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第7次エネルギー基本計画について(後編) :原子力発電の役割とカーボンニュートラル実現に向けた政策

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2024年12月17日、経済産業省は「第7次エネルギー基本計画」の原案を公表しました。前編では、日本のエネルギー政策の基本方針や2040年度の電源構成の見通しについて解説し、再生可能エネルギーの導入拡大や火力発電の比率低減が進められている現状をお伝えしました。 後編では、これらの課題に対する解決策として、原子力発電の役割と再評価、エネルギーコストの見通し、そしてカーボンニュートラル※1達成に向けた政策について詳しく解説します。

1. 原子力発電の役割と再評価

原子力発電の政策方針

第7次エネルギー基本計画では、原子力発電を安定した電源として維持し、活用する方針が示されています。安全性の確保を前提に、再稼働や新型炉の導入が進められています。

原子力発電の政策方針

※1 カーボンニュートラル:CO2などの温室効果ガスの排出量を、吸収や除去によって実質ゼロにすることを指します。

背景と具体例

原子力発電は、再生可能エネルギーの発電量が天候に左右されることを補完する安定した電源として重要な役割を果たしています。特に、カーボンニュートラルの実現に向けて、発電時にCO2をほぼ排出しない特長が評価されています。
近年では、安全対策の強化とともに、次世代炉の開発が進められています。小型モジュール炉(SMR)※2や高速炉※3などの新技術が導入されることで、安全性と発電効率の向上が期待されています。

具体的な例として、福井県の高浜原発では、最新の安全対策が導入され、地域との共生を図りながら運転が進められています。また、政府は「次世代革新炉」の開発を推進し、六ヶ所村の再処理工場と連携して燃料サイクルを確立する計画を進めています。

図1 小型モジュール炉(SMR)
出典:原子力にいま起こっているイノベーション(前編)〜次世代の原子炉はどんな姿? 資源エネルギー庁

福島の復興・再生に向けた取り組み

第7次エネルギー基本計画では、福島第一原子力発電所事故の教訓を踏まえ、福島の復興・再生を最重要課題と位置付けています。ALPS処理水※4の海洋放出は国際基準に則り、安全性を確保しながら進められています。同時に、福島イノベーションコースト構想を通じて地域経済の再生を目指し、新たなエネルギー産業の創出を推進しています。こうした取り組みにより、福島県内では太陽光・風力・水素エネルギーの導入が進み、脱炭素社会に向けたモデル地域としての役割を担っています。

図2 福島イノベーション・コースト構想
出典:福島イノベーション・コースト構想とは 福島県 

2. エネルギーコストの見通し

エネルギーコストの政策方針

2040年度に向けて、電気料金の安定化とエネルギーコストの最適化が重要な課題とされています。

背景と具体例

再生可能エネルギーの発展に伴い、太陽光発電や風力発電のコストは低下し、経済的な競争力が向上しています。政府は固定価格買取制度(FIT)※5から市場連動型制度(FIP)※6への移行を進めており、市場競争の中でより最適な価格形成が期待されています。

日本の電力会社はPPA(電力購入契約)※7を活用し、企業向けの再生可能エネルギー供給を拡大しています。これにより、企業は自社の電力コストを抑えながら、CO2排出削減にも寄与する仕組みが普及しつつあります。

また、新技術の導入もエネルギーコストの低減に貢献しています。次世代電池や水素エネルギーの活用が進み、長期的にはエネルギーコストのさらなる削減が見込まれています。特に水素は、製造・貯蔵・輸送技術の向上により、安定したエネルギー供給源としての可能性が高まっています。政府は「水素基本戦略」※8に基づき、2030年までに国内で年間300万トンの水素供給体制を確立し、2040年には1200万トンまで拡大する計画を進めています。

図3 水素エネルギーについて
出典:水素基本戦略 環境省エコジン

さらに、再生可能エネルギーは天候に左右されるため、安定供給を確保するバックアップ電源の整備が不可欠です。政府は、火力発電の高効率化や蓄電技術の開発を進めるとともに、エネルギーミックスの適正化を図り、電力供給の安定化を目指しています。

※5 固定価格買取制度(FIT):再エネ電力を一定価格で買い取る制度。普及を促進したが、コスト負担増を背景に見直しが進んでいる。
※6 市場連動型制度(FIP):再エネの価格を市場価格に連動させ、プレミアム(補助金)を調整する制度。市場競争を促し、コスト削減を目指す。
※7 PPA(電力購入契約):企業や自治体が発電事業者と直接契約し、再エネ電力を導入する仕組み。電力コスト削減と脱炭素経営に貢献。
※8 水素基本戦略:水素の製造・供給拡大を目指す政府の計画。2040年に1200万トンの供給体制を構築し、脱炭素社会の実現を目指す。

3.カーボンニュートラル達成に向けた政策

カーボンニュートラルの政策方針

2040年度のエネルギー構成では、再生可能エネルギーの比率を40〜50%に引き上げる方針が示されています。カーボンニュートラル達成のために、技術革新と制度改革が不可欠です。

背景と具体例

太陽光発電を主軸とした再生可能エネルギーの拡大が進む中、政府は地熱発電や中小水力発電の拡大にも力を入れています。地熱発電では、国が掘削調査を支援し、許認可の手続きを円滑化することで、次世代型地熱技術の実用化を推進しています。一方、中小水力発電では、自治体が主体となり、地域資源を活用した取り組みが進められています。

また、水素やアンモニアはカーボンニュートラル実現の鍵を握るエネルギーとされ、政府は「水素社会推進法※9」に基づき、サプライチェーンの構築を強力に支援しています。特に九州では、水素製造拠点の設立が進み、再生可能エネルギーとの連携が模索されています。さらに、火力発電所ではアンモニア混焼技術の導入が進められ、CO2排出の削減が図られています。

加えて、産業部門のCO2排出削減に向けたCCUS技術※10(炭素回収・利用・貯留)の導入も拡大中です。政府は、CCS事業※11への投資を促進するための支援制度の整備、コスト低減に向けた技術開発、貯留地の開発を進めています。こうした取り組みにより、日本はエネルギーの安定供給と経済成長を両立させながら、脱炭素社会の実現を目指しています。

図4 CCSの流れ
出典:知っておきたいエネルギーの基礎用語 ~CO2を集めて埋めて役立てる「CCUS」
資源エネルギー庁

※9 水素社会推進法:水素の製造、貯蔵、輸送、利用の拡大を促進し、カーボンニュートラルの実現を目指す法律です。政府はこの法律に基づき、低炭素水素の供給拡大や関連インフラの整備を進めています。
※10 CCUS技術:工場などで発生した二酸化炭素を回収し、再利用や貯留を行う技術。
※11 CCS事業:回収した二酸化炭素を地中に貯留し、大気への排出を防ぐ技術。

GX2040ビジョンとエネルギー政策の関係

政府は「GX2040ビジョン※12」を掲げ、エネルギー構造の転換を通じた経済成長の実現を目指しています。再生可能エネルギーの活用を最大限に推進し、地域主導のエネルギー開発を促進することで、持続可能なエネルギー供給体制の確立を目指しています。
また、電力の安定供給とコスト抑制のため、電力市場改革を進め、電気料金の安定化に向けた制度整備を強化します。さらに、水素・アンモニアの活用を拡大し、火力発電のCO2排出削減と産業利用を推進することで、脱炭素社会の実現を加速させます。

この施策により、日本のエネルギー供給はより持続可能で安定したものとなり、経済成長と脱炭素化の両立が可能となります。GX2040ビジョンは、再生可能エネルギーの拡大のみならず、エネルギー供給の多様化やコスト最適化を推進しながら、産業競争力の強化にも貢献するものです。エネルギーの安定供給と環境負荷の低減を両立し、長期的な視点で持続可能な社会の実現に寄与する政策として、今後の展開が注目されます。

※12 GX2040ビジョン:日本政府が掲げるグリーントランスフォーメーション(GX)の長期戦略で、2040年までに持続可能なエネルギー社会を実現することを目指す構想です。

まとめ

第7次エネルギー基本計画では、原子力発電の継続的な活用、再生可能エネルギーの拡大、カーボンニュートラル技術の推進が柱となっています。しかし、電力の安定供給やコストの管理、地域との共生など、今後も克服すべき課題が残されています。
2040年に向けて、日本のエネルギー政策はさらなる変革の時を迎えています。持続可能で安定したエネルギー供給を実現するために、技術革新と適切な政策の実行が求められるでしょう。

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