EV100
EV100とは
温室効果排出量削減を目指す国際環境NPO The Climate Group(英)が、2017年9月に発足したもので、EV100(Electric Vehicles 100%)は電気自動車(EV)への移行を促進し、2030年までに世界運輸部門において電気輸送の増加を目指す企業が集まるグローバルな取り組みのことをいいます。EV100は、The Climate Groupが主導する企業リーダーシップイニシアチブの1つであり、We Mean Business Coalitionの一部です。
※「EV」という用語には、純粋なバッテリー式電気自動車(BEV)、プラグインハイブリッド電気自動車(PHEV)、航続距離延長型電気自動車(EREV)、および水素燃料電池電気自動車(FCEV)を含み、最小限の30マイル /50kmの電気範囲でなければなりません。
背景
運輸部門は、世界のエネルギー関連温室効果ガス排出量は年間2.5%上昇しており(2018年度)、気候変動に最も影響を与えています。一方で、EVなどを利用した電気輸送は年間数百万トンの温室効果ガス排出量を削減し、運輸の際の大気および騒音汚染を抑制することから、企業のEV化が求められているのです。
内容
EV100の目的は、2030年までにEVを「新しいノーマル」にすることであり、2030年までの運輸部門における電気輸送の割合を高めるとともに、660,000tの温室効果ガス削減を目標とします。
EV100は、献身的な企業がリーダーシップを発揮し、ベストプラクティスを共有することでEV市場を形成している政策立案者、業界関係者、投資家と連携するためのプラットフォームを提供します。EV100に加盟するためには、以下の4つの項目のうち少なくとも1つ以上を2030年を目標に公約を行わなければなりません。
- 企業が直接所有またはリース保有する車両で最大3.5tの車両の100%EV化・3.5-7.5tの車両の50%EV化を行う
- サービス契約に電気自動車の使用に関する規約を設ける(例:レンタカー、カーシェアリング)
- 全施設内に電気自動車用充電設備を設置し、従業員の電気自動車利用を支援する
- 全施設内に電気自動車用充電設備を設置し、顧客の電気自動車の取り込みを支援する
可能性
登録車両の半数以上を保有する企業は、電気自動車へのシフトを先導することが重要となっており、加盟企業の投資を通じて、世界中の何百万人ものスタッフと顧客に影響を与え、増加する世界的な運輸排出量に対処します。
また、将来のEV購入要件を期待値を考慮して設定することで、企業は本格的な展開を推進し世界中の誰にとっても電気自動車をより迅速に手頃な価格に抑え、電気自動車の大量需要を大幅に高めることもできます。
2018年までに、200万台以上の車両がEV100の下で委託されており、ますます多くの企業がEV100に加盟しています。また、EVの統合は車両の運航コストを劇的に削減することができ、例をあげると、EV100の加盟企業であるドイツのDeutsche Post DHLでは傘下のStreetScooter社製造のEVの場合、内燃機関車と比較して燃料コストが60〜70%、メンテナンスと修理が60〜80%節約されています。
加盟企業(2019年10月時点)
世界で59社が加盟をしています。以下では、その一部を挙げます。
NTT(日本電信電話株式会社) 2018年10月
NTTは、東京に本社を置き、2025年までに50%を転換するという暫定目標を設定し、2030年までに11,000台の車両を移行することを約束しています。 EP100の取り組みの一環として、NTTは2025年までにエネルギー効率を2倍にするという目標を設定しました。
アスクル株式会社 2017年11月
EV100とRE100を同時に採用した最初の企業であるASKULは、クリーンで堅牢な経済を加速する上でのビジネスリーダーシップの重要性を認識し、2030年までにゼロゼロエミッションの達成に取り組んでいます。
イオンモール 2017年11月
顧客による電気自動車(EV)の普及を支援しており、2008年から全国の152のショッピングモールに充電施設を設置しています。既(2019年度)に751のEV充電器を135以上のモールに設置しており、 中国へ展開された同社はこれまでに6つのモールに348台の充電器を設置しています。
高島屋 2019年9月
2030年までに車両群をEVに切り替え、すべてのデパートの顧客にEV充電を提供することを約束しました。技術許可によっては、シンガポール、中国本土、ベトナム、タイにある海外店も含まれます。
東京電力ホールディングス株式会社(TEPCO) 2019年5月
4,400台の車両を電気に切り替え、2030年までにすべての施設で使用するための充電器を展開します。既に400台の車両をEVに切り替え、約100の充電ポイントをオフィスに設置しました。
Deutsche Post DHL Group〈ドイツ〉
2050年までにゼロエミッションロジスティクスを提供するという大胆な目標を達成するために、中期的に郵便および小包配達車両全体を再生可能エネルギー源から生成された電気で充電される電気自動車に置き換えることを目指しています。
IKEA〈スウェーデン〉
持続可能性は良いビジネスとなるIngka Group(旧IKEA group)にとってEVを展開することは、大気汚染防止法や汚染物質排出による都心へのアクセスを、制限が強化されているゼロエミッションゾーンからのビジネスリスクの低減となるため、Ingka Groupは現在、アムステルダム、ロサンゼルス、ニューヨーク、パリ、上海でEVの展開を迅速に進めています。これらの都市では、2020年までにすべてのラストマイル配送で電動化することを目指しており、後者を1年早く達成しています。 5つの都市は、2025年までに世界的な変革の試行として機能する、とされています。
METRO AG〈米国〉
2030年までに小売スペース1m2あたりのCO2排出量を2011年と比較して少なくとも半分にするという気候目標の一環として、ドイツのデュッセルドルフにある本社キャンパスに従業員向けの充電ステーションを既に設置し、世界中の店舗でさらに約100の充電器を設置しています。
EV100とRE100、EP100
RE100、EP100およびEV100は、The Climate Groupが主導のもと発足された国際企業イニシアチブで、世界で影響緑を持つ企業であることが前提となっており、それぞれパートナー企業が異なります。また、目的は下記の通りとなっています。以下にて、RE100とEP100の詳細を説明します。
- RE100:企業の電力において再エネの創出(100%化)および利用
- EP100:企業の省エネ化(エネルギー効率の50%改善)
- EV100:事業利用における車両の100%をEV化
〈RE100〉
RE100とは、世界で影響力のある企業が事業で使用する電力を100%再生可能エネルギーで賄うことを目指すもので、EV100と同様にWe Mean Businessの一部としてCDPとのパートナーシップのもとThe Climate Groupが運営しています。
RE100の目的は、気候グループがCDPと協力して世界規模でゼロカーボングリッドへの変化を加速させることで、世界のエネルギー市場を変革しクリーン経済へ移行させます。RE100 の対象企業は以下の4項目のうち少なくとも1つ以上に該当しなければなりません。
- グローバル又は国内で認知度・信頼度が高い
- 主要な多国籍企業である
- 電力消費量が大きい(100GWh以上)*日本は10GWhに緩和
- RE100の目的に寄与する、何らかの特徴と影響力を有する
また、上記の項目のいずれかを満たしたうえで、RE100に参加すれには以下の要項(日本における参加基準)を満たす必要があります。
①『⽇本の再エネ普及⽬標の向上』及び、『企業が直接再エネを 利⽤できる透明性ある市場の整備』に関する、責任ある政策 関与と公的な要請を積極的に⾏うことに合意すること。
②期限を切った再エネ100%化⽬標の設定と公表
- 遅くとも2050年までに100%を達成する⽬標とすること
- 以下を参照した中間⽬標を設けることを推奨(2020年30%、2030年60%、2040年90%)
2019年9月時点、加盟企業数は世界で203社、日本は23社で世界第3位になっています。
EP100
EP100(Energy Productivity100%)とは、RE100と同様に、国連気候変動枠組条約「COP21」のパリ協定達成を目的にThe Climate GroupがAlliance to Save Energyとのパートナーシップのもと発足した国際イニシアティブです。
エネルギー効率の高い技術や取り組みの導入を通じて、事業のエネルギー効率を倍増、つまり省エネ効率を50%改善することを目標としています。EP100によって徹底した省エネにより、事業に用いるエネルギー使用量を最小化し、残りのエネルギー使用をRE100によって再生可能エネルギーに転換することで脱炭素化を実現していきます。
2019年9月時点においてコミットした企業数は世界で51社、日本は2社となっています。また、EP100に加盟するためには以下の3項目のいずれか1つの公約を行う必要があります。
二重エネルギー生産性
企業は、25年以内に全世界で消費するエネルギーの全単位における経済生産量を2倍にし、早ければ2005年を基準年にする。また、企業は関連するエネルギー生産性指標(エネルギーの収益/ギガジュール(GJ)など)を選択し、および報告を行う。
エネルギーマネジメントシステムの導入
エネルギーマネジメントシステム(EnMS)の導入は、エネルギー生産性の向上に向けた基本的なステップであり、10年以内に各施設にEnMSを導入し、エネルギー生産性目標に取り組む。
ネットゼロカーボンビルディング
2030年までにネットゼロカーボン排出量で稼働するビルを所有、占有、開発することを約束する。この経路により、企業の排出量、エネルギー需要の削減、および資産レベルとポートフォリオレベルからの再生可能エネルギーソリューションへの洞察が得られる。(NZCBコミットメントは、World Green Building Council (世界グリーンビルディング協議会)が主導しています)