地熱発電

地熱発電とは

地熱発電とは、地中深くから取り出した蒸気でタービンを回し発電する発電方法です。地球は、地中の奥深くに行けば行くほど熱が上がり、深さ30~50キロメートルで約1000度にまで達するとされています。そのため、この地熱発電は地球を一つの動力とし動いているものになります。

しかし、発電するにいたるまでの温度がある場所まで到達するのは難しいとされており、エネルギー資源として利用するのは困難を極めています。ただ、火山や天然の噴気孔、温泉などの地熱地帯と呼ばれる地域では深さ数キロメートルという比較的浅い地点で1000度前後のマグマだまりが存在しています。

このマグマだまりが地中に浸透して天水などを加熱し地熱貯留層を形成することがあります。このような地点で、地球内部の熱を直接エネルギーとして利用するものを地熱発電と言います。

地熱発電は、他の発電方法とは違いco2を排出することがなく国内で生産出来る重要な低炭素エネルギー源であり、今後導入が加速していくものと推測されている技術でもあります。

地熱発電の歴史

日本では、戦後日本の経済を立て直すためにエネルギー産業の国内における石炭の増産などの傾斜生産方式が行われ、安定的な電力の供給が行われるようになりました。

しかし、石油などの偏った資源の利用による脆弱性を打破するために1974年日本初の長期的で総合的な技術開発計画である「サンシャイン計画」が策定されました。

この計画では、太陽・地熱・石炭・水素のエネルギーの開発に力を入れるというものです。さらに1978年には「ムーンライト計画」が策定され、石油に代わる新しいエネルギー技術に注力し石油に依存しがちだった日本のエネルギー産業の脆弱性を改善するための体制が整えられていきました。

また、1993年には「ニューサンシャイン計画」が発足され、世界的に推進されていた省エネルギー技術や、革新的エネルギーの開発に尽力するという技術開発の推進が求められるようになりました。

地熱発電の仕組み

地熱発電の発電方法である、地中の熱を利用する地熱発電とは具体的にどのような仕組みで動いているのか述べていこうと思います。地熱発電とは、地中深くの熱資源に向けて生産井と呼ばれる井戸を掘削し、地上にあがってくる蒸気によってタービンを回します。その回る動力を利用して電力を生産するという仕組みとなっています。

地熱発電の分類

このような蒸気によってタービンを回し、発電することを蒸気発電方式と呼ばれその中でもいくつかの方式によって分類されています。

坑口から噴出する熱水と蒸気が混ざり合っている場合に、気水分離機で蒸気のみを抽出しその抽出した蒸気でタービンを回す方法はシングルフラッシュ方式と呼ばれており、これは大分県の大岳発電所や岩手県の葛根田地熱発電所で行われています。

また、気水分離機で蒸気と熱水を分離させた後に、その熱水を減圧させ再び蒸気を発生させタービンを回す方法はダブルフラッシュ方式とされており、大分県の八丁原発電所で採用されている方式になります。

ここまでの二つの方式は、坑口から熱水と蒸気が混ざり合っている場合に採用される方式ですが、坑口から蒸気のみが噴出している場合は気水分離機を利用せずそのまま上がってくる蒸気を利用してタービンを回します。この上がってくる蒸気をそのまま利用する方法はドライスチーム方式と呼ばれ、岩手県の松川地熱発電所で主に行われています。

地熱発電の特徴

地熱発電には、いくつかの特徴があります。その一つ目が純国産のエネルギーの有効利用が出来ることです。これは、前述で述べたようにどこででも出来る発電方法ではなく、火山などのマグマだまりといった地形がなくては上手く発電出来ません。そのため、国内で生み出されることが多く純国産のエネルギーとして有効的に利用することが出来ます。

またこの地熱発電は、火力発電のように石炭や石油などの燃料が必要なく地中の熱だけを利用して、発電するため無駄に燃料を利用する必要がないという大きな特徴があります。その他にも、風力や太陽光とは違い天候や時間に左右されることなくいつでも発電出来るというメリットも存在します。

地熱発電の課題

ここまで述べてきたように、地熱発電には良いところが多くあり便利そうに見える地熱発電ですが、それと同じくしていくつかの課題も存在します。今回はそれも合わせて紹介させていただきます。

地熱発電は、山間地で発電されるため発電所までの距離があり、また開発に至るまでのリードタイムが長いため他の電源種によって送電線の容量が満杯になってしまうという事例も確認されています。

地熱発電は、前述にもあるように温泉地で行うこともあるため地域での連携が不可欠となっています。しかし温泉地での発電所に対する反対意見も多く、理解に至っていない人も多いとされています。

温泉地の自治体や住民などの理解を得るため、対象となった温泉地の調査が始まってからは年度毎に説明を行っているとされていますが、住民の意見も考慮しなくてはならないため、この問題については2019年になった今でも解決するのには時間がかかるようにも考えられます。

海外の地熱発電

日本の地熱発電の普及にはまだ時間がかかりそうなのに対して、この地熱発電を上手く活用し燃料を大きく削減したという国も存在します。

その国はアイスランドで、2015年のデータによればアイスランドの消費電力の3割が地熱発電という事例も存在しています。アイスランドは1970年のオイルショックの時代にエネルギー政策の意識改革について迫られ、水力と地熱の発電に力を入れていくことになったのです。

このアイスランドは、地熱発電は温泉に影響を及ぼすとし反対している日本とは真逆の考えを持っています。その考えとは、アイスランドの首都であるレイキャビクにある国連大学の地熱エネルギー利用技術研修プログラムの統括責任者が述べた「地熱発電があるから温泉がある」という考えです。そのためレイキャビクの温泉プールである「ブルーラグーン」という施設では近くの地熱発電所の温排水を利用しているのだそうです。

また、アイスランドの地熱発電技術には日本の企業も参入しており三菱重工や東芝などの企業が地熱発電所に対して技術を提供するといった協力があったから発電所が出来たという声もあります。

日本の地熱発電に対する関心

日本は、海外に比べても火山の量が多いため世界でも有数の地熱資源を保持しているということになります。平成22年のデータでは、日本の地熱資源の量はアメリカやインドネシアに次ぐほどともされており、アメリカの地熱資源量は3000万kW(平成22年度・JICA作成)インドネシアの地熱資源量は2779万kW(平成22年度・JICA作成)なのに対し、小さな島国の日本では2347kW(平成22年度・JICA作成)とされており、日本の地熱発電に対しての可能性を示唆しています。

日本の地熱発電に対する関心については、前述でもあるように国民の理解を得るのが難しく、また気候条件や昼夜に捉われないため有力な資源ではあるのですが立地的にまだ研究が必要だという声もあがっています。

しかし日本の企業の関心は深く技術も高いため温泉地などの自治体から理解を得ることが出来れば大きく進展する可能性を秘めています。この先の日本の経済を考えると、貴重な資源である石炭や石油を削減することは必要となるため地熱発電に対しての関心をもっと広め、国民の意識を変える必要性も出てきます。

そのため、アイスランドが行ったように国全体での意識改革が必要になるということになります。私たち国民の認知度並びに、理解いていくことも今後の課題となるのだとされています。

また、地熱発電は生産コストが低くこれからも生産コストの削減をするための研究が進められており、2050年に向けてコストダウン出来るように研究が進められています。日本では、2020年~2030年には実用的に利用出来るとされており、完全な価格競争力を持つと想定されています。

まとめ

地熱発電は、アイスランドのように上手く利用することで大きく社会に貢献することが出来る技術であり、また資源も削減出来るため地球にも優しいものです。

しかし一回の発電で得ることが出来るエネルギーの量が少なくまた立地条件による研究の遅れや、利用に至るまでのエネルギーを貯めるまでの時間も長いため実用化にはまだ時間がかかってしまうという課題もあるため、これから利用を拡大させるためには一つ一つ課題を解決いていく必要性が出てきます。これからの日本には、そのような力が求められていくと考えられています。

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