法人向け 家庭向け

第7次エネルギー基本計画について(前編)

一般社団法人エネルギー情報センター

新電力ネット運営事務局

第7次エネルギー基本計画について(前編)の写真

経済産業省は2024年12月17日、有識者会議(総合資源エネルギー調査会・基本政策分科会)を開催し、今後のエネルギー政策の方向性を定める「第7次エネルギー基本計画」の原案を公表しました。本稿では、その概要を2回に分けて解説します。前編では、計画の背景や基本方針、2040年度の電源構成の見通しについてお伝えします。

エネルギー基本計画とは?

日本のエネルギー政策は、経済産業省が策定する「エネルギー基本計画」に基づき方向性が定められています。この計画は約3〜4年ごとに改訂され、長期的なエネルギー供給のあり方や環境対策の指針を示すものです。最新の「第7次エネルギー基本計画」は、2040年度の電源構成を見据えたものであり、エネルギー安全保障やカーボンニュートラル※1の実現に向けた重要な政策指針となります。

※1 カーボンニュートラル:CO2などの温室効果ガスの排出量を、吸収や除去によって実質ゼロにすることを指します。

「S+3E」の基本方針

日本のエネルギー政策は、「S+3E」の原則に基づいています。

  1. Safety(安全性)
  2. 原子力発電の安全対策の強化や、老朽化した火力発電設備の管理が求められます。

  3. Energy Security(エネルギー安全保障)
  4. 輸入依存度を下げ、安定供給を確保するため、多様なエネルギー源の確保が必要です。

  5. Economic Efficiency(経済効率性)
  6. 電気料金の安定化や、再生可能エネルギーのコスト低減が課題となります。

  7. Environment(環境適合性)
  8. 再生可能エネルギーの拡大に加え、CO2排出削減技術の推進が求められます。

2021年に策定された第6次エネルギー基本計画以降、日本と世界のエネルギー環境は大きく変化しました。ロシアのウクライナ侵攻や中東情勢の緊迫化により、エネルギー安全保障の重要性が一層高まっています。

また、グリーントランスフォーメーション(GX)※2の推進を通じた脱炭素化と経済成長の両立が求められ、産業政策の強化も進められています。さらに、データセンターや半導体工場の拡大による電力需要の増加も見込まれています。

こうした状況を踏まえ、日本のエネルギー政策は「S+3E(安全性・安定供給・経済効率性・環境適合性)」の原則を維持しながら、より柔軟かつ現実的なアプローチ**が求められています。

※2 グリーントランスフォーメーション(GX):脱炭素社会の実現を目指し、再生可能エネルギーや水素、CCUS(CO2回収・貯留)などの技術を活用して経済・産業構造を変革する取り組みを指します。

第7次エネルギー基本計画のポイント

経済産業省が2024年12月に公表した原案では、2040年度の電源構成について、以下の見通しを示しています。

出典:エネルギー基本計画(原案)の概要  令和6年12月 資源エネルギー庁

2021年に策定された第6次エネルギー基本計画では、2030年度の電源構成として、再生可能エネルギーを36〜38%、火力発電を41%、原子力を20〜22%とする目標が掲げられていました。

これに対し、第7次エネルギー基本計画では、2040年度を見据え、再生可能エネルギーの比率を40〜50%へと引き上げる方針が示されています。特に、再生可能エネルギーが主力電源となる見通しで、火力発電の比率を減らしつつ、原子力発電を一定規模維持する方針です。

出典:「エネルギー基本計画(原案)の概要 令和6年12月 資源エネルギー」を基に筆者作成

太陽光発電の飛躍的増加

特に注目されるのが、太陽光発電の割合が22〜29%とされ、日本の主要な電源となる見通しである点です。これは現在の9.8%(2023年度)から大幅に増加することを意味し、今後15年間で導入量を3倍に増やす必要があります。

例えば、住宅の屋根やオフィスビル、未利用の土地を活用することで、年間8〜12GWの新規導入を進める計画です。また、最近注目されている「営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)※3」の活用や、工場や空港などのインフラ空間への設置も拡大される見込みです。

しかし、太陽光発電の大量導入には課題もあります。日射量に依存するため、安定供給が難しいことや、発電設備の設置に伴う景観や環境への影響も懸念されています。このため、蓄電池の普及や電力の需給調整技術の高度化も求められます。

※3 営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング):農地の上部に太陽光パネルを設置し、農業を続けながら発電を行う仕組みです。

風力発電の拡大

第7次計画では、洋上風力発電の導入拡大も重要な要素とされています。政府は「グリーントランスフォーメーション(GX)」の一環として、2040年度までに洋上風力の導入量を50GW以上にする目標を掲げています。

日本の洋上風力発電は欧州と比べるとまだ発展途上ですが、日本近海の風況を活かした大規模な洋上風力発電プロジェクトが進行中です。政府は民間企業との連携を強化し、洋上風力発電の導入コストを削減しながら拡大を図る方針です。

次世代技術「ペロブスカイト太陽電池」

第7次計画では、次世代型の太陽光発電技術である「ペロブスカイト太陽電池※4」の導入も推進されます。これは軽量で柔軟性があり、従来のシリコン型太陽電池よりも設置場所の選択肢が広がるというメリットがあります。

経済産業省は2040年度までにペロブスカイト太陽電池の導入量を20GWとする目標を掲げています。これにより、屋根や壁面、さらには窓ガラスなど、これまで活用が難しかった場所にも太陽光発電を導入できるようになります。

※4 ペロブスカイト太陽電池:軽量・柔軟で低コストな次世代型の太陽電池です。従来のシリコン系太陽電池と比べ、薄くて曲げられるため、建物の壁や窓など多様な場所に設置可能です。

まとめ

第7次エネルギー基本計画では、再生可能エネルギーの導入拡大とエネルギー安全保障の強化が大きな柱とされています。特に2040年度には再生可能エネルギーが主要電源となる見通しで、日本のエネルギー政策は大きな転換点を迎えています。しかし、安定供給の確保やコスト管理といった課題も残されています。

後編では、原子力発電の役割と再評価、エネルギーコストの見通し、カーボンニュートラル達成に向けた政策の詳細について詳しく解説します。

はてなブックマーク

執筆者情報

一般社団法人エネルギー情報センターの写真

一般社団法人エネルギー情報センター

新電力ネット運営事務局

EICは、①エネルギーに関する正しい情報を客観的にわかりやすく広くつたえること②ICTとエネルギーを融合させた新たなビジネスを創造すること、に関わる活動を通じて、安定したエネルギーの供給の一助になることを目的として設立された新電力ネットの運営団体。

企業・団体名 一般社団法人エネルギー情報センター
所在地 東京都新宿区新宿2丁目9−22 多摩川新宿ビル3F
電話番号 03-6411-0859
会社HP http://eic-jp.org/
サービス・メディア等 https://www.facebook.com/eicjp
https://twitter.com/EICNET

関連する記事はこちら

日本発!次世代ペロブスカイト太陽電池:フレキシブル発電が都市を変える 実装課題と産業戦略【第2回】 — 耐久性・封止・量産(ロールtoロール、封止樹脂の要諦)/コスト学習曲線と標準化(NEDO等)/素材・装置のサプライチェーン再構築の写真

一般社団法人エネルギー情報センター

2025年10月29日

新電力ネット運営事務局

日本発!次世代ペロブスカイト太陽電池:フレキシブル発電が都市を変える 実装課題と産業戦略【第2回】 — 耐久性・封止・量産(ロールtoロール、封止樹脂の要諦)/コスト学習曲線と標準化(NEDO等)/素材・装置のサプライチェーン再構築

前編では、ペロブスカイト太陽電池の特性と政策的背景、そして中国・欧州を中心とした世界動向を整理しました。 中編となる今回は、社会実装の要となる耐久性・封止・量産プロセスを中心に、産業戦略の現在地を掘り下げます。ペロブスカイト太陽電池が“都市インフラとしての電源”へ進化するために、どのような技術と制度基盤が求められているのかを整理します。特に日本が得意とする材料科学と製造装置技術の融合が、世界的な量産競争の中でどのように差別化を生み出しているのかを探ります。

中小企業が入れるRE100/CDP/SBTの互換ともいえるエコアクション21、GHGプロトコルに準じた「アドバンスト」を策定の写真

一般社団法人エネルギー情報センター

2025年10月27日

主任研究員 森正旭

中小企業が入れるRE100/CDP/SBTの互換ともいえるエコアクション21、GHGプロトコルに準じた「アドバンスト」を策定

GHGプロトコルに準じた「エコアクション21アドバンスト」が2026年度から開始される見込みです。アドバンストを利用する企業は電力会社の排出係数も加味して環境経営を推進しやすくなるほか、各電力会社側にとっても、環境配慮の経営やプランのマーケティングの幅が広がることが期待されます。

日本発!次世代ペロブスカイト太陽電池:フレキシブル発電が都市を変える 【第1回】背景と技術概要 — 何が新しいか/政策・投資の全体像/海外動向との比較の写真

一般社団法人エネルギー情報センター

2025年10月18日

新電力ネット運営事務局

日本発!次世代ペロブスカイト太陽電池:フレキシブル発電が都市を変える 【第1回】背景と技術概要 — 何が新しいか/政策・投資の全体像/海外動向との比較

本記事は、2024年公開の「ペロブスカイト太陽電池の特徴とメリット」「ペロブスカイト太陽電池の課題解決と今後の展望」に続く新シリーズです。 耐久性や鉛処理、効率安定化といった技術課題を克服し、いよいよ実装段階に入ったペロブスカイト太陽電池。その社会的インパクトと都市エネルギーへの応用を、全3回にわたって取り上げます。

非化石証書(再エネ価値等)の下限/上限価格が引き上げ方向、脱炭素経営・RE100加盟の費用対効果は単価確定後に検証可能となる見込みの写真

一般社団法人エネルギー情報センター

2025年10月17日

主任研究員 森正旭

非化石証書(再エネ価値等)の下限/上限価格が引き上げ方向、脱炭素経営・RE100加盟の費用対効果は単価確定後に検証可能となる見込み

9月30日の国の委員会で、非化石証書の下限/上限価格の引き上げについて検討が行われています。脱炭素経営の推進を今後検討している企業等は、引き上げ額が確定した後にコスト検証を実施することが推奨されます。また本記事では、非化石証書の価格形成について内容を見ていきます。

【第3回】電力小売に導入が検討される「中長期調達義務」とは ——料金・市場構造・投資への影響と導入後の論点—の写真

一般社団法人エネルギー情報センター

2025年09月29日

新電力ネット運営事務局

【第3回】電力小売に導入が検討される「中長期調達義務」とは ——料金・市場構造・投資への影響と導入後の論点—

第1回では制度導入の背景を整理し、第2回では設計の仕組みと現場課題を取り上げました。最終回となる本稿では、中長期調達義務が導入された場合に、料金や市場構造、投資意欲にどのような影響が及ぶのかを展望します。
制度の目的は電力の安定供給を強化し、価格急騰のリスクを抑えることにあります。ただし、調達コストの前倒し負担や市場流動性の低下といった副作用も想定されます。今後は、容量市場や需給調整市場との整合性、データ連携による透明性、新規参入環境の整備といった論点への対応が、制度の実効性を左右することになります。

 5日間でわかる 系統用蓄電池ビジネス