藻のバイオ燃料への転換に道筋、光合成能力を調べる方法開発、九州大学

2017年08月30日

一般社団法人エネルギー情報センター

新電力ネット運営事務局

藻のバイオ燃料への転換に道筋、光合成能力を調べる方法開発、九州大学の写真

8月24日、九州大学は重水を使って、藻類の一種であるミドリムシの光合成能力を調べる方法を開発したと発表しました。ミドリムシは光合成によってバイオ燃料にも使える油脂を造り出しますが、今回の研究により光合成能力の高いミドリムシを選別することで、効率的なエネルギー生成が期待されます。

農業と競合しない「藻」をバイオ燃料に、光合成能力を調べる方法を開発

バイオ燃料は、バイオマスを原料にしてつくられる燃料のことです。二酸化炭素を吸収して成長した植物に由来するため、京都議定書では消費しても二酸化炭素の排出はないものとみなされます。このバイオ燃料のうち、バイオエタノール(ガソリンの代替燃料)とバイオディーゼル(軽油の代替燃料)は、輸送用燃料などとして世界中で利用されています。

日本においては、平成26年4月に閣議決定されたエネルギー基本計画において、バイオ燃料は温室効果ガスを排出しない再生可能エネルギーとして位置付けられ、「国際的な動向や次世代バイオ燃料の技術開発の動向を踏まえつつ、導入を継続する」こととされています。

一方で、バイオ燃料の増産は、食料・飼料価格の高騰だけでなく、自然環境への影響も懸念されます。そのため、欧米では食料競合を招く可能性がある第一世代バイオ燃料の導入を制限し、藻類等を原料とする次世代バイオ燃料の導入や開発を促進しています。

藻類は水中に生息している植物の総称であり、主に光合成によって増殖します。その一部には育成の過程において燃料を生産するものがあり、世界の諸問題に対する効果的な解決策として藻の活用が注目されています。

藻類が注目される理由の一つとして、単位面積当たりのエネルギー生産量がバイオ系では最大という点があります。次世代火力発電協議会の資料によると、藻類は同じ再生可能資源であるパームと比較して、単位面積当たり2-10倍の生産性を持つとしています。また、藻類の培養には、土を必要としないため、農業と競合しないという特徴も持ちます。

こうした次世代エネルギーとして期待される藻類について、九州大学は重水を使って、藻類の一種であるミドリムシの光合成能力を調べる方法を開発したと発表しました。ミドリムシは光合成によってバイオ燃料にも使える油脂を造り出しますが、今回の研究により光合成能力の高いミドリムシを選別することで、効率的なエネルギー生成が期待されます。

光合成の原料となる水の代わりに「重水素」を利用

ミドリムシは光合成によって、水と二酸化炭素から糖類を生産します。ストレス環境下では、この糖類をパラミロン顆粒として備蓄し、さらにバイオ燃料にも使える油脂に転換します。

こうしたプロセスにより藻類はバイオ燃料を作りますが、藻類によるバイオ燃料の実用化には高い光合成能力が要求されます。そのため、光合成能力の高いミドリムシ個体を探し出すことができれば、藻類による再生可能なエネルギーの実用化が前進します。

九州大学の研究グループは、光合成の原料となる水の代わりに、通常の水素よりも重い「重水素」を持つ水(重水)を使って、光合成により重水素をミドリムシに取り込ませました。そして、ラマン分光法を原理とした顕微鏡で観察した所、重水素標識された個体の見分けが実現しました(図1)。この手法は、光合成能力の高いミドリムシを選別する方法として活用が期待できるものです。

光合成により重水素をミドリムシへ取込ませラマン顕微鏡で追跡する手法の模式図

図1 光合成により重水素をミドリムシへ取込ませラマン顕微鏡で追跡する手法の模式図 出典:九州大学

この続きを読むには会員登録(無料)が必要です。

無料会員になると閲覧することができる情報はこちらです
電力の補助金

補助金情報

再エネや省エネ、蓄電池に関する補助金情報を一覧できます

電力料金プラン

料金プラン(Excel含)

全国各地の料金プラン情報をExcelにてダウンロードできます

電力入札

入札情報

官公庁などが調達・売却する電力の入札情報を一覧できます

電力コラム

電力コラム

電力に関するコラムをすべて閲覧することができます

電力プレスリリース

プレスリリース掲載

電力・エネルギーに関するプレスリリースを掲載できます

電力資格

資格取得の支援

電験3種などの資格取得に関する経済支援制度を設けています

はてなブックマーク

執筆者情報

一般社団法人エネルギー情報センターの写真

一般社団法人エネルギー情報センター

新電力ネット運営事務局

EICは、①エネルギーに関する正しい情報を客観的にわかりやすく広くつたえること②ICTとエネルギーを融合させた新たなビジネスを創造すること、に関わる活動を通じて、安定したエネルギーの供給の一助になることを目的として設立された新電力ネットの運営団体。

企業・団体名 一般社団法人エネルギー情報センター
所在地 東京都新宿区新宿2丁目9−22 多摩川新宿ビル3F
電話番号 03-6411-0859
会社HP http://eic-jp.org/
サービス・メディア等 https://www.facebook.com/eicjp
https://twitter.com/EICNET

関連する記事はこちら

ペロブスカイト太陽電池の課題解決と今後の展望の写真

一般社団法人エネルギー情報センター

2024年11月01日

新電力ネット運営事務局

ペロブスカイト太陽電池の課題解決と今後の展望

前編では、ペロブスカイト太陽電池の基本的な特徴やそのメリットについて紹介しました。今回は、性能の安定性や材料に含まれる鉛の問題、エネルギー変換効率などの課題に対する最新の解決策や企業の取り組みを交えて解説します。

ペロブスカイト太陽電池の特徴とメリットの写真

一般社団法人エネルギー情報センター

2024年09月27日

新電力ネット運営事務局

ペロブスカイト太陽電池の特徴とメリット

太陽光発電は、再生可能エネルギーの代表的な存在として世界中で注目を集めています。その中でも、シリコン太陽電池に次ぐ次世代のエネルギー技術として「ペロブスカイト太陽電池」が大きな注目を集めています。ペロブスカイト太陽電池は、軽量で柔軟性があり、従来の太陽電池では難しかった場所での活用が期待されていることから、多様な分野での普及が期待されています。 2024年度には福島県内での実証実験が予定され、日本国内でも本格的な導入に向けた動きが始まっています。注目が集まるペロブスカイト太陽電池について、2回に渡りお伝えします。第1回目では、ペロブスカイト太陽電池の基本的な特徴やメリット、そしてシリコン太陽電池との違いについて、詳しく解説していきます。

2024年度の出力制御②優先給電ルールにおける新たな施策についての写真

一般社団法人エネルギー情報センター

2024年08月28日

新電力ネット運営事務局

2024年度の出力制御②優先給電ルールにおける新たな施策について

再生可能エネルギー(再エネ)の導入拡大が進み、導入量が増えた結果、 電力需要が低い時期には「発電量過多」になり、全国的に 出力制御 が行われるようになってきました。この出力制御について、2回に渡りお伝えしています。 1回目はそもそも出力制御とは何か、増加している要因、過去の事例についてお伝えしました。今回は、経済産業省・資源エネルギー庁が優先給電ルールに基づく新たな施策を公表したので、その内容をご紹介します。

太陽光ケーブル窃盗が再エネ普及を脅かす②ー盗難対策の重要性と太陽光ケーブル盗難から事業者を守るサービスや商品についてーの写真

一般社団法人エネルギー情報センター

2024年07月18日

新電力ネット運営事務局

太陽光ケーブル窃盗が再エネ普及を脅かす②ー盗難対策の重要性と太陽光ケーブル盗難から事業者を守るサービスや商品についてー

太陽光発電施設から銅線が盗まれる事件が後を絶ちません。銅相場が高止まりし、売却狙いの犯罪が再生可能エネルギーの産業を脅かしています。1回目は太陽光発電設備が狙われる理由と自衛についてをお伝えしました。2回目は盗難対策の重要性と太陽光ケーブル盗難から事業者を守るサービスや商品についてお届けします。

太陽光ケーブル窃盗が再エネ普及を脅かす①ー犯罪が増え続ける背景と自衛についてーの写真

一般社団法人エネルギー情報センター

2024年06月13日

新電力ネット運営事務局

太陽光ケーブル窃盗が再エネ普及を脅かす①ー犯罪が増え続ける背景と自衛についてー

太陽光発電施設から銅線が盗まれる事件が後を絶ちません。銅相場が高止まりし、売却狙いの犯罪が再生可能エネルギーの産業を脅かしています。第2回にわたり銅窃盗の再生エネルギー戦略への影響と各企業の防止策についてご紹介します。1回目は太陽光発電設備が狙われる理由と自衛について、2回目は太陽光ケーブル盗難から事業者を守るサービスや商品についてお届けします。

 5日間でわかる 系統用蓄電池ビジネス