法人向け 家庭向け

【第1回】電気主任技術者の人材不足とは? 〜背景と現状〜

一般社団法人エネルギー情報センター

新電力ネット運営事務局

【第1回】電気主任技術者の人材不足とは? 〜背景と現状〜の写真

日本の電力インフラは現在、大きな変革期を迎えています。再生可能エネルギー(以下、再エネ)の導入拡大やEV(電気自動車)充電施設の増加に伴い、電力設備の管理・保守の重要性が一層高まっています。その中で、電気主任技術者は電力設備の安全を確保し、安定した電力供給を支える要となる存在です。 しかし近年、電気主任技術者の人材不足が深刻化しており、電力業界全体に影響を及ぼしています。特に、高齢化による人材減少、資格取得の難しさ、再エネ・EV充電施設の急増がこの問題を加速させる要因となっています。 本コラムでは、電気主任技術者の人材不足の背景と現状を明らかにし、今後の電力業界における影響についてお伝えします。

1. 電気主任技術者とは?

電気主任技術者は、電気設備の保守・運用・安全管理を担当する専門職です。
工場やビル、発電所、送電設備など、幅広い電気設備の管理を担い、設備の適正な運用を確保する役割を果たします。主な業務には以下のようなものがあります。

  1. 電気設備の点検・保守
  2. 運転管理
  3. 事故発生時の対応
  4. 技術的助言

また、電気主任技術者は第一種、第二種、第三種の3つの資格に分類され、それぞれ対応できる設備の規模や範囲が異なります。特に、第一種や第二種の資格は実務経験が必要であり、取得が難しいため、人材不足の一因となっています。

出典:電気主任技術者制度について 令和5年3月31日 産業保安グループ 電力安全課

電気主任技術者の選任形態と年齢構成

選任形態:電気主任技術者の約9割が外部委託※1であり、そのうち約5割が電気保安協会※2、約1割が電気保安協会以外の保安法人、約4割が管理技術者として選任されています。この外部委託の増加により、企業内での若手技術者の育成が進まず、技術の継承が難しくなっています。​

年齢構成:電気保安協会および電気管理技術者協会の従事者の年齢構成は、50代以上が過半数を占め、高齢化が進行しています。

免状取得者数の推移:第3種電気主任技術者の免状取得者数は、直近10年(2012〜2021年)で、約1割(約5千人)減少しており、資格取得者の減少が顕著になっています。

※1 外部委託:企業が自社で電気主任技術者を雇わず、電気保安協会や保安法人に業務を委託すること。

※2 電気保安協会 … 企業や施設の電気設備の点検・保守を担う公益法人。電気主任技術者の外部委託先として広く利用されている。

出典:電気主任技術者制度について 令和5年10月26日 産業保安グループ 電力安全課

2. 人材不足の背景

電気主任技術者の人材不足の要因は主に以下の3つです。

(1) 高齢化による人材減少

電気主任技術者の高齢化が進行しています。
全国電気管理技術者協会連合会のデータによれば、会員の年齢構成は以下の通りです。

  1. 66歳以上:63%
  2. 71~75歳:23%
  3. 76歳以上:22%

出典:電気主任技術者の人材の 不足に係る業界の現状と 人材確保のための取組
令和5年10月26日 全国電気管理技術者協会連合会

このように、令和4年度末時点で、会員の約60%が66歳以上を占めており、高齢化が進行しています。特に、71歳以上の会員が全体の45%を占めており、今後の引退者増加による人材不足が懸念されています。

日本は急速な人口減少と高齢化に直面しており、これが労働力全体の縮小を招いています。特に、生産年齢人口(15歳から64歳までの人口)は減少傾向にあり、これは専門職である電気主任技術者の供給にも直接的な影響を及ぼしています。経済産業省の資料によれば、2030年度には第2種電気主任技術者が約1,000人、第3種電気主任技術者が約800人不足する可能性が示されています。

出典:電気主任技術者制度について 令和5年3月31日 産業保安グループ 電力安全課

(2) 免状取得者数の減少と資格試験の難易度

電気主任技術者の免状取得者数は減少傾向にあります。
特に、第3種免状の取得者数は、2002〜2011年の49,269人から、2012〜2021年には43,793人と約11%(約5千人)減少しています。その要因の一つに資格試験の難易度の高さが考えられます。

電気主任技術者の資格試験は難易度が高く、特に第3種試験であっても合格率は10%前後と低い状況です。そのため、新規取得者が増えにくいことが問題となっています。

出典:電気主任技術者制度について 令和5年3月31日 産業保安グループ 電力安全課

この続きを読むには会員登録(無料)が必要です。

無料会員になると閲覧することができる情報はこちらです
電力の補助金

補助金情報

再エネや省エネ、蓄電池に関する補助金情報を一覧できます

統計情報

統計情報(Excel含)

エネルギー関連の統計情報をExcel等にてダウンロードできます

電力入札

入札情報

官公庁などが調達・売却する電力の入札情報を一覧できます

電力コラム

電力コラム

電力に関するコラムをすべて閲覧することができます

電力プレスリリース

プレスリリース掲載

電力・エネルギーに関するプレスリリースを掲載できます

電力資格

資格取得の支援

電験3種などの資格取得に関する経済支援制度を設けています

はてなブックマーク

執筆者情報

一般社団法人エネルギー情報センターの写真

一般社団法人エネルギー情報センター

新電力ネット運営事務局

EICは、①エネルギーに関する正しい情報を客観的にわかりやすく広くつたえること②ICTとエネルギーを融合させた新たなビジネスを創造すること、に関わる活動を通じて、安定したエネルギーの供給の一助になることを目的として設立された新電力ネットの運営団体。

企業・団体名 一般社団法人エネルギー情報センター
所在地 〒160-0022
東京都新宿区新宿2丁目9−22 多摩川新宿ビル3F
電話番号 03-6411-0859
会社HP http://eic-jp.org/
サービス・メディア等 https://www.facebook.com/eicjp
https://twitter.com/EICNET

関連する記事はこちら

一般社団法人エネルギー情報センター

2026年03月06日

新電力ネット運営事務局

系統用蓄電池は、いつから「前提」になったのか 【第2回】立場ごとの時間軸と評価軸

前回は、系統用蓄電池が議論の「前提」として扱われるようになった背景を、三つの流れの合流として整理しました。制度が整い、コストが下がり、再エネの導入量が増えた。その重なりが、蓄電池を自然に検討の出発点に置く状況を形作っています。 ただ、同じ前提を共有しているはずの場で、同じ対象を扱いながら議論の焦点が重ならない場面が見受けられます。情報量が増え、関係者が増え、検討が深まるほど、情報の整理に要する前提条件が増えるという感覚を持つ担当者も少なくありません。 今回は、その背景にある構造を取り上げます。

一般社団法人エネルギー情報センター

2026年02月26日

新電力ネット運営事務局

系統用蓄電池は、いつから「前提」になったのか【第1回】前提化が生まれた三つの流れ

ここ数年、系統用蓄電池という言葉が特別なテーマとしてではなく、電力分野の議論の中で自然に登場する場面が目立つようになりました。再エネ拡大や需給調整、市場制度、投資環境など、異なるテーマを扱う会議や資料の中で、蓄電池が前提として語られること自体、もはや珍しくありません。 議論の入り口は補助金、価格差、市場、系統運用などさまざまですが、気づけば、かつて導入の是非や実証が主題だった蓄電池は、最初から存在する前提条件のように扱われ始めています。 本稿では、この前提化を形作っている要素の重なりを並べながら、背景を見つめ直すところから始めます。

一般社団法人エネルギー情報センター

2026年02月19日

新電力ネット運営事務局

【第2回】GX戦略地域(DC集積型)の流れと課題

第2回は、第1回で揃えた前提で、GX戦略地域が目指す官民の工程表を揃える仕組みを整理しつつ、各ステークホルダーの実務の論点まで言及して行きます。

一般社団法人エネルギー情報センター

2026年01月12日

新電力ネット運営事務局

【第1回】AIデータセンター時代のシステム設計:ワット・ビット連携、GX戦略地域、PPA・電源ポートフォリオの実務論点

データセンターは、地域の電力インフラ設計を左右する存在へと変わりつつあります。背景には、需要施設の増加や、高負荷率・増設前提という運用特性に加え、脱炭素の要件も加わり、結果として、電力の「量」だけでなく「確実性」と「環境価値」が事業の成否を分ける事が挙げられます。

こうした状況の中で、日本でも制度設計が大きく動いています。具体的には、系統用蓄電池における系統容量の「空押さえ」問題に対して規律強化が議論される一方、国としてはワット(電力)とビット(通信)を一体で整備する「ワット・ビット連携」を掲げ、自治体誘致やインフラ整備を含めた「GX戦略地域」等の枠組みで、望ましい立地へ需要を誘導しようとしています。さらに、需要家側では、脱炭素要請の高まりを受けて、PPAなどを通じた環境価値の調達や、電源ポートフォリオ(再エネ+調整力+バックアップ等)をどう設計するかが、契約論を超えて運用設計のテーマになっています。

本シリーズでは「AIデータセンター時代のシステム設計」を、①ワット・ビット連携、②GX戦略地域、③PPA・電源ポートフォリオの実務論点――という3つの観点から、全3回で整理します。日本の最新の制度設計と接続して、実装するなら何が論点になるかに焦点を当てるのが狙いです。

一般社団法人エネルギー情報センター

2025年09月22日

新電力ネット運営事務局

電力市場の収益ブレを見える化する──リスク管理の標準化を支えるEneRisQ®

本記事では、電力市場におけるリスク管理の課題を解決するソリューション「EneRisQ®」をご紹介します。大阪ガスとオージス総研の知見を融合し、収益のブレを定量的に把握し、最適なヘッジ戦略を支援。属人的なExcel管理から脱却し、リスク管理業務の高度化を実現します。