ガスタービン発電
ガスタービン発電とは
ガスタービン発電とは、火力発電の一種で、燃料(灯油・軽油・LNGなど)を燃やした燃焼ガスでタービンを回して発電する方式です。
ガスタービンは、「ガスタービンエンジン」とも呼ばれる、内燃機関の一種です。内燃機関とは、文字通り内部で燃えて動力を得るもので、高温の気体の流れによりタービン(羽根車)を回転させることで、動力または推進力を発生させることのできる熱機関のことをいいます。
ガスタービン発電の仕組
ガスタービン発電は燃焼によって得られた動力を用いて発電機を駆動しています。主に圧縮機、燃焼器、ガスタービンの三つの構成要素から成り立っています。まず、発電機で電気をつくり、圧縮機で空気を圧縮し、効率を高めます。圧縮された空気は燃焼器を通り、タービンを動かします。
(1)圧縮機
圧縮機では取り入れた空気を圧縮します。軸流圧縮機や遠心圧縮機などといった様々な形態が存在し、用途や大きさに応じ使い分けられたり、2つを組み合わせて使われたりします。大型のガスタービンにおいて主流である軸流圧縮機は、軸方向に空気を流しながら、圧縮していく圧縮機です。大きな送風機を軸方向にいくつもつなげたようなもので、空気に仕事を与えて圧力を上げて回転している翼列の「動翼列(ローター)」と、気流の向きを整える回転しない翼列の「静翼列(ステーター)」を一つの段として、軸方向に幾重にも段をかさねることにより大きな圧力上昇を生み出します。
(2)燃焼器
燃焼器では、圧縮機を出た高圧の気体に燃料を噴射し、燃焼させます。一度燃焼器内の気体に点火したら、そこに燃料を噴射し続けることにより、炎が持続する仕組みになっています。燃料には軽油や灯油から、天然ガスなど用途に応じ幅広い燃料が利用されています。
(3)ガスタービン
ガスタービンでは、圧縮機、燃焼器を経た高温高圧ガスから、回転の動力を取り出します。その仕組みは風車の仕組みと同じで、高温高圧ガスがタービン羽根車に吹き付けられることによって回転します。風車と異なる点は、羽根車に風を整えて吹き付ける点です。
ガスタービンは、空気を整流する静翼列(ステーター)と高温高圧ガスの流れを受け止め回転する動翼列(ローター)からなり、静翼列と動翼列をあわせて一つの段とします。ガスタービンでも圧縮機と同様に、段を軸方向にいくつも重ね、段階的に高温高圧ガスから回転の動力を取り出していきます。
ガスタービン発電のメリットとデメリット
ガスタービン発電のメリットとしては、小型で高出力が得られることが挙げられます。また、他の内燃機関であるディーゼルエンジンと比べると「窒素酸化物(MPx)や炭化水素の抑制が行いやすい」「省スペース化に貢献する」事等も発電に使用される理由となっています。
これに対しデメリットは、容積型に比べて熱効率がやや不利になること、各部が高温・高圧にさらされるため、高価な耐熱性材料が必要で、回転バランスを完全に取らなければならないといった問題があります。
コンバインドサイクル発電について
近年、ガスタービンを用いた火力発電所では、コンバインドサイクルが増えてきています。これは、ガスタービンを回し終えた排ガスの余熱を使って水を沸騰させ、蒸気タービンによる発電を行うという仕組みです。この発電方法は発電効率の高さ、環境負荷の低さ、運用性に利点があります。
火力発電の比較
火力発電ではガス発電の燃料である「液化天然ガス(LNG)」の他、「石炭」、「石油」などの化石燃料を使用しています。
液化天然ガス
- 気体の天然ガスをマイナス160℃に冷却、凝縮し、容積を600分の1にしたものです
- 超低温であるため、特殊な貯蔵タンク、輸送船舶が必要です
- 燃焼時のCO2排出量や窒素酸化物が他の化石燃料より少なく、比較的クリーンな化石燃料です
- 埋蔵量が豊富なので安定的に入手できます
石炭
- 重量あたりの発熱量は相対的に低く、燃焼させる際には大規模なボイラが必要です。また、固形であるため、コンベアなどの運搬設備も必要になり、設備にかかるコストが大きくなります
- 硫黄分・窒素分の含有量が多いため、燃焼時に環境へ与える負荷が大きくなります
石油
- 貯蔵や運搬がLNGや石炭と比べて容易です。また、調達の柔軟性にも優れています
- 燃料価格はLNGや石炭と比べて割高で、国際情勢などにより燃料価格が変動しやすいです
経済性 | 調達の柔軟性 | 環境性 | |
---|---|---|---|
LNG | ○ | △ | ◎ |
石炭 | ◎ | ○ | △ |
石油 | △ | ◎ | ○ |
火力発電の高効率化に向けた技術開発の進展
火力発電技術については、石炭火力、LNG火力とも、下図の通り、単一タービン(第1世代)からガスタービンと蒸気タービンを組み合わせたコンバインドサイクル(第2世代)、さらに燃料電池を組み合わせたトリプルコンバインドサイクル(第3世代)へと高効率化に向けた技術開発の段階が進展します。
各世代の技術は適用する燃料や、小規模分散電源への適合可能性などで特徴が異なり、各世代の技術それぞれの効率を高めつつ、全体として最適な組み合わせで活用していくことが必要です。
⽕⼒発電の⾼効率化に向けた技術開発の進展 出典:経済産業省