ブラジルの電力事情

ブラジルにおける電力の民営化は1995年に政権に就いたカルドゾ政権下で実施されました。1995年に成立した2つの営業特権法が「全国的な電力部門の新しい市場モデル」の指針を定めるとともに、連邦電気事業者の民営化の第一段階となりました。

1995年国より営電力会社エレトロブラスの傘下の配電会社の民営化が始まり、同年には最初の電力会社の民営化が行われ配電会社のEnersulが民営化されその後1998年までに14社が民営化されました。

1998年9月からは発電会社の民営化がはじまり、Enersolの発電部門であったGerasulが売却されました。そして、Cespが誕生し、3大発電会社の一つParanapanema発電会社が1999年7月に民営化されました。

1996年9月には、「独立発電事業者および自家発電事業者の発電」に関する法律によって独立発電事業(IPP)が認められるようになりました。1998年の改革では、送電と配電は引き続き規制された独占企業によって地域独占が認められる一方、発電と小売りが完全に自由化され、競争が推奨されました。

2003年時点では配電事業者の7割が民営化されたのに対し、発電会社は3割程度にとどまっています。連邦電力持株会社Eletrobras、いくつかの国営垂直統合企業と民営発・配電事業者が共存しています。ブラジルでは民間投資を促進しながらも完全な自由競争に任せるのではなく、連邦政権の強い権限の下で「管理された競争」を志向しています。

ブラジルのエネルギー・再生可能エネルギー事情

ブラジルにおけるエネルギー関連行政は鉱山エネルギー省(Ministrerio de Minas e Energia)で、同省は鉱業も管轄しています。監督機関として、石油・ガス・バイオ燃料はANP(国家石油・天然ガス・バイオ燃料監督庁)、電力はANEEL(国家電力庁)、原子力はCNEN(国家原子力審議会)が存在しています。

ブラジルのエネルギー消費は2013年の時点で、南北アメリカ諸国中で米国、カナダに次いで3番目、世界では8番目に多い消費国です。それと同時に世界で10番目に多いエネルギー資源の生産国です。総生産量は(2013年時点で)増加しており、特に石油とエタノールの増加が顕著です。

ブラジルでは、第一次、第二次の石油危機の際石油の90%を輸入に依存していました。それにより、石油輸入額が大きく増大したことにより石油の自給自足体制に向けた国内石油資源の開発と石油に代わるエネルギー源の開発を進めてきました。

ブラジルの電力供給の構成 (2014年度)は、水力発電69%、天然ガス12%、石油5%、原子力3%、石炭4%、その他8%となっています。エネルギーの自給率は88%と高い値に位置しています。

ブラジルでは日照資源に恵まれているにもかかわらず水力や風力が先行しており太陽光発電の導入が遅れています。そこで政府は、2015年12月に分散型発電(Distributed Generation:DG)に対するインセンティブ・プログラム「ProDG」をスタートさせました。電力消費者が分散型再生可能エネルギー電源によって自家消費用の発電を行うことを奨励するもので、主な対象は太陽光発電です。「PoDG」の支援により2030年までに最大270万人の消費者が住宅、商工業、農業部門のいずれかで分散型発電設備を設置すると予測しています。

再生可能エネルギーを普及させるにあたり、電力供給をいかに克服するかが課題となっています。その点から、消費者側からの電力需要を調節することが可能な、スマートグリット(次世代送電網)に注目が集まっています。

国家電力庁(ANEEL)は2020年までにスマートメーターを全国に導入することを検討しています。これが実現されれば、導入されるスマートメーターの数は6800万台に上ると推定されています。

スマートメーターの導入によるスマートグリット化の目的は、送配電ロスの低減(特に都市部のファベーラと呼ばれるスラム街で多い盗電の防止)、配電自由化による停電対策系統の信頼向上、双方向通信によるピークシフトや省エネの推進、再生可能エネルギーなど分散電源への対応などです。

2001年の電力危機

ブラジルでは、1997年から降水量不足が徐々に進み2000年から2001年にかけて過去に例を見ない渇水に見舞われました。当時のブラジルは電力供給の8割を水力発電が占めており、水力発電所のダムの貯水レベルが危機的な状況に陥りました。

2001年5月に、連邦政府は電力危機管理委員会(CGE)を発足させて緊急事態に対応しました。2001年6月から2002年2月まで罰金を含む節電策を通じ、市民や企業は20%の節電を余儀なくされ、大統領府の冷蔵庫のスイッチを切るよう命じたほどでした。

前年の電気使用実績を基準に20%消費削減を行ったため企業は生産活動の削減、店舗などは営業時間短縮などが強いられました。そのため、2000年に記録した4%の経済成長率は2001年には1.4%まで下落し、緊急電力政策の影響は2002年2月まで価格に反映され、経済に大きな影響を与えました。

この危機をきっかけに水力発電に偏った電力供給からの脱却に向けた動きが強まりました。政府は天然ガス方式を主流とした火力発電所を数十か所建設し、発電能力を1万MW増やしたことから、今では水力発電の比率は3分の2程度に下がり、雨不足の影響を受けにくくなってきています。この電力危機が生じたことで、どのようにして電力の安定供給、高品質の維持を図り、民間投資・競争の促進そして、信頼できる規制のフレームワークを整えていくかがブラジル国内で議論が交わされました。