電力自由化の認知度は9割以上、知っていても切り替えない要因トップは「メリットが分かりづらい」
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2016年11月04日
一般社団法人エネルギー情報センター
前回のコラムでは、経済産業省が実施したアンケート結果に基づき、電力プランを切り替えた需要家の満足度や生活スタイルの変化について見てきました。今回は、電力自由化の認知度と、プランの切り替えを躊躇する要因について概観していきます。
電力小売りの認知度は9割以上
経済産業省が実施したアンケート調査によると、電力小売自由化の認知度は、各社のPRなどが奏功し90%以上(90.6%)に達しています。電力自由化から半年が経過しましたが、現時点において日本国民の大多数が電力自由化を知っている結果となっております。
ただし、「電力自由化について認知はしていても内容は知らない」といった層は23.2%おりますので、自由化の内容まである程度以上理解している割合であれば、概ね7割近くとなります(図1)。
図1 家庭用電力の小売り自由化認知度 出典:経済産業省
切り替えていない需要家でも、9割近くが自由化自体は認知している
下記の図は、電気プランを切り替えた需要家と、切り替えていない需要家に対する認知度調査のアンケート結果となります。こちらを見てみますと、切り替えていない需要家であっても、電力自由化について認知している割合は9割近くとなっています。つまり、電力自由化という制度を知りながら、何らかの理由によりプランの切り替えを行っていない需要家が大半であることが見てとれます。
一方で、電気プランを切り替えた需要家であっても、全員が電力自由化について理解しているかというと、そうではない結果となりました。プラン変更者の2.3%が「電力自由化について聞いたことがない」との回答をしており、こういった需要家はセットプラン等の訴求効果により、受動的に電気プランを切り替えているなどの要因が考えられます(図2)。
図2 小売り自由化認知度 料金プラン変更者と非変更者別 出典:経済産業省
変更を妨げている要因の第一位、「メリットが分からない」
これまで、電気プランを切り替えていない需要家であっても、電力自由化の制度自体は認知している割合は高いことを見てきました。そうした需要家が電気の購入先を変更しない理由として、アンケートでは「メリットがよくわからない」(44.0%)がトップであり、時点で「なんとなく不安」(37.3%)が多く挙がっておりました(図3)。自由化についての理解不足や不安感が、変更の阻害要因となっていることが窺える結果となっています。
図3 電気の購入先非変更理由/解決されたら変更すると思うもの 出典:経済産業省
域別においては東京電力管内が最も内容認知度が高い結果に
電力自由化の内容まで理解している割合では、東京電力管内(31.2%)がトップであり、次点で関西電力管内(29.9%)と続きました。その一方で、中国(18.0%)、四国(19.8%)、九州(18.5%)の各電力管内では20%を下回っており、地域差が現れております。
東京電力管内は、多様な料金プランを選択できることもあり、プランの切り替え件数・割合も全国トップです。こうした環境が電力自由化の理解度の高さを形作る一因であると考えられます。しかし、「電力自由化の内容までは分からないが、制度自体を認知している」といった割合であれば、どの地域も概ね9割近くであり、各地域において遜色がありません(図4)。
地方においては、現状ではまだまだ料金プランの選択の余地が少なく、切り替えが1%未満とほとんど進んでいない地域も多いです。しかしそうした地域であっても、制度自体の認知度は高いので、急速に切り替えが進んでいくポテンシャルはあります。例えば、前述のように「メリットが分かりづらい」などの不安を払拭することにより電力自由化が身近になっていくことが期待されます。
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