新・国家エネルギー戦略

新・国家エネルギー戦略とは

最近の世界におけるエネルギーをめぐる情勢変化を踏まえ、経済産業省が、2006年5月、エネルギー安全保障を軸とし、2030年に向けて特に重要な施策計画のことです。また、2006年7月には、経済成長戦略大綱及び経済財政運営と構造改革に関する基本方針2006において、新・国家エネルギー戦略等を踏まえた資源・エネルギー政策の戦略的展開を図ることとされました。

そこで、長期的な方向性として、省エネルギー目標・石油依存度低減目標・運輸部門における石油依存度低減目標・原子力発電目標という5つの数値目標を設定しています。

背景

原油価格が高騰するなど、国際エネルギー市場は大きく構造転換しました。今後とも中国・インド等アジアの需要急増が続き、需給構造は長期的に余裕が無い状態であり、石油の調達先は中東に一層依存することになり、加えて、IEA World Energy Outlook 2004によると原油ピークが2030年頃には到来するとの予測があります。

このような世界のエネルギー情勢は、日本経済・アジア・世界経済にとって大きなリスクとなります。このため、経済産業省が、2006年5月エネルギー安全保障を核に、 新・国家エネルギー戦略を策定しました。

新・国家エネルギー戦略の内容

政策の基本的考え方は、エネルギー安全保障を確立し、国民経済に安全・安心を提供・エネルギー問題と環境問題の同時解決による持続可能な成長基盤の確立・アジア・世界のエネルギー需給問題克服への貢献です。

また、長期的な方向性として、戦略における5つの数値目標を設定しています。1つ目は、省エネルギー目標です。省エネルギー目標とは石油ショック以降、省エネルギーの推進に取り組んだ結果、日本のエネルギー利用効率は既に世界最先端に到達しています。1973年から2003年の30年間で、約37%のエネルギー効率を改善しました。2030年までにさらに30%の効率改善を目指す目標です。

2つ目は、石油依存度低減目標です。石油依存度低減目標とは、我が国の一次エネルギー供給に占める石油依存度は第一次石油ショック以後低下し、資源エネルギー庁・総合エネルギー統計によると、2003年は、およそ50%、2030年までに、40%を下回る水準に引き下げる目標です。

3つ目は、運輸部門における石油依存度低減目標です。運輸部門における石油依存度低減目標とは、また、2000年は、運輸部門の石油依存度はほぼ100%です。2030年までに80%への引き下げを目指す目標です。

4つ目は、原子力発電目標です。原子力発電目標とは原子力発電は2004年度の日本の発電電力量の約3割を占める基幹電源です。供給安定性に優れ、発電過程においてCO2を排出しないクリーンなエネルギー源です。今後、原子力発電の比率を30~40%程度、もしくはそれ以上を目指す目標です。

5つ目は、海外での資源開発目標です。海外での資源開発目標とは、輸入量に占める自主開発比率は1973年度の8%から徐々に拡大しています。2001年度の企業の自主開発比率は引取量で引き続き15%程度を維持しています。国際的に資源獲得競争が激化する中、2030年には、更に拡大し40%を目指す目標です。

具体的計画

政府は目標を達成するためにこのような計画を進めています。まず、国民に信頼されるエネルギー安全保障の確立に向けた計画は、省エネルギーフロントランナー計画・運輸エネルギーの次世代化・新エネルギーイノベーション計画と原子力立国計画です。

1つ目に、省エネルギーフロントランナー計画は、2030 年までに2006年に比べ更に 30%、エネルギー効率の改善を目指すことです。

2つ目に運輸エネルギーの次世代化とは、石油依存度を、2030 年までに 80%程度とすることを目指すことです。

3つ目に新エネルギーイノベーション計画とは、太陽光発電コストを 2030 年までに火力発電並みにする計画です。バイオマスなどを活用した地産地消型取組を支援し地域エネルギー自給率を引き上げることです。

最後に原子力立国計画とは、2030 年以降においても、発電電力量に占める比率を2006年に比べて、 30~40%程度以上にすることで、核燃料サイクル早期確立、高速増殖炉早期実用化に取り組むことです。

エネルギー関連の法律・計画

エネルギー政策基本法

エネルギー政策基本法とは、2002年6月に制定された法律です。同法においては、「安定供給の確保」、「環境への適合」及びこれらを十分考慮した上での「市場原理の活用」という3つのエネルギー政策の基本的な方針が示されました。

エネルギー基本計画

エネルギー基本計画とは、10年程度を見通して、エネルギー政策の基本的な方向性を示すものです。2003年10月には、エネルギーの需給に関する施策の長期的、総合的かつ計画的な推進を図るため、エネルギー基本計画が閣議決定されました。世界的なエネルギー需給の逼迫傾向、地球温暖化問題をめぐる国際的な動きの活発化等、最近のグローバルなエネルギーをめぐる情勢変化を踏まえて改定し、2007年3月9日に閣議決定・国会報告されました。 

新・国家エネルギー戦略とエネルギー基本計画の相違点

新・国家エネルギー戦略は、特に重要と考えられる施策政策に絞り提示しているものに対し、エネルギー基本計画は、エネルギーの需給に関する施策の長期的、総合的かつ計画的な推進を図るため、10年程度の期間を一つの目安として、エネルギー政策全般について基本的な方向性を示すものである点です。

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