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研究・調査報告

環境アセスメント逃れの小規模石炭火力発電所計画、汚染排出データ未公表のまま着工

環境アセスメント逃れの小規模石炭火力発電所計画、汚染排出データ未公表のまま着工の概要写真
特定非営利活動法人気候ネットワーク
2016年7月15日

国内では現在、合計48基、2282万kWに及ぶ石炭火力発電所の新増設計画がある。これは、高効率・低排出(HELE)でクリーンとされる石炭火力発電技術でもCO2排出量が天然ガス火力の約2倍あり、気候変動対策に逆行する。もしこれらの計画がすべて稼働すれば日本の温室効果ガス排出量は約1割増加し、2030年の目標達成はますます困難になる。また、硫黄酸化物、窒素酸化物、ばいじん、PM2.5や水銀等の大気汚染物質が排出されるため、住民の健康リスクの懸念もある。

気候ネットワークでは、メディア報道や事業者発表に基づいて把握した新増設計画のうち、国や自治体の環境アセスメントの対象に一切なっていない7件の小規模案件について、情報開示請求や問い合わせを行った。その結果、これらの7事業の中には、汚染排出データ等の重要な情報を開示しないまま着工した案件が複数あること、効率の悪い旧式の技術を採用し、汚染排出の度合いが相対的に高いことなどが明らかになった。また、ほとんどの案件が、地元住民とのコミュケーションも行われていないと見られ、違法ではないものの、極めて不適切な状況であることがわかった。


|要約

・本調査の対象7案件のうち、1件は14.9万kW(第一種事業は15万kW以上)、5件は11.0~11.2万kW(第二種事業は11.25kW以上)と、環境アセスメント対象基準をわずかに下回る事業規模である。7案件のうち、5件はすでに着工している。

・7案件の工事計画書とばい煙に関する説明書の情報開示請求を行ったところ、発電性能や汚染排出データ、工事工程といった重要な情報を黒塗りにして非開示とした事業者が7件中4件あった。また、4つの非開示案件のうち2件は既に着工済みであり、重要な情報を公開せずに着工している実態が明らかとなった。

・火力発電技術・性能に係るデータ(蒸気圧力・温度等)が公開されたのは7件中3件のみで、いずれも「亜臨界圧(Sub-C)」と呼ばれる、1950年代の旧式の効率の悪い技術を採用していると思われる。非開示だった4つの案件については不明だが、積極的に開示していないことから、開示された案件と同様に効率水準が低い可能性がある。

・気候ネットワークの推計では、7件がすべて稼働すれば年間約440万トンCO2が排出されるおそれがある。

・大気汚染物質の排出に関しては、公開された情報の中には、国内で稼働中の他の石炭火力発電所と比べて10倍以上に上る高い割合で大気汚染物質(硫黄酸化物、窒素酸化物、ばいじん)を排出する発電所もみられた。

・政府や事業者は日本の石炭火力発電技術が高効率・低排出でクリーンであると説明しているが、環境アセスメント対象外の計画については、今回の情報公開により、低効率・高排出の技術であることが判明した。かかる事業の計画が公的なチェックを受けずに進められ、一部で既に着工しているのは問題である。環境や地域への影響を把握するためには、計画中・工事中の案件の全てについて、計画・工事を一端止め、事業者による火力発電性能や汚染排出データ、工事工程の情報の一般公開、住民説明会、意見募集及び事業者回答のプロセスを今から実施する必要がある。

・このような状況を改善するために、国は環境アセスメントの基準を見直し、小規模であっても環境影響の大きい石炭火力発電所まで対象を拡大し、その運用を厳格化すべきである。また、石炭火力発電所から排出されるPM2.5や水銀といった有害物質は現行の環境アセスメントでは評価されていないが、発電所の規模を問わず、評価項目に含めるべきである。
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