水の「蒸発」を利用する新しい再エネ発電、米コロンビア大学発表
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9月26日、英科学誌Nature Communicationsにて、水の「蒸発」を利用する新しい再エネ発電方法が掲載されました。細菌の芽胞が空気中の水分を吸収・放出する際に、膨張と収縮をする特徴を利用して電力を生成する仕組みとなります。
水の「蒸発」を利用する新しい再エネ発電方法
地球上に到達する太陽光のエネルギー量は1m2当たり約1kWです。仮に、地球全体に降り注ぐ太陽エネルギーを100%変換できるとしたら、世界の年間消費エネルギーを、わずか1時間でまかなうことができるほど巨大なエネルギーとなります。
地球の表面で吸収される太陽エネルギーは、概ね半分が水の蒸発を引き起こし、これによって生態系と水資源、気象、気候が影響を受けています。この蒸発をエネルギーに変換できることは、複数の研究で実証されていますが、蒸発エネルギー資源の利用可能性と信頼性、潜在力についての解明はほとんど進んでいません。
そのような中、英科学誌Nature Communicationsにて、水の「蒸発」を利用する新しい再エネ発電方法が掲載されました。バクテリアが空気中の水分を吸収・放出する際に、膨張と収縮をする特徴を利用して電力を生成する仕組みとなります。
アメリカの池や湖の蒸発を電力に、国内の年間発電量の7割に相当
今回の研究においては、水の蒸発というプロセスから回収できるエネルギー量の評価が行われています。研究グループによると、米国内に現存する面積0.1 km2以上の湖沼と貯水池(五大湖を除く)からの水蒸発によって、最大325ギガワットの電力を利用できる可能性があるとしています(図1)。
これは、2015年における米国の年間発電量の約7割に相当するという計算になります。また、今回の研究結果では、太陽光や風力発電と異なり、気象条件の変化による悪影響はさほど大きく受けないことも示されています。
蒸発エネルギーの場合は、太陽の出ていない夜間であっても、十分なエネルギー量を期待できます。その主な理由は、水自体が熱を蓄えることができるからです。日中の時間帯では、日光に由来する熱が水に蓄えられ、夜間はそのエネルギーにより、継続的に水が蒸発していきます。

図1 蒸発エネルギーの密度 出典:コロンビア大学
湖などの蒸発量を半減、水不足への応用可能性
蒸発駆動のシステムは電力を生産するだけではなく、蒸発による水の損失をほぼ半分に減らすことが可能です。そのため、水不足に悩まされている地域においては、こうしたエネルギー回収装置が有利に働く可能性もあります。
蒸発からエネルギーを収穫することは、必然的に蒸発速度を低下させます。したがって、貯留槽(灌漑や水力発電などのため作られたもの)があれば、水の損失を減らすことが別の重要なメリットを生み出します。例えば、水の損失を少なくすることで、農家などが潤沢に水を使用することが可能となります。
今回の研究による、米国内の湖等を利用したモデルでは、年間25兆ガロン、すなわちアメリカ人が消費する水の約5分の1が節約できる計算となりました。
芽胞を塗布したテープの伸縮で発電
蒸発エネルギーを実際に利用するには、空気と水の境界面にエネルギーを摂取する装置を設置する必要があります。湖などから蒸発する水蒸気が、大気中に拡散する前に、特殊な装置で捕捉することになります。
蒸気をエネルギーに変換するプロセスは、細菌の芽胞が利用されます。芽胞は水を吸収すると膨れて、水分がなくなると縮むため、筋肉のように振舞うことが可能です。今回の研究では、胞子を塗布処理したビニールテープが伸び縮みすることによって、エネルギーを採取する構造が考えられています。伸縮するテープの端に発電機を接続することで電気を生み出します。
コロンビア大学のOzgur Sahin氏の研究室で開発された蒸発駆動エンジンは、シャッターを開閉することで湿度を制御し、細菌の胞子を膨張させたり収縮させたりします(図2)。胞子が膨張と収縮を繰り返すことで、発電機により電気を生成することも可能です。

図2 水蒸気で伸縮する.胞子を塗布したビニールテープ 出典:コロンビア大学
今回の研究成果を活用し、世界初の蒸発駆動エンジンを搭載したミニカーが試作されています。ミニカーが動く様子については、以下の動画にて確認することができます。なお、今回の研究については、「U.S. Department of Energy」、「David and Lucile Packard Foundation」、「National Science Foundation」、「Wyss Institute for Biologically Inspired Engineering」によって資金提供されて実施されています。
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