発電する「糸」、シャツに織り込み人間の動きで電気を生成、スマートウェアでIoTを身近に
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8月25日、テキサス大学ダラス校は、米韓の研究チームが伸縮やねじれで電気を発生させるハイテク糸を開発したと発表しました。ハイテク糸は「ツイストロン(twistron)」と呼ばれる素材が利用されており、衣服に織り込み発電することで、IoTを身近にする可能性を秘めています。
IoTとスマートウェアの融合、電源確保が課題
スマートテキスタイル(賢い繊維製品)は、生体情報の取得等を通じて、スポーツ、健康管理、医療・介護、人の動きの可視化等の分野において大きな可能性があります(図1)。
このスマートテキスタイルにIoTを用いて、衣服やアクセサリと融合した日常生活を無意識にサポートするスマートウェアには、生活や健康を向上させるポテンシャルがある一方、電源をどのように確保するかという課題があります。

図1 スマートテキスタイルの展開例(医療分野) 出典:あいち産業科学技術総合センター
米韓の研究チーム、カーボンナノチューブ製の発電する「糸」を開発
8月25日、テキサス大学ダラス校は、米韓の研究チームが伸縮やねじれで電気を発生させる発電糸を開発したと発表しました。発電糸はカーボンナノチューブから構成され、「ツイストロン(twistron)」と呼ばれています。衣服に織り込み発電することで、IoTを身近にする可能性を秘めています(図2)。
今回の研究は、韓国の漢陽大学や米テキサス大学ダラス等のバイオ医学、ナノチューブ等の研究者グループが開発しました。成果は米科学誌「サイエンス(Science)」の8月25日号に掲載されています。その中では、ツイストロンがシャツなどに編み込まれることで自己発電できること、その他にも海の波の動きや温度の変化からエネルギーを得ることも可能としています。
テキサス大ダラス校ナノテク研究所のNa Li博士は、「ツイストロンはスーパーキャパシターです。通常の蓄電器では、電力を直接充電する必要がありますが、ツイストロンではその必要はありません。カーボンナノチューブから構成された糸を電解液槽に浸すと帯電するため、外部からの電力がなくても蓄電できます」としています。
基本的に大規模発電向きではなく、連続的に電源が必要な装置等の使用に向いています。電気エネルギーは、糸を1秒間に30回程度伸縮させる場合、1kg当たり250Wを生産できます。
ツイストロンが捻じれたり伸びたりすることで糸の体積が減少し、電圧が上昇することで電気を収穫することが可能となります。また、電気を発生させるには、糸を電解液に浸すか、もしくはコーティングする必要があります。

図2 カーボンナノチューブで構成される発電糸 出典:University of Texas at Dallas
小さなLEDの点灯に成功
論文によると、屋内実験では、イエバエの体重にも満たない量のツイストロンが伸縮するたびに、小型のLEDを点灯できたとしています。また別の実験では、ツイストロン糸をシャツに縫い込むことで、呼吸が糸を引きのばし、呼吸センサーを自己電源で稼働させる可能性を示しました。
ナノテク研究所のディレクターであるRay Baughman博士は、「人間の動きから電気エネルギーを収穫することは、バッテリーを不要にするための1つの方法です。今回の研究は、これまで文献で報告されている他の繊維と比較して、重量あたり100倍以上の電力を生産しました。」としています。
また、Na Li博士は「IoTに電力を供給するため、廃棄物エネルギーを使用することには、多くの関心が集まっています。今回のツイストロンの技術は、バッテリーの交換が実用的でないような用途に利用される可能性があります。」としています。
海洋の波を利用して発電
ツイストロンにおける電解液は、一般的な食卓塩と水の混合液といった簡易的なもので作動しますが、研究チームは化学的に複雑な海水でも機能することを示しました。
実証実証では、風船とシンカー(オモリ)の間に、10センチメートルのツイストロンが取り付けられました。糸の重さは1ミリグラム(蚊の重量と同等)となります。波が到着するたびにバルーンが上下動することで、糸が25%ほど引きのばされて電気を発生させることに成功しました。
Ray Baughman博士は、「ツイストロンが安価に製造できるならば、海洋の波から得られる膨大なエネルギーを最終的に電気として収穫できるかもしない」としています。ただ、現状ではセンサーの活用に適しており、31ミリグラムの発電糸があれば、2キロバイトのパケットを半径100メートル以上送信するのに必要な電気エネルギーを提供できるとしています。
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