電波が直接届かない場所でドローンを制御、電力設備を点検するドローンの開発目指す

2017年08月22日

一般社団法人エネルギー情報センター

新電力ネット運営事務局

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8月18日、電源開発と情報通信研究機構は、「ドローンを活用した電力設備点検のための無線伝送システムの共同研究」を進めることとなり、契約を締結したと発表しました。電波が直接届かない場所でドローンを制御することで、足場の悪い山中を移動する必要性がなくなり、作業効率の大幅な改善が期待されます。

電波が直接届かない場所でドローンを制御する技術、電源設備の点検に利用

電力インフラにおける送電線や鉄塔の巡視・点検では、習熟した保全作業員による目視点検が現在の主流となっています。ただし、山間部などのアクセスしにくい場所を点検する場合、点検場所までの移動に時間がかかるほか、高所作業では危険が伴います。

そこでドローンを使用することで、高所の送電線や鉄塔上部の画像を撮影することができ、迅速な状況把握・作業時間の短縮・安全性の向上に繋がります。ただ、一般的にドローンを運航する場合、操縦者とドローンの間に山や樹木等の障害物があると電波は弱くなったり途切れたりします。そうなると、ドローンの制御や状態監視ができなくなります。

そうした電波の問題があり、操縦者から直接電波の見通しが取れる範囲、あるいは目視可能の範囲内でしかドローンの運航はできませんでした。つまり、山中に広域にわたって設置されている送電線等を点検するケースにおいては、山や樹木により見通しが遮られることが多くなるため、ドローンを活用することは難しくなります。

こうした中、電源開発と情報通信研究機構は、「ドローンを活用した電力設備点検のための無線伝送システムの共同研究」を進めることとなり、契約を締結したと発表しました。これにより、電波が直接届かない場所で、電力設備点検ドローンを制御する技術の研究が進められることとなります。

直接電波見通し外のドローン運航を可能とする「タフ・ワイヤレス」

情報通信研究機構では、内閣府が進める革新的研究開発推進プログラムの一環であるタフ・ロボティクス・チャレンジの中で、直接電波見通し外のドローン運航を可能とする、マルチホップ中継制御通信システム「タフ・ワイヤレス」の開発を進めてきました。

直接電波見通し外とは

操縦者の制御端末からドローンまでの間、山や樹木等に遮られて電波が直接到達しない状況。

この技術は、免許不要な周波数の1つである920MHz帯を用いて、最大2台までの地上設置あるいは別のドローンに搭載された中継局を介し、バケツリレーのように通信信号をつないでドローンを制御します。また、ドローンの位置、高度や姿勢等のテレメトリ受信により、状態監視を可能とします。

このシステムの大きな特徴としては、操縦者側でコマンドを送信してからドローンに到達するまでの遅延時間が0.06秒程度と非常に短いことです。加えて、ドローンの移動により途中の中継経路が切り替わったとしても、通信信号が途中で切れることがなく、連続して制御と状態監視ができます。

電力設備点検ドローン、目視外でも制御、山間部での作業効率化

電源開発は、ドローンを活用して電力設備点検の効率化を目指すための研究開発を実施していますが、特に山間部では山や樹木に遮蔽されて電波が届かず、また携帯電話も圏外となる場所が多くあるため、ドローンの運用範囲には限界がありました。

一方で情報通信研究機構は、上記のように見通し外のドローンとの間の通信を確保して、安全運航を可能とする「タフ・ワイヤレス」の開発に取り組んでいます。この技術は、通信料金がかからず、低コストで比較的長距離の通信が可能な920MHz帯を用いるものです。ドローンの操縦者から見て目視外で、かつ電波が直接届かない環境でも、別のドローンを無線中継用として飛行させることにより、見通し外のドローンとの間の通信を確保します(図1)。

今回の共同研究では、情報通信研究機構が開発する「直接電波見通し外」で安全にドローンを運航するための技術を、山中等の電力設備点検ドローンに応用するためのシステム研究が行われます。電源開発が開発する電力設備点検用ドローンに適用することで、山間部での点検作業の大幅な効率化を図るための検証・評価が行われます。

共同研究では、ドローンを見通し外で運航する際の無線中継方法、飛行ルートの選定、運航条件・運航制約の検討並びにドローンの運用方法、さらにはコマンドやテレメトリ等の通信品質及び電力設備点検への有効性の検証・評価が行われます。平成31年度の導入を目指し、研究が進められます。

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