陽光発電事業の評価ガイド」に基づいた「簡易チェックシート」を公開

太陽光発電協会(JPEA)は8月10日、太陽光発電事業が適切に行われているかどうかを簡易的に評価できる「簡易チェックシート」を公開しました。

このチェックシートは、上記の「太陽光発電事業の評価ガイド」に基づき作成されたもので、太陽光発電事業における問題個所の早期発見及び是正の助けとすることを目的として作成されています。

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