磁性流体発電

磁性流体発電とは

磁性流体発電はMagneto-Hydro Dynamics Generationの略でMHD発電とも呼ばれ、燃料電池と同様に電磁流体を用いて直接発電するものです。導電性流体を磁界中に流すとフレミングの法則に従って電圧が誘起し、この電圧が電極を介して外部に取り出されます。

従来の発電のほとんどに使われる古典物理学エネルギーを使わずに量子的エネルギー効果を利用した発電システムに分類されます。主な装置素材としては磁性流体、永久磁石、マイクロ波発信器、貴金属、アルゴンガス、駆動システムなどが利用されます。

発電方法の相違点

従来の発電方法 蒸気や燃料、水、風力によって駆動を回転させる発電方法
新たな発電方法 量子的エネルギーにおいて磁性流体を運動させ、ソリトン波動をプラズマ、プラズモンによって増幅させ直接駆動回転に利用した発電方法

磁性流体発電の特徴

磁性流動発電には以下のような特徴がみられます。

メリット
  1. 小型で大きなエネルギーが得られる
  2. 設置場所を選ばず、電気を必要とする場所で発電が可能。送電ロスが生まれない
  3. 化石エネルギーを必要とせず、CO₂の発生が少ない
  4. 発電の維持コストが安い
  5. 投下資本が少ない
  6. 安全性、安定性が高い
  7. 金属疲労が少なく、耐久性が高い
デメリット
  1. 内部や壁の不純物により冷却してしまう
  2. プラズマ自体が不安定である。(磁力線が乱れることでプラズマも乱れる)
  3. 高磁界との共存が難しい

磁性流体発電の種類

⑴オープンサイクルMHD発電

作動流体は、化石燃料による燃焼ガスに電離電圧の低いアルカリ金属(K、Cs)を添加したものです。熱電離により発電に十分な導電率を得るために予熱空気または酸素富加空気を用いて2700℃程度の高温燃焼ガスとして使用します。

メリット
  1. 比較的安値である石炭や石油を直接燃焼したものを作動流体とする
  2. 燃料に含まれる硫黄分をシード物質との化合物として除去できる
デメリット
  1. 燃焼ガスが多原子分子であるため熱電離だけでは十分な導電性が得られない
  2. 燃焼ガスの温度を効率よく高めるために空気の予熱や酸素濃度を高めた空気を使って燃焼しなければならない

オープンサイクルMHD発電について

オープンサイクルMHD発電について 出典:東京工業大学

⑵クローズドサイクルMHD発電

作動流体は、希ガス(He、Ar)にアルカリ金属を添加したものです。プラズマの非平衡電離現象を利用することから比較的低い作動気体温度(1800~2000℃)においても高効率発電が可能です。

メリット
  1. 導電率が燃焼ガスの場合より1~2桁程度高いため出力密度(単位体積当たりの発電出力)が高く、発電機の小型化が可能になる
  2. 化石燃料、高温ガス炉、核融合炉など多様な熱源に適応できる
デメリット
  1. 作動流体に高価である希ガスを用いる必要がある

クローズドサイクルMHD発電について

クローズドサイクルMHD発電について 出典:東京工業大学

磁性流体発電の原理

電気伝導性の物体が磁場を横切って動くと、その物体には電流が流れます。これはファラディ効果として知られている現象です。現在実用されている発電機はこの原理に基づいて作動しています。外部から磁場をかけた流路の中に銅コイルの代わりに電気伝導性のよい液体を流すと電磁誘導の法則に従って磁場および流れの方向と直角の方向に電位差が生じます。

そこでこの流路の磁場に平行な方の二つの面を電極とし、適当な外部負荷につなげば液体中に流れる電流を取り出すことができます。この現象は、以前から液体の流量を測定するのに応用されていましたが磁性流体発電はこれをもっと大規模に利用しようとするものです。

磁性流体発電の問題点

⑴作動流体の電気伝導度の問題

磁性流体発電機で高温気体から有効にエネルギーを取り出すには、まず気体の電気伝導度を高めなければなりません。その最も直接的な方法は、何らかの手段によって気体の温度を高め、熱電離を十分に起こさせることですがこれには材料面に制限があります。すなわち、発電部の流路はふつう絶縁体との壁と電極材料の壁とからなっていますが高温気体が直接これらの壁に接触しながら流れている現在の方式では気体温度が材料を溶かしたり、酸化したり、絶縁性が劣化するような限界を越えてはいけません。

いまのところこの限界温度は3000°Kと考えられています(1965年)。この温度では通常の気体分子は十分には電離しませんが、気体中にセシウム、カリウム、ナトリウムなどのアルカリ金属を少量だけ加えることで十分に電離させかなりの電気伝導度を期待できるようになります。

しかし、アルカリ金属はいずれも腐食性が強く、セシウムなどは非常に高価なものであるため磁性流体発電の商業化を考えるにあたっては、作動気体中に含まれているシード物質を手際よく回収・再生する方法を考えなければならずこれが問題となっています。

⑵高温燃焼の問題

化石燃料を燃やして3000°K程度の高温気体を発生させること自体にもいくつかの技術的問題が含まれています。現在までに開発されている磁性流体発電用高負荷・高効率燃焼法は高温熱交換器や酸素エンリッチ法などがあります。高温熱交換器は高温燃焼を行わせるため・発電プラント全体としての熱効率を高めるためにMHD発電部から出てくる約2000°Kの排気から熱を回収し燃焼用空気の予熱(約1800°Kまで予熱する)を利用するための高温熱交換器の開発が必要となっています。

また、酸素エンリッチ法を用いると空気の予熱温度は1200°K程度で済むため熱交換器に大きな負担をかける必要がなくなります。しかし、この方法では空気から酸素を分離するための装置が非常に大規模になってしまい発電プラント全体の効率・経済性の面ではかなりのマイナスになってしまいます。

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