小売電気事業者

小売電気事業者とは

小売電気事業者とは、日本の電気事業法に定められた電気事業者の類型の一つで、小売り電気事業を営むために経済産業大臣の登録を受けたものをいいます。2016年4月1日開始の電力小売全面自由化に伴い、経済産業省において、2015年8月3日から、小売電気事業を営もうとする者の登録の申請受付を開始し、2016年4月1日、電力小売全面自由化開始までに280事業者が登録されました。

小売の意味

電力は、発電所→送電線→変電所→配電線の経路をたどり、各家庭まで供給されていて、その供給システムは発電部門、配送電部門、小売部門の3つに大まかに分けられます。発電部門は水力、火力、原子力、太陽光、風力、地熱などの発電所を運営し、電気を作る部門。配送電部門は発電所から消費者までつながる送電線・配電線などの送配電ネットワークを管理します。物理的に電気を家庭に届けるのは、この部門の役割です。また、ネットワーク全体で電力のバランス(周波数等)を調整し、停電を防ぎ、電気の安定供給を守る要となるのも、この部門です。

そして、小売部門では消費者と直接やりとりをし、料金メニューの設定や、契約手続などのサービスを行います。また、消費者が必要とするだけの電力を発電部門から調達するのも、小売部門の役割です。

小売電気事業者誕生の背景

電気は、水道やガスと同様、非常に重要なインフラとして、国によるさまざまな規制に縛られるとともに保護されてきた産業でした。しかし、民間企業である電力会社において、地域ごとに定められた企業(一般電気事業者)からのみしか電力を供給することができないということが電気料金の高止まりや技術革新のための競争を阻んでいるとして、 規制緩和の声が広く叫ばれるようになりました。1995年に電気事業法が改正され、発電事業への新規参入が拡大されました。

その後、最初の小売自由化は、2000年3月に始まりました。はじめは、2000kw以上の「特別高圧」区分の大規模工場やデパート、オフィスビルが電力会社を自由に選ぶことができるようになり、新規参入した電力会社「新電力会社」から電気を購入することが可能になり、2004年4月・ 2005年4月には、小売自由化の対象が500kw以上と50kw以上の「高圧」区分の中小規模工場や中小ビルへと徐々に拡大していきました。

そして、 2016年4月1日から、50kw未満の「低圧」区分の家庭や商店などにおいても電力会社(小売電気事業者)が選べるようになりました。そして、2016年、電力全面自由化に向けて、一般家庭向けの電力供給を自由化する流れとなり、新たに小売に参入できるようになった事業者が小売電気事業者となるわけです。

これまで家庭や商店向けの電気は、各地域の一般電気事業者だけが独占して販売しており、家庭や商店では、電気をどの会社から買うか選ぶことはできませんでしたが、2016年4月1日以降から、電気の小売業への参入が全面自由化されることにより、家庭や商店も含む全ての消費者が、電力会社(一般電気事業者と小売電気事業者)を自由に選択できるようになりました。つまり、ライフスタイルや価値観に合わせ、電気の売り手やサービスを自由に選べるようになったのです。

これまでの自由化範囲における市場規模

電力市場は全体で約18兆円であり、そのうち特別高圧・高圧といった法人用が10兆円、家庭などの小口が8兆円となります。そのため、例えば2016年の小口における自由化の市場規模は、約8兆円(需要家数約8,500万)となります。2016年以降はすべての電力需要が自由化されているので、18兆円の市場に誰でも参入できる環境となっています。

  対象 具体的な対象例 市場規模 需要契約数 電力量 電力シェア
2000年 6000kw以上 大規模工場、デパート、オフィスビル 約10兆円 約0.9万口 2,191億kWh 約27%
2004年 500kw以上 中小規模工場、商業ビル、スーパーマーケット 約4万口 1163億kWh 約14%
2005年 50kw以上 約70万口 1912億kWh 約23%
2016年 50kw未満 一般家庭、商店、事業所 約8兆円 8500万口 2982億kWh 約36%

電気事業連合会資料より作成