電力広域的運営推進機関

電力広域的運営推進機関(OCCTO)とは

電力広域的運営推進機関(Organization for Cross-regional Coordination of Transmission Operators, Japan)は3段階で進められる電力システム改革の第1段階として電源の広域的な活用に必要な送配電網の整備を進め、全国規模で平常時・緊急時の需給調整機能を強化することを目的に2015年4月に設立されました。

また、電力広域的運営推進機関は全ての電気事業者に加入義務のある認可法人として中立かつ公平な業務運営を行なっています。

電力システム改革について

東日本大震災を契機に大規模集中電源の停止に伴う電力供給力の不足、計画停電等の画一的な需要抑制といった、現行の電力システムの課題が顕著化しました。この課題解決のため、電力システムに関する改革についての議論が進められました。

そして電力システム改革の目的として「安定供給の確保」、「電気料金の最大限の抑制」、「電気利用の選択肢や企業の事業機会拡大」の3つが掲げられました。そしてこの3つの目的を実現するために以下の3段階で進めることとされました。

第1段階(2015年4月)
  1. 電力広域的運営推進機関の発足
第2段階(2016年4月)
  1. 電気小売業への参入の全面自由化
  2. ライセンス制の導入
第3段階(2020年4月)
  1. 送配電部門の法的分離

第1段階:電力広域的運営推進機関の発足

これまでの電気事業は送電線ネットワークの整備などに巨額の整備投資を必要とし、公益性の高い産業であることから、政府の規制のもと全国で10カ所の一般電気事業者が担当する地域に電力を供給するという体制でした。

しかし、東日本大震災の後、計画停電が実施されるなど電力需給がひっ迫する事態が起こり、電力が余っている地域から足りない地域へ供給するなど、担当する地域を超えた電気のやり取りの必要性が高まりましたが、既存のシステムでは十分な対応を行うことができませんでした。

このことから、災害時などの緊急時でも安定供給を確保するために「全国レベルで広域的な運用を行う制度を送電インフラの整備と併用して進める必要性がある」と電力広域的運営推進機関の発足が提言されました。

第2段階:電気小売業への参入の全面自由化・ライセンス制導入

これまで家庭や商店向けの電気は、各地域の電力会社だけが販売していました。そのため家庭などは、電気をどの会社で買うかを選択することができませんでした。しかし、電気小売業への参入の全面自由化により、既存の電力会社以外の様々な事業者が電気の小売市場に参入することになります。

その結果、家庭などの利用者が自由に電気の購入先を選択できるようになり、市場での競争が活性化することで多種多様なサービスや料金メニューが登場すると期待されています。また、より安心で安全な電力供給のためにライセンス制度が導入され、電気事業者は以下の3つの事業者に分けられライセンスを取得する必要があります。

  1. 発電事業者
  2. 1000kW以上の発電設備を持つ事業者
  3. 送配電事業者
  4. 電力の送配電を行う事業者
  5. 小売電気事業者
  6. 電力を販売する事業者

例として、東京電力であれば、発電・送配電・小売を行なっているので3つ全てのライセンスが必要になります。あるいは、大規模な発電設備を持たず、送配電線も持っていない業者であれば、小売電気事業者のライセンスだけが必要になります。

第3段階:送配電部門の法的分離

電気小売業への参入の自由化によって様々な事業者が電気の小売市場に参入できるようになりました。しかし、電気の送配電部門は従来の電力会社が所有しているため、新しく参入してきた事業者に対して送電線の利用を制限したり、利用料を高額にしたりする可能性があり市場の自由競争が阻害されてしまいます。

そこで自由競争を公平に進めるため発電部門と送配電部門の両方を持っている既存の電力会社から、送配電部門を切り離し別会社とする「法的分離」を進める必要があります。

電力広域的運営推進機関の役割

広域機関は「電気事業の広域的運営」を推進するために以下のような役割を担っています。

  1. 全国規模での平常時・緊急時の需給調整機能の強化
  2. 中長期的の安定供給の確保
  3. 電力系統の公平な利用環境の整備
  4. スイッチングに係る手続きを支援するためのシステムの運用

全国規模での平常時・緊急時の需給調整機能の強化

ある供給エリアでの需給の悪化や、悪化する恐れが生じた場合に全ての会員に対して電力の融通や電源の焚増しを指示するために以下のような取り組みが行われています。

需給状況悪化時に、事業者への改善の為の指示

電力の需給が悪化した場合などに対応するために広域機関では会員全てに指示を行えるように電気事業法に基づいた強い権限が付与されています。また、需給ひっ迫時や電源トラブルが発生した場合に備え定期的に訓練を行い電力の安定供給を確保する為の対応能力を高めています。

24時間365日、需給状況や系統運用状況を監視

広域監視システムを用いて供給エリアの需給状況や発電機の出力状態、供給エリアを結ぶ連係線の利用状況などの系統情報を24時間356日一般送配電事業者とデータ連係しリアルタイムで監視を行なっています。

計画管理を行い、全国規模の需給バランスの状況を把握

全ての系統利用者に対して広域機関システムを通じて発電や需給に関する年間・月間・週間・前日の計画を提出し、広域機関は電力の安定供給のために需要と供給が一致するように、受け付けた計画の整合性を確認し全国・供給エリア・事業者のバランス状況を把握しています。

中長期的な安定供給の確保

ライセンス制の導入や電気小売業の全面自由化に伴う競争環境下において、全国・供給エリアの需給バランスを管理し安定供給を担保する仕組みが必要となり以下のような取り組みが行われています。

供給計画の取りまとめや広域機関電源入札により安定供給を担保

広域機関は今後10年間の需給の見通し、発電所の開発や送電網の設備等をまとめた供給計画を取りまとめることで全国・供給エリアの需給バランスを把握・評価しています。また、評価の結果から広域機関自らが電源の新増設、既存電源の維持・運用、休止電源の再起動を目的とした入札を行うことで安定供給を担保しています。

広域連係系統の長期方針や整備計画を策定し、必要な設備増強を主導

広域機関は、各エリアをつなぐ連係線等の広域連係系統の長期方針及び整備計画に基づき、広域連係系統に関する個別の整備計画を学識者や有識者などを中心とした広域系統設備委員会で策定し安定供給の確保や電力市場の活性化に貢献しています。

電力系統の公平な利用環境の整備

電力系統の公平な利用環境を整備するために以下のような取り組みを行なっています。

系統運用者や系統利用者が厳守すべきルールを策定

広域機関では、電気事業法に基づいて、系統運用者や系統利用者が厳守すべきルールである「送配電等業務指針」を定めています。これにより、託送供給業者、送電・配電に係る業務の適正かつ円滑な運用を図ります。

発電設備の系統アクセス検討を受付

発電設備等の系統連係希望者からの事前相談及び接続検討に関する申し込みを受け付けています。受付後に送配電事業者に検討を要請し、中立性のある第3者の立場からその回答案をチェック・検討し申請業者に回答しています

連係線の利用を管理

広域機関では連係線の運用容量及びマージンを算出し、公表しています。また連係線利用計画等の妥当性を審査し、計画の見直しを求めることで、連係線の適正な利用を促進しています。

事業者間のトラブルを解決

電気供給事業者間の「あっせん・調停」、その他の苦情、相談対応を行なっています。また、「あっせん・調停」に関しては各種の専門家から構成される紛争解決パネルを設置しています。

スイッチングに係る手続きを支援するためのシステムの運用

小売全面自由化及びライセンス制の導入に伴い、需要者の電気購入先を切り替え(スイッチング)件数が増加すると考えられるため以下のような機能を持つシステムの運用を行なっています。

需要者情報の取得

需要者のスイッチング後の小売電気事業者が広域機関に対して問い合わせを行うことで、需要者の設備情報や過去の電力使用量等の情報をワンストップで、統一フォーマットにより取得できます。

需要者情報の変更等

小売電気事業者が需要者の契約者名義等の需要者の情報やアンペアの変更、契約の廃止、需要者の新たな電力の使用に関して小売業者が行う開始の申し込みなどの手続きを、システムを利用しワンストップで行うことができます。

託送異動申し込み

小売電気事業者を変更した際に需要者が変更先の小売電気事業者に申し込みを行い広域機関に対して申し込みを行うことを通じて変更前の電気小売事業者の託送供給廃止及び変更後の電気小売事業者の託送供給かいし等の変更を、ワンストップで、統一フォーマットにより実現できます。