法人向け 家庭向け

国内エネルギー市場の成長と挑戦:電力先物取引の新たな記録と今後の展望

一般社団法人エネルギー情報センター

新電力ネット運営事務局

国内エネルギー市場の成長と挑戦:電力先物取引の新たな記録と今後の展望の写真

2024年11月、東京商品取引所(TOCOM)における電力先物商品の合計取引高が今年最高を記録しました。その中でも特に注目すべきは、東エリア・ベースロード電力先物の取引高が過去最高を更新したことです。電力先物市場の活発化は、国内エネルギー市場の成熟度を示す重要な指標であり、今後のエネルギー政策や再生可能エネルギーの普及における課題と機会を浮き彫りにしています。

電力先物市場の成長背景

電力先物市場は、2020年に国内で初めて設立されて以来、取引量の増加を続けています。その背景には、エネルギー市場の自由化や電力価格の変動リスクに対する需要増が挙げられます。特に、昨今のエネルギー危機や再生可能エネルギーの導入拡大に伴う価格の不安定性が、リスクヘッジ手段としての電力先物商品の利用を促進しています。

東エリア・ベースロード電力先物の動向

11月7日、東京商品取引所の電力先物市場での1日当たりの取引高が、上場以来最多となる1億5372万キロワット時を記録しました。この取引は立会外で成立し、直近3カ月分の取引高を1日で上回る規模となっています。特に、三菱UFJ銀行が電力先物の参加資格を取得し、10月から業務を本格開始したことが背景にあると見られています。同銀行の参入により、与信リスクが低減し、市場参加者が取引を拡大したと考えられています。

今回成立したのは東エリア・ベースロード(BL)の2025年4~9月限で各350枚。価格は13円40銭~17円74銭で、枚数ベースでは2022年5月13日の2819枚に次ぐ2番目の水準でした。また、2024年8~10月の月間取引高約1億2000万キロワット時を1日で超える結果となりました。

TOCOM 電力先物 月次取引高グラフ 出典:JPX

市場全体の活性化が進む背景

電力先物市場の成長を支える一方で、他のエネルギー商品市場も同様に活況を呈しています。たとえば、LNG先物市場の取引高も記録的な伸びを示しています。11月7日には155枚(1枚は100万BTU)が成立し、月間取引高として過去最多を記録しました。期間限定で導入されているマーケットメーカー(MM)制度が功を奏し、取引が4カ月連続で成立しています。東商取はこの制度の効果を評価し、実施期間を延長する予定です。電力先物とLNG先物の両市場で2025年3月までMM制度が継続される見通しです。

また、再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)の見直しが進められており、これが電力価格のさらなる変動を引き起こす可能性があります。このような政策的な動きも、電力先物市場の需要を後押ししています。さらに、国際的には欧州エネルギー市場がウクライナ情勢やエネルギー安全保障問題の影響を受けており、世界的なエネルギー価格の変動が国内市場にも波及している状況です。

今後の展望

今回の記録的な取引高は、電力市場の成熟度を示す一方で、課題も浮き彫りにしています。例えば、市場参加者の多様化を進めるためのさらなる施策が必要です。また、再生可能エネルギーの普及に伴う価格変動リスクを軽減するため、市場の安定性を向上させる仕組みが求められています。

加えて、国際的なエネルギー市場との連携を深めることで、日本国内の市場競争力を高めることも重要です。これにより、エネルギー価格の安定化とともに、再生可能エネルギーの普及促進が期待されます。

まとめ

東京商品取引所の電力先物市場が今年最高の取引高を記録したことは、国内エネルギー市場の発展を象徴する出来事です。特に三菱UFJ銀行の参入が取引量増加に寄与し、与信リスク低減が市場の信頼性向上につながっています。同時に、LNG先物市場の成長や再生可能エネルギー政策の変化といった動向が市場全体を活性化しています。今後も市場の動向を注視しながら、持続可能なエネルギー社会の実現に向けた取り組みが期待されます。

はてなブックマーク

執筆者情報

一般社団法人エネルギー情報センターの写真

一般社団法人エネルギー情報センター

新電力ネット運営事務局

EICは、①エネルギーに関する正しい情報を客観的にわかりやすく広くつたえること②ICTとエネルギーを融合させた新たなビジネスを創造すること、に関わる活動を通じて、安定したエネルギーの供給の一助になることを目的として設立された新電力ネットの運営団体。

企業・団体名 一般社団法人エネルギー情報センター
所在地 東京都新宿区新宿2丁目9−22 多摩川新宿ビル3F
電話番号 03-6411-0859
会社HP http://eic-jp.org/
サービス・メディア等 https://www.facebook.com/eicjp
https://twitter.com/EICNET

関連する記事はこちら

政府も注目する次世代エネルギー  核融合の仕組みと可能性 【第5回】社会実装と中長期シナリオ 2030年代のロードマップと日本の戦略の写真

一般社団法人エネルギー情報センター

2025年12月27日

新電力ネット運営事務局

政府も注目する次世代エネルギー  核融合の仕組みと可能性 【第5回】社会実装と中長期シナリオ 2030年代のロードマップと日本の戦略

これまで4回にわたり、核融合という次世代エネルギーの可能性を、研究・技術・制度の観点からたどってきました。長らく“夢のエネルギー”と呼ばれてきた核融合は、いま確実に社会の現実へと歩みを進めています。 最終回となる今回は、社会実装に向けたロードマップと、日本が描くべき中長期戦略を考えます。 核融合が“希望の象徴”で終わらず、私たちの暮らしに息づくエネルギーとなるために、次の時代に向けた道筋を描きます。

政府も注目する次世代エネルギー  核融合の仕組みと可能性 【第4回】制度設計・安全規制・地域産業化 社会実装に向けた最新動向の写真

一般社団法人エネルギー情報センター

2025年12月17日

新電力ネット運営事務局

政府も注目する次世代エネルギー  核融合の仕組みと可能性 【第4回】制度設計・安全規制・地域産業化 社会実装に向けた最新動向

第1回では核融合の基本、 第2回では国内研究基盤、 第3回では民間企業による産業化の動きを整理してきました。 こうした技術・ビジネス面の進展を踏まえ、2025年後半には「社会実装」に向けた制度づくりや安全規制の検討が政府内や国際機関で動き始めています。国際基準への日本の参画や、地域での研究・産業活動の広がりなど、核融合を社会に組み込むための枠組み形成が進みつつあります。 本稿では、制度・安全・産業の三つの観点から、この転換点の現在地を整理します。

政府も注目する次世代エネルギー  核融合の仕組みと可能性 【第3回】民間企業が牽引する核融合ビジネスの現在地  国内外で加速する産業化の動きの写真

一般社団法人エネルギー情報センター

2025年11月30日

新電力ネット運営事務局

政府も注目する次世代エネルギー  核融合の仕組みと可能性 【第3回】民間企業が牽引する核融合ビジネスの現在地 国内外で加速する産業化の動き

第1回では核融合の基本原理と方式を、第2回ではJT-60SAやLHDを中心に日本の研究基盤を整理してきました。近年は研究成果が民間へ移行し、実証炉開発や供給網整備が本格化しています。高温超伝導やAIなどの技術進展により小型化と効率化が進み、投資も拡大。本稿では国内外スタートアップの動向と商用化に向けた論点を整理します。

政府も注目する次世代エネルギー  核融合の仕組みと可能性 【第2回】国内研究最前線 JT-60SAとLHDが描く日本の核融合ロードマップの写真

一般社団法人エネルギー情報センター

2025年11月24日

新電力ネット運営事務局

政府も注目する次世代エネルギー  核融合の仕組みと可能性 【第2回】国内研究最前線 JT-60SAとLHDが描く日本の核融合ロードマップ

地上に“小さな太陽”をつくるという挑戦が、いま日本の研究現場で確実に動き始めています。 第1回では、核融合がどのようにエネルギーを生み出すのか、その基本原理や世界的な動向について整理しました。今回はその続編として、日本が持つ二つの主要研究拠点、「JT-60SA(大規模トカマク型装置)」と「LHD(ヘリカル方式の大型装置)」に焦点を当て、国内で進む最前線の取り組みを詳しく解説します。 どちらも世界トップクラスの規模と技術を誇り、2030年代の発電実証を目指す日本の核融合開発に欠かせない“橋渡し役”として国際的にも注目されています。

政府も注目する次世代エネルギー、核融合の仕組みと可能性  【第1回】核融合“超入門” 地上に「小さな太陽」をつくる挑戦の写真

一般社団法人エネルギー情報センター

2025年11月13日

新電力ネット運営事務局

政府も注目する次世代エネルギー、核融合の仕組みと可能性 【第1回】核融合“超入門” 地上に「小さな太陽」をつくる挑戦

地上に“小さな太陽”をつくる、そんな壮大な計画が世界各地で進んでいます。 核融合とは、太陽の内部で起きているように、軽い原子が結びついてエネルギーを生み出す反応のことです。燃料は海水から取り出せる水素の一種で、CO₂をほとんど出さず、石油や天然ガスよりもはるかに効率的にエネルギーを取り出すことができます。 かつては「夢の発電」と呼ばれてきましたが、近年は技術の進歩により、研究段階から実用化を見据える段階へと進化しています。 2025年6月当時は、高市早苗経済安全保障担当大臣のもと、政府が核融合推進を本格的に強化しました。 同月に改定された「フュージョンエネルギー・イノベーション戦略」では、研究開発から産業化までを一貫して支援する体制が打ち出されています。 今回はその第1回として、核融合の基本的な仕組みや核分裂との違い、主要な研究方式をわかりやすく解説します。

 5日間でわかる 系統用蓄電池ビジネス