アメリカの電力自由化

電力自由化とは

電力自由化とは、市場参入の規制を緩和することで電気料金の引き下げや電気事業における資源配分の効率化を目的としたものです。これまでは決まった電力会社としか個人や企業が契約することができませんでしたが、自由化により電力を自由に選択することが可能となります。

アメリカ電力自由化の歴史

アメリカでは80年代に航空、鉄道、通信業界などの自由化と共に電力自由化が始まりました。1992年に実施したエネルギー政策方(Energy Policy Act)をきっかけとしてカリフォルニア州とロードアイランド州各自法案が成立、需要家が電力会社を自由に選べる事が出来るようになりました。

しかし2000年、カリフォルニア州で電力会社が十分に電力を供給できなかったことにより、停電が頻繁に発生するようになります。これにより自由化の動きが停滞しました。

失敗した例

「カリフォルニア電力危機」は2000年から2001年の間に発生した停電と価格上昇を招いた出来事です。 原因は相場操縦、発電の操業停止、制限された小売電気料金と言われてます。 エネルギー会社エンロンは需要増加の時に部分発電を停止、そのため電力が不足し電気料金が通常より最大で約20倍上昇しました。

成功した例

カリフォルニア州の失敗から学んできたテキサス州は停電及び価格の変動を減らすため価格水準の調整制度を実施してきました。発電、送配電、小売りを分割して、新電力や大手電力会社の競争を促進することもできました。

2002年から2011年まで、テキサス州は電力自由化の効果で再性可能エネルギーは1%から10%増加し、2010年では個人の55%が新電力を選択してます。

アメリカ電力自由化の現状

カルフォルニアの失敗と電気事業の州規制により、アメリカでは自由化と非自由化の州が混在しています。自由化を行っている州は2014年時点で13のみ、残りの37州は非自由化のままとなっています。

電力自由化が実施されている州であっても、料金や発送電分離の方法が一律に定められておらず、各々に判断が委ねられています。

効果・影響

2016年ではアメリカの電力会社は約3300社あり、年間約4兆kWhを家庭、商業・産業に配電してます。 アメリカエネルギー省の調査によると、2008年から2014年の間に電気の年平均価格は0.7%減少してます。

今後の展開

電力を安定的に供給するためにグリット(送電網、電力系統)の安定運用が重要となります。そこで新たに運用の鍵となるものとしてスマートメーターがあげられています。

これを活用することで利用者に電力消費量把握と節電を促すことができます。また提供者も供給をコントロールすることで大規模停電のトラブルを防ぐことにつながります。

また、値段昇降の可能性あるため、規制のバランスを見つけ、安定供給を守ることが大切です。新電力は消費者と社会環境を考慮したプラン提供や、電力会社間の争いで効率化を高めることができます。日本でも三段階に分けた「電力システムに関する改革方針」を決定、電力自由化の成功に向かって取り組んでいます。

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