国内総生産(GDP)

国内総生産(GDP)とは

国内総生産(GDP:Gross Domestic Product)とは、四半期または1年間といったある期間において、特定の国の物理的な国境内で生産された最終的な財とビジネスの合計市場価値を測る指標です。GDPは、その国の経済規模と成長率を測るうえで役立ちます。

名目GDPと実質GDP

名目GDP(Nominal GDP)とは、ある期間における財やサービスの生産を、当時の市場価格(現在の価格)で評価したGDPです。インフレや物価上昇の影響を反映するため、名目GDPの増加は、必ずしも実際の経済成長を意味するわけではありません。名目GDP(Nominal GDP)は、同一年内の異なる四半期の経済活動を、市場価格ベースで比較する際に用いられます。

一方の実質GDP(Real GDP)とは、インフレに合わせて調整されたGDPです。特定の年に経済が生産した財やサービスの数を反映しており、物価変動の影響を受けた数値が表れます。 実質GDPはインフレの影響を除去して計算されるため、経済の実質的な成長をより正確に反映します。

一人あたりGDP

一人あたりGDPとは、国の総GDPをその国の人口で割った数値です。その経済における一人あたりの生産量や所得量を示すGDPであり、国民の平均的な生活水準を示す尺度になります。 ただし、その国の平均的な生活費 や所得分配の不平等を考慮しておらず、実態を反映しきれない可能性があります。

背景

GDPの概念が生まれた背景には、1930年代に発生した大恐慌があります。経済状況の正確な把握と対策のために、国民所得を的確に測定する必要が生じたのです。GDPは大恐慌への対応として、1937年に全米経済研究所のエコノミストであるサイモン・クズネッツが提案しました。

当時はGNP(国民総生産)が主要な経済管理システムでしたが、1944年のブレトンウッズ会議後には、GDPが国家経済を測定するための標準的な手段として広く採用されました。 GDPは経済の健全性について最も多くを語る指標として、各国のエコノミストやアナリスト、投資家、政策立案者に参照されています。

国内総生産(GDP)の特徴

GDPから分かることは、主に「経済の成長率」「インフレまたはデフレの可能性」の2つです。 GDPの変化を前年度と比較することにより、経済がどれだけ早く成長しているかを測定できます。GDPの成長率が高い場合、需要と供給のバランスによってインフレが進む可能性があります。 また、名目GDPと実質GDPに剥離がある場合、名目GDPと実質GDPの差から、物価の変動(インフレやデフレ)を読み取る手がかりになります。

なお、GDP推移のデータについては、以下ページにて詳細を記載しています。

https://pps-net.org/gdp

計算方法:三面等価の原則

GDPの計算方法は「支出アプローチ」「生産アプローチ」「所得アプローチ」の3つです。理論上はどの計算方法を用いても同じ数値になり、これを三面等価の原則といいます。しかし、実際には完璧に十分なデータを収集できるわけではないため、異なる数値が算出されることがあります。

支出アプローチは、経済に参加する様々なグループによる支出を合計した手法です。アメリカのGDPは支出アプローチに基づいて測定されており、「消費+政府支出+投資+純輸出」で計算できます。

生産アプローチは、国内で生産されたモノやサービスの付加価値を合計した手法です。具体的には売上高から中間投入の価値を引いた「付加価値」を合計することでGDPを算出します。 パン屋で喩えると、全てのパン(最終製品)の売上から、小麦粉の材料費などの中間投入の価値を引いたものが付加価値です。

所得アプローチは、すべての生産要素によって得られた所得を合計する手法です。労働に支払われる賃金や土地が生み出す家賃、利子の形での資本の収益、企業利益が含まれます。

日常生活との関係

GDPは一見、日常生活と無関係に思われがちですが、実は密接な関係があります。

経済は政府・企業・家計などの経済主体により成り立っているため、これらの様々な主体で成立する日本経済の景気動向を把握するためには、GDPの確認が適しているのです。GDPを把握することにより、公共投資や輸出、設備投資、個人消費、住宅投資といった最終需要の景気動向を確認できます。

また、一般的にGDPが高い国ほどエネルギー消費量も大きくなる傾向にあり、日本もその一つです。「こうした背景も、省エネルギー技術や再生可能エネルギー推進の根拠となっています。

国内総生産(GDP)の限界

GDPは政策決定や投資判断などの目的で利用されていますが、完璧な指標ではなく、限界があります。

例えば内職や地下経済の活動、ボランティア活動、家事労働の価値はGDPに含まれません。コストや浪費を経済的利益として計上することや、所得の分配状況を考慮しないことも、GDPのデメリットとしてしばしば批判の対象になります。