マイクロガスタービン発電
マイクロガスタービンとは
マイクロガスタービンとは、ガスタービンを小型化したもので、主にマイクロガスタービン発電機として利用されています。大型ガスタービンでは設置できなかった場所(ホテル、店舗など)で自家発電や予備電力として利用されています。また、大型機とは異なった手法で発電効率をあげています。
背景
ガスタービンの開発・利用自体は古くからされており、自動車への適用もされてはいましたが、ガスエンジンやディーゼルエンジンと比べ発電効率が低いため、広く利用されることはありませんでした。しかし、アメリカのカリフォルニア州での厳しい排ガス規制により、電気自動車やハイブリット車の思想が生まれました。
そこでNOx排出がガスエンジンより少ないマイクロガスタービンが見直され、同時に、小出力化、コンパクト化が求められ、今のマイクロガスタービンができました。
原理
空気を圧縮機で加圧し、燃料器でその加圧した空気を利用し燃料を燃やして、高温高圧ガスを発生させます。この高温高圧ガスでガスタービンの羽根を廻します。ここまではガスタービンとほとんど同じですが、マイクロガスタービンには加えて再生サイクルがあります。
主な特徴
マイクロガスタービンの特徴として、発電効率が低いというデメリットがあります。一方、小型で場所をとらず、構造がシンプルで部品が少なくメンテナンスが容易というメリットがあります。また、ガスエンジンとは異なり、タービンが回転することにより発電するので、振動が少なく、発する音も高周波のため、対策が容易です。さらに、ガスエンジンと比べNOxや煤じんの排出量も少ないというメリットもあります。
ガスタービンとの違い
大きさ以外にも主な違いは3つあります。まず大型ガスタービンはその特性上、タービンの入口の温度が高いほど出力が大きくなります。しかし高温化に伴い、タービン翼の冷却化が必要となり、その分コストが増大します。コストが増大しても、大型機では経済的に有利でありますが、マイクロガスタービンでは、このコストアップが発電効率を下げることにつながるため、冷却化を行わない金属翼材料を使用し、金属翼材料が耐えうる温度が燃焼温度の上限となります。
次に、小規模回転機の特性上、回転数が大きい方が発電効率は大きくなるため、高速回転方式を採用します。
さらに、入口圧力と出口圧力の比(圧縮比)の最適値はタービンの入口温度に関係しています。そのため、大型機と比較すると大きな差があります。そして、この圧縮比によって排出ガスの温度が決定し、マイクロガスタービンでは600~700℃と比較的高い温度になります。この排出ガスを燃焼用圧縮空気の昇温に再利用します。(再生サイクル)
項目 | タービン翼の冷却化 | 燃焼温度(℃) | 回転数(rpm) | 主なサイクル |
---|---|---|---|---|
ガスタービン | 有 | 1100~1500 | 3000~10000 | コンバインドサイクル |
マイクロガスタービン | 無 | 700~900 | 60000~120000 | 再生サイクル |
マイクロガスタービンとガスタービンの比較
主な用途
マイクロガスタービンの主な用途には4つの分野があります。
① 分散電源
コンビニエンスストアやホテル、病院など店舗での自家発電です。マイクロガスタービンの発電量は20 kw~300 kwあるため、発電量の違いによって規模や場所が変わってきます。
② 予備電源
災害時や停電時の発電や、展覧会などでの暫定的発電に利用します。
③ 離島や電力整備ができていない地域
電力整備が難しい地域で電力として利用します。
④ コージェネレーション
コージェネレーションとは、熱と電気を同時に発生させる熱電供給システムのことで、このシステムを利用すると、通常のマイクロガスタービンよりも発電効率が高くなります。
今後の展望
先にも述べたように、マイクロガスタービンは古くから開発され研究がされており、ハイブリッド車の思想によって利用されるようにもなりました。さらにSOFC(固定酸化物形燃料電池)と組み合わせて、加圧型複合発電システムという技術があります。
この原理は、900℃で作動するセラミック製の燃料電池で、まず水素や一酸化炭素を空気と反応させて電気を生み出し、さらにSOFCの高温排出ガスと残燃料をマイクロガスタービンで利用することで、無駄を少なく且つ高い発電効率で稼働することができます。