ビルオーナーとテナントによる新電力事業の可能性
| 政策/動向 | 再エネ | IT | モビリティ | 技術/サービス | 金融 |
一般社団法人エネルギー情報センター

新電力への切り替えは、テナントの方にとっては簡単ではありません。基本的に建物ごとの契約となるため、オーナーの理解が必要なためです。そこで、グリーンリースの考えを取り入れた新電力事業の可能性について考察します。
テナントによる新電力切り替え
テナントの皆様にとって、日々の電気代はできる限り削減したい項目であるかと思います。そのため、新電力への切り替えにより電気代を削減したいケースも増えると想定されますが、現状では基本的に建物(受電設備単位)ごとの契約になるため、簡単に新電力に変更はできません。ただし、2016年度から本格的に始まるグリーンリースを取り入れることにより、ビルオーナーとテナント双方にメリットの生まれるビジネスの形が形成される可能性が高まります。

グリーンリースの考え方
グリーンリースとは、ビルに対する省エネや環境配慮を推進することにより、ビルオーナーとテナント双方にメリットが生まれる契約体系のことです。例えば、省エネ設備の設置に必要な費用を、ビルオーナーとテナントの双方で分担し、削減した光熱費の利益を適切に配分するような契約となります。一般的に、グリーンビルディング化に要した費用の回収は、長きにわたります。現状の場合、その負担を光熱費の削減効果が見込めないビルオーナが回収可能なケースは限定されます。テナント側としても、よほど契約期間が長いなどの状況がない限り、簡単には省エネ等への設備投資に手を出しづらいです。その点、グリーンリースでは双方が設備投資を回収可能な契約を形作ることが可能です。
新電力による光熱費削減の場合を見ると、現状では新電力への変更が直接的にはビルオーナーにとって経済的便益を生みません。なぜなら、電気代の支払いはテナントによって行われるため、その経済効果はテナントが享受するからです。そのため、新電力への切り替えによるビルオーナー側のインセンティブを生みづらい構造となります。貸借の条件として電気代が安くなることを条件づけるメリットはありますが、必ずしも新電力への切り替えに積極的になるとはいえません。一方テナント側も、自社のみではなく、ビル全体の契約変更が必要なため、新電力への切り替えに対し消極的になる可能性が高いと思われます。
ここでグリーンリースの考え方を取り入れると、新電力切り替えによる利益をビルオーナーとテナントの双方が享受可能な配分とするなど、新たなビジネスモデル形成の可能性が生まれます。その際、環境配慮への設備投資と新電力をグリーンリースに組み込んだビジネス展開などが期待できます。

省エネ事業や社内環境改善への展開
グリーンリースモデルの場合、省エネによる費用削減がビルオーナーにも還元されるため、積極的に設備投資を実施するケースも増えていくと想定されます。そこに新電力事業に関心のある層を組み込み、契約の切り替えと併せて、省エネや社内の環境改善を実施するような環境コンサル・ビジネスが生まれる可能性が期待できます。
このようなポテンシャルを持つグリーンリースですが、現在はJ-REITの大和証券オフィス投資法人や、日本リテールファンド投資法人などが一部で実施するのみです。まだまだ普及には至っていませんが、2016年から制度も構築されていき、普及が加速していくと見込まれています。

補助金の活用
この続きを読むには会員登録(無料)が必要です。
無料会員になると閲覧することができる情報はこちらです
次の記事:環境不動産とESG投資による新電力を活用したCSR活動
執筆者情報
一般社団法人エネルギー情報センター
EICは、①エネルギーに関する正しい情報を客観的にわかりやすく広くつたえること②ICTとエネルギーを融合させた新たなビジネスを創造すること、に関わる活動を通じて、安定したエネルギーの供給の一助になることを目的として設立された新電力ネットの運営団体。
| 企業・団体名 | 一般社団法人エネルギー情報センター |
|---|---|
| 所在地 |
〒160-0022 東京都新宿区新宿2丁目9−22 多摩川新宿ビル3F |
| 電話番号 | 03-6411-0859 |
| 会社HP | http://eic-jp.org/ |
| サービス・メディア等 |
https://www.facebook.com/eicjp
https://twitter.com/EICNET |
関連する記事はこちら
一般社団法人エネルギー情報センター
2026年03月30日
イラン情勢と原油高で電力市場はどう動くのか ― ウクライナショックとの違いを読み解く
中東情勢の緊迫化で原油価格が再び高騰し、「電力危機の再来」を懸念する声が高まっています。2022年のウクライナショックでは新電力の撤退や契約停止が相次ぎ、市場は大きな混乱に陥りました。今回の局面は当時と酷似しているのでしょうか?それとも異なる展開を辿るのでしょうか。本コラムでは、原油高が電力市場へ波及する構造を解き明かし、過去の危機との決定的な違いを冷静に整理します。
一般社団法人エネルギー情報センター
2026年03月06日
系統用蓄電池は、いつから「前提」になったのか 【第2回】立場ごとの時間軸と評価軸
前回は、系統用蓄電池が議論の「前提」として扱われるようになった背景を、三つの流れの合流として整理しました。制度が整い、コストが下がり、再エネの導入量が増えた。その重なりが、蓄電池を自然に検討の出発点に置く状況を形作っています。 ただ、同じ前提を共有しているはずの場で、同じ対象を扱いながら議論の焦点が重ならない場面が見受けられます。情報量が増え、関係者が増え、検討が深まるほど、情報の整理に要する前提条件が増えるという感覚を持つ担当者も少なくありません。 今回は、その背景にある構造を取り上げます。
一般社団法人エネルギー情報センター
2026年02月26日
系統用蓄電池は、いつから「前提」になったのか【第1回】前提化が生まれた三つの流れ
ここ数年、系統用蓄電池という言葉が特別なテーマとしてではなく、電力分野の議論の中で自然に登場する場面が目立つようになりました。再エネ拡大や需給調整、市場制度、投資環境など、異なるテーマを扱う会議や資料の中で、蓄電池が前提として語られること自体、もはや珍しくありません。 議論の入り口は補助金、価格差、市場、系統運用などさまざまですが、気づけば、かつて導入の是非や実証が主題だった蓄電池は、最初から存在する前提条件のように扱われ始めています。 本稿では、この前提化を形作っている要素の重なりを並べながら、背景を見つめ直すところから始めます。
一般社団法人エネルギー情報センター
2026年02月11日
電力小売全面自由化から10年 数字が語る制度と市場の現実【第3回】なぜ私たちは、10年経っても「電気代の比較」で迷い続けるのか
電力小売全面自由化から10年が経過し、電気料金のメニューや契約形態は大きく多様化しました。 一方で、どの電気契約が有利なのかという問いは、いまも多くの現場で解消されないまま残っています。 見積書を並べ、単価を比較し、条件を読み込んでも、最後の判断に踏み切れない。こうした迷いは、単なる理解不足や情報不足として片づけにくいものになっています。 判断が難しくなる背景には、情報の量ではなく、比較に持ち込まれる情報の性質が揃わなくなったことがあります。 単価のように「点」で示せる情報と、価格変動や運用負荷のように時間軸を含む「線」の情報が、同じ比較枠の中で扱われやすくなっているためです。 本稿では、この混線がどこで起きているのかを整理します。
一般社団法人エネルギー情報センター
2026年01月19日
2025年の電力先物市場:年間取引量4,583GWhで過去最高更新、年度物導入と中部エリア上場を控えた市場の変化
価格変動リスクへの対応を意識した取引行動が、実務レベルで具体化し始めた一年となりました。 制度面では年度物取引の導入、取引環境では流動性改善やコスト低減策が進み、企業側では中長期のヘッジ設計を見直す動きが重なりました。こうした複数の要因が同時に作用した結果、東京商品取引所(TOCOM)における電力先物の年間取引量は約4,583GWhと、前年比約5倍に拡大し、過去最高を更新しています。 中でも、東エリア・ベースロード電力先物が前年比約5倍、西エリア・ベースロード電力先物が前年比約3倍と伸長し、主要商品の取引が全体を押し上げた形となりました。加えて、2025年5月に取引を開始した年度物取引も、市場拡大を牽引する要素となっています。 本稿では、2025年通年の動向を中心に、市場拡大の背景と今後の論点を整理します。







