業界初、エネルギーハーベスティングによるIoT技術を活用したスマート農業
| 政策/動向 | 再エネ | IT | モビリティ | 技術/サービス | 金融 |
一般社団法人エネルギー情報センター

4月25日、ふくしま未来農業協同組合は、NTT東日本の圃場センシングソリューションを導入し、4月より運用を開始したと発表しました。果樹の防霜対策を目的としており、業界初のエネルギーハーベスティングによるスマート農業の推進事例となります。
業界初、エネルギーハーべスティングでスマート農業
JAふくしま未来の管内は、全国有数の果樹(桃・梨・苺・林檎・あんぽ柿等)、そして野菜(胡瓜・とまと・にら・なす等)の産地であり、さらに、米・花卉・畜産とバランスのとれた産地となっています。こうした果樹の栽培において、「霜」は重大な被害をもたらすこともありますが、その対策に発生する人的負担が課題となっていました。
JAふくしま未来によるこれまでの「霜」対策は、果樹園地内で燃焼剤を燃やし空気を対流させ温度を上げるものでした。毎年果樹の開花期となる4月から防霜対策本部が設置され、霜注意報が発令されると職員・組合員約60人が、福島地区に点在する56箇所の観測地の温度を夜明けまで観測する形です。
そのような人的負担があるので、これまでも温度観測の自動化は検討されてきましたが、回線コストや電源設置の必要性から導入が見送られてきました。しかしながら、回線費用を抑えられ、かつ電源不要なメリットが後押しし、JAふくしま未来は「eセンシング For アグリ」の運用を4月より開始しています。今回の取り組みは、エネルギーハーベスティングに基づくLPWA(省電力で通信できる無線通信技術)を利用したセンシングによる生産管理を行う、業界で初めての事例となります。
収集したデータで生産性向上をサポート
「eセンシング For アグリ」とは、スマートフォンアプリやPC等を用いて、「温度」・「湿度」・「照度」などの圃場環境を“見える化”するソリューションです。電源不要のセンサーと無線通信機器を圃場に設置することで、NTT東日本が提供するオンラインストレージサービス「フレッツ・あずけ~る」にセンシングデータが自動収集されます(図1)。
特徴としては、まず小型太陽光パネルを利用したエネルギーハーベスティング(環境発電)により、電源工事不要でセンサーや無線通信用送信機の設置が手軽にできる点が挙げられます。また、センシングデータを無線通信(LPWA)経由で受信機に送信するので、センサーごとのモバイル回線の費用を負担する必要がありません。加えて、観測データはインターネット経由で確認することができるので、農業従事者同士で情報共有が可能となります。収集した観測データはスマートフォンのアプリ上で閲覧できるほか、観測データが事前に設定した閾値に達した場合は警報メールが送信されます。
この「eセンシング For アグリ」で収集されたセンシングデータは、農業の生産性向上のサポートに役立ちます。例えば、観測データに基づいた営農指導、農業従事者同士の栽培に関する情報交換、熱中症予防の呼びかけなどが挙げられます。

図1 「eセンシング For アグリ」の概要 出典:NTT東日本
農業データ連携基盤が本年中に構築予定
今回の事業におけるキーワードの一つ「スマート農業」とは、先端技術を活用したイノベーションにより「超省力」「快適作業」「精密・高品質」を実現する新時代の農業です。日本においては、平成28年6月に名目GDP600兆円に向けた成長戦略として「日本再興戦略2016」が閣議決定され、農業分野では「革新的技術の導入による生産性の抜本的改善」が掲げられました。この中で「AIやIoTの活用により飛躍的な生産性の向上を図るプロジェクトの実施」等の旨が記載されました。
農業が抱える課題と人工知能やIoTの活用の可能性としては、例えば農業就業者の減少・人手不足に対する対策があります。例えば、ロボット化・自動化された超省力農業や、病害虫の画像解析等で誰でも取り組みやすい農業の実現が期待されます。そのほか、収益性の確保・未知リスクの顕在化・生産・流通・消費の連携・効率化といった効果により、新たな価値を創出していくと想定されます(図2)。

図2 農業における人工知能やIoTの活用の可能性 出典:農林水産省
この続きを読むには会員登録(無料)が必要です。
無料会員になると閲覧することができる情報はこちらです
執筆者情報

一般社団法人エネルギー情報センター
EICは、①エネルギーに関する正しい情報を客観的にわかりやすく広くつたえること②ICTとエネルギーを融合させた新たなビジネスを創造すること、に関わる活動を通じて、安定したエネルギーの供給の一助になることを目的として設立された新電力ネットの運営団体。
| 企業・団体名 | 一般社団法人エネルギー情報センター |
|---|---|
| 所在地 | 東京都新宿区新宿2丁目9−22 多摩川新宿ビル3F |
| 電話番号 | 03-6411-0859 |
| 会社HP | http://eic-jp.org/ |
| サービス・メディア等 | https://www.facebook.com/eicjp
https://twitter.com/EICNET |
関連する記事はこちら
一般社団法人エネルギー情報センター
2025年09月22日
電力市場の収益ブレを見える化する──リスク管理の標準化を支えるEneRisQ®
本記事では、電力市場におけるリスク管理の課題を解決するソリューション「EneRisQ®」をご紹介します。大阪ガスとオージス総研の知見を融合し、収益のブレを定量的に把握し、最適なヘッジ戦略を支援。属人的なExcel管理から脱却し、リスク管理業務の高度化を実現します。
一般社団法人エネルギー情報センター
2025年05月19日
【第3回】電気主任技術者の人材不足とは? 〜効率的な保安制度の構築と今後の展望〜
これまで2回にわたり、電気主任技術者の人材不足に関する背景や、業界・行政による育成・確保の取り組みを紹介してきました。最終回となる今回は、『制度』の観点からこの課題を詳しく見ていきます。特に、保安業務の効率化やスマート保安の導入、制度改革の現状と課題を具体例とともに解説し、今後の展望を詳しく見ていきます。
一般社団法人エネルギー情報センター
2025年04月30日
【第2回】電気主任技術者の人材不足とは? 〜人材育成の最前線、業界と行政が進める具体策〜
電気主任技術者をめぐる人材不足の問題は、再生可能エネルギーやEVインフラの急拡大と相まって、ますます深刻さを増しています。 こうした状況に対し、国や業界団体は「人材育成・確保」と「制度改革」の両面から対策を進めており、現場ではすでに具体的な動きが始まっています。 第2回となる今回は、人材不足に対し、業界や行政がどのような対策を講じているのか、具体的な施策を、実例を交えながら、詳しくお伝えします。
一般社団法人エネルギー情報センター
2025年04月25日
蓄電池、給湯器などを活用したDRready対応の新たなビジネス創出、2029年度にはDR対応のヒートポンプ給湯器が導入見込み
日本においては再エネの急速な導入拡大に伴い、発電量過多によって電力の無駄が発生する時間帯が頻発することが課題となっています。そのための対策の一つとしてデマンドレスポンス(DR)が挙げられ、本記事では低圧分野における給湯器・蓄電池を活用した今後のDRの市場や可能性について見ていきます。
一般社団法人エネルギー情報センター
2024年11月16日
蓄電池×新テクノロジーについて第4回に渡ってお伝えしています。前回はドローンに使われている蓄電池についてお伝えしました。今回はIoTと電力・エネルギービジネスの密接な関係についてお伝えします。




























