木質バイオマス発電

バイオマスエネルギーには様々な種類があります。この中で、特に木質燃料を使った木質バイオマス発電について紹介したいと思います。

バイオマスの累計

木質バイオマス発電

木質バイオマス発電とは、間伐材や未利用木材を利用して木質チップやペレットを作り、ボイラーで燃やして発電する仕組みのことです。

バイオマス木質燃料のイメージ

背景

木質バイオマス発電が普及し始めた背景には、2012年7月に始まった再生可能エネルギー固定価格買い取り制度(FIT)があります。これは、再生可能なエネルギーを用いて発電した電力を、電力会社が一定の価格で買い取るという制度です。

この制度により、多くの事業主が太陽光発電や、風力発電に乗り出しました。この中で、特に注目を集めているのが木質バイオマス発電です。

2)木質バイオマスのメリット

木質バイオマスを取り入れるメリットとしては、地球温暖化の防止につながること、建築廃材などの廃棄物の発生を抑制できること、林業関係での雇用が創出されることがあげられます。雇用の創出により、人口の増加、消費の拡大など地方創生にも一役買っています。

3)木質バイオマスを取り入れた地域例

木質バイオマスを取り入れたことで、地方創生につながった地域を紹介したいと思います。

北海道の下川町では、旭川からさらに200kmほど北に位置する町で、冬になると氷点下30℃近くまで気温が下がります。そのため、暖房に使用する化石燃料の影響でCO2の排出量が多く、問題視されていました。また、エネルギー購入による赤字が地域の財政を圧迫していました。そうした問題を解決しようと取り組まれたのが木質バイオマス発電です。

平成16年に下川町の温泉施設に木質バイオマスボイラーを導入したことをきっかけに、幼児センターや農業用のハウスなどにも次々と導入されました。これによって、年間1600万円(2012年度)のコストが削減されました。

また、林業関係での雇用も増え、ここ2年間で、下川町の人口は社会増に転じるという珍しい事態が起きています。

バイオマスの設置場所

出典:下川町HP

効果、影響、結果

木質バイオマス発電を行うことにより、上に述べたように地球温暖化防止などの効果が期待できます。また、近年廃れていく一方であった林業に新しい風が吹いており、大きな影響を与えていると言えるでしょう。

関連した動き

木質バイオマス発電だけでなく、初めに述べた生物や有機物をエネルギー源にするバイオマス発電も広がりを見せています。政府は、2010年に打ち出した「バイオマス活用推進基本計画」のなかで、バイオマスを活用した新しい産業を2020年に向けて進めていくと発表しました。

特にバイオマスの技術開発に力を入れることを目指しており、ここまで話題にしていた用途のない木材はもちろん、食品廃棄物、下水汚泥、家畜排泄物に注目していくということです。

懸念

木質バイオマス発電が今後ますます普及していくだろうという期待の一方で、問題点も数多く残されています。

①搬出コストの価格

未利用木材の搬出コストが高いことです。林道、作業道が整備されていない山間部では、未利用木材を搬出することが技術的に難しい場合もあります。これでは、発電に必要な量を集めるのに相当苦労するでしょう。

②土地所有者の相続権利

また、二つ目の問題としてあげられるのが、土地所有者の相続についての問題です。何代にもわたって、森林が相続されている場合、現在の所有者が誰なのか不明なことが多くあります。他人の土地の木材を勝手に利用するわけにもいかず、開発が進まない地域もあるということです。

③木材の確保

最後に、地球環境を破壊しかねないとの声もあります。先に、未利用木材は年間、東京ドーム16個分もあると述べましたが、それは常時発電できるほどの量なのかという問題が出ています。

資源が不足しているからといって、無計画に伐採などを行えば、日本の山が禿山になってしまう可能性も出てきます。また、海外の木材資源に頼ることも考えられますが、それでは日本の林業がますます衰退していくことにもなりかねません。資源調達においても課題が残されていると思われます。

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