蓄電池×スマートデバイス 第3回

2024年08月25日

一般社団法人エネルギー情報センター

新電力ネット運営事務局

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スマートフォン市場の進化と普及を支える「蓄電池」と「スマートデバイス」について全3回に渡ってお伝えします。

執筆者:一般社団法人エネルギー情報センター
理事 江田健二

富山県砺波市出身。慶應義塾大学経済学部卒業。アンダーセン・コンサルティング(現アクセンチュア株式会社)に入社。エネルギー/化学産業本部に所属し、電力会社・大手化学メーカ等のプロジェクトに参画。その後、RAUL株式会社を起業。主に環境・エネルギー分野のビジネス推進や企業の社会貢献活動支援を実施。一般社団法人エネルギー情報センター理事、一般社団法人CSRコミュニケーション協会理事、環境省 地域再省蓄エネサービスイノベーション委員会委員等を歴任。

記事出典:書籍『2時間でわかる 蓄電池ビジネスの未来: ウィズコロナ時代に拡大する20兆円市場に注目せよ!』(2020年)

ウェアラブルデバイスの市場動向

スマートフォンと並んで注目すべきスマートデバイスが「ウェアラブルデバイス」です。ウェアラブルデバイスとは、軽量で小さく、装着できる(身に付けて使用できる)コンピュータ機器のことです。
例えば、アップルウォッチなどの腕時計型ウェアラブルデバイス、グーグルグラスなどのメガネ型ウェアラブルデバイス、リストバンド型ウェアラブルデバイスなどです。スマートフォンが短期間で普及したように、今後ウェアラブルデバイスも大きく普及すると予測されています。こうしたウェアラブルデバイスの普及も「リチウムイオン電池」が支えています。

市場調査会社大手の矢野経済研究所の推計によると、ウェアラブルデバイスの市場規模は、2015年に国内で約209万台、世界で約7100万台です。2020年までに国内で約1160万台、世界で約3億2300万台まで増加すると予測されており、今後IoTの進化とともに多様な形状のデバイスで普及が加速するとされています。
今後は、IoTやAIを活用した小型コンピュータ技術と、健康やファッションに敏感な消費者のニーズを併せ持つ製品の出荷が急増すると予想されます。
前出のIHSは、「こうした状況を受け、スマートウォッチやウェアラブルヘルスモニター、スマートグラスに電力を供給する電池の需要は、今後大幅に増加する」と予測しています。

ウェアラブルデバイスの今後と蓄電池

現在ウェアラブルデバイスは、若者層を中心に最先端のファッションアイテムとして注目されていますが、今後は健康管理や医療分野へと活用の幅が広がっていくでしょう。例えば、頭部や身体に装着したウェアラブルデバイスを通して、血圧、心拍数、歩行数、消費カロリー、睡眠の質、食事内容といった日々の活動のデータを収集することができます。収集したデータを分析することで様々な分野、対象に対して多彩なサービスが検討されており、実際に業務利用、健康管理、スポーツ、医療等の分野で先進的な製品・サービスが登場してきています。

他にも、保育園などで親元を離れている乳幼児の急な体調変化を察知する、体に貼るタイプのセンサーや、生体認証機能が追加されたセキュリティ性の高いカード型デバイスなどの開発・製品化も進んでいます。
また、カメラやスマートウォッチなどの情報・映像型機器や、活動量計等のモニタリング機能を有するスポーツ・フィットネス型機器なども増えていくと予測されます。さらに医療、警備、防衛等の分野で人間の高度な作業を支援する端末や、従業員や作業員の作業や環境を管理・監視する端末がすでに実用化されています。

総務省によると、情報・映像型ウェアラブル市場は、アプリの拡充による裾野の広がりから市場の拡大が見込まれると予想されています。また、スポーツ・フィットネス型もアジア系メーカーの参入により低価格化の影響があるものの、先進国のみならず、新興国においても健康意識の高まりやPOC(point of care)の需要から市場は緩やかに拡大していくだろうと予想されています。

急速に高齢化社会となっている日本では、健康寿命を延ばすためにも気軽に健康管理ができるウェアラブルデバイスの需要はますます伸びていくでしょう。ウェアラブルデバイスに適した超小型電池の開発も進んでいます。
例えば、ピン型リチウムイオン電池、フレキシブルリチウムイオン電池などです。フレキシブルリチウムイオン電池は、パナソニック株式会社 オートモーティブ&インダストリアルシステムズ社が開発。カード型デバイスやウェアラブルデバイスなどに適した、厚み0.55ミリのリチウムイオン電池で、くり返し曲げたり、ねじったりしても性能を維持できるのが特長です。今後は、ウェアラブルデバイス用蓄電池の長寿命化、耐久性と安全性の向上が課題といえます。

ウェアラブルデバイスの進化・普及によって、コンパクトで高性能なリチウムイオン電池の活躍の場はこれからますます拡大が期待できます。5Gの登場によって、スマートフォンやウェアラブルデバイスだけでなく、通信速度が安全性と直結する自動運転車や遠隔医療(遠隔手術)など、様々な分野でさらなる技術的発展が期待できます。そうした動きは、蓄電池市場の拡大にも大きく貢献するはずです。

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