非化石証書 (Non-fossil certificate)

非化石証書 (Non-fossil certificate)とは

A certificate issued for the environmental value of electricity generated using non-fossil fuels instead of fossil fuels like oil and coal.

CO2を出さない再生可能エネルギーで発電された電気には、「環境価値」があります。その環境価値のひとつである「非化石価値」を取り出し、証書のかたちにして売買を可能にしたのが「非化石証書」です。

背景

2019年の現在、私たちが使っている電気の約8割は、天然ガスや石炭、石油などの化石燃料をつかって発電されています。化石燃料をつかうときに排出されるCO2は、地球温暖化の原因となるといわれており、その排出量を減らすことが世界的にとても重要な課題となっています。そこで、電気の発電につかわれる化石燃料を減らし、再生可能エネルギーなどCO2の排出量の少ない非化石エネルギー源に置き換えていくことが求められます。

日本には、小売電気事業者や発電事業者などが電気の売買をおこなっている「日本卸電力取引所」があります。日本卸電力取引所(JEPX)は、電力の自由化を踏まえて、2003年に設立された機関です。発電事業者や一般企業が電力の売買を行える、国内では唯一の市場であり、JEPXが非化石証書のオークションを管理しています。

非化石証書の特徴と目的

「エネルギー供給事業者による非化石エネルギー源の利用及び化石エネルギー原料の有効な利用の促進に関する法律」(高度化法)という法律があります。この法律は、電気やガス、石油事業者といったエネルギー供給事業者に対して、太陽光、風力等の再生可能エネルギー源、原子力等の非化石エネルギー源の利用や化石エネルギー原料の有効な利用を促進するために必要な措置を講じています。

このことから発電事業者から電気を調達して住宅や企業に電気を販売する事業をいとなむ「小売電気事業者」は、この高度化法により、みずから調達する電気のうち、非化石電源比率(化石燃料をつかわない発電所からの電気の比率)を、2030年度までに44%以上にすることが求められています。

一方、太陽光発電など再生可能エネルギーで作られた電気は、2012年7月に創設された固定価格買取り制度(FIT)に基づいて、一定の価値で買い取られています。こうした再エネ発電は火力などほかの発電にくらべて発電コストが高く、なかなか導入が進まない原因になっていました。

そこで、再エネ発電の電力を、ほかの電力よりも高値で買い取ることで、再エネ発電をおこなう事業者を増やし、再エネの導入を広めることを狙ったのです。買取費用は、電力会社が買い取った再エネの量に応じて、電気料金を通じて国民が広く負担することとなっています(再エネ賦課金)。再エネの導入を進めると同時に、技術開発を進めるなどしてその発電コストを安くしていくことが重要です。

このことからエネルギー供給構造高度化法の達成を後押しするとともに、需要家にとっての選択肢を拡大しつつ、FIT(固定価格買取り制度)による国民負担の軽減に資するため、2018年5月非化石価値を証書化して売買できる非化石価値取引市場が創設されました。

非化石証書は、対象となる電源によって3つの種類があります。太陽光、風力、小水力、バイオマスなどのFIT電源で発電された「FIT非化石証書」、大型水力や、FIT期間が終了した電源で発電された「非FIT非化石証書」の2つが省エネ指定の証書です。また、再エネ指定なしの証書として、大型水力やFIT期間が終了した電源、原子力などで発電された「非FIT非化石証書」があります。

非化石証書は小売電気事業者のみ購入することができます。小売電気事業者は、非化石証書をJEPX(日本卸売電力取引所)の非化石価値取引市場でマルチプライス・オークション方式により、高い入札価格を提示した事業者から順に落札できます。証書を購入した小売電気事業者はCO2排出量の少ない電力を企業や家庭に販売できます。

CDPの報告書として使える非化石証書

非化石証書はCDPの報告書として使うことができます。CDPとは、2000年に設立された「カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト」が元になった国際NGOで気候変動などの環境問題に取り組んでいます。

世界中の企業から二酸化炭素排出量などへの取り組み状況の報告を受けて公開している。2018年3月にCDPジャパンから発表があり、CDPへの報告書に非化石証書に記載された電力量を再エネ使用量として記載できることが公式に認められました。

環境意識の高い企業を中心として、電気を使う時にも、CO2排出量の少ないものを選ぶ取り組みが始まっています。CDPの報告書の使用が認められたことで、環境問題に積極的に取り組んでいる企業であることをアピールすることが可能になりました。 企業価値やイメージを高めることができるので、商品や製品のブランディングにも効果が期待できます。

RE100に使える非化石証書は条件付き

RE100とは、事業運営のエネルギーを再生可能エネルギー100%にすることを目標とする国際イニシアチブです。RE100に加盟した企業は、100%再エネ化の進捗状況を毎年報告しなければならないです。

RE100において、非化石証書には改善するべき箇所があります。つまり、「条件付き」で非化石証書の利用が認められているということです。トラッキング情報のない非化石証書はRE100では使用が認められていません。発電所の所在地や、設備の環境負荷などのトラッキング情報(属性情報)が不足しており、環境価値が正しく評価できないからです。なので、属性情報を追加した非化石証書を活用した電気であれば、RE100における再エネ化の取り組みとして認められます。

「キーワードでわかる! 脱炭素と電力・エネルギー[上級編]」より
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