太陽光発電の廃棄対応、1kWhの発電につき0.8円程度の積立金の可能性、10kW以上の設備、2022年7月開始予定

2019年11月26日

一般社団法人エネルギー情報センター

新電力ネット運営事務局

太陽光発電の廃棄対応、1kWhの発電につき0.8円程度の積立金の可能性、10kW以上の設備、2022年7月開始予定の写真

経済産業省では平成31年より「太陽光発電設備の廃棄等費用の確保に関するワーキンググループ」を設置し、適切な積立が行われるよう制度設計が議論されています。本記事では、使用済み太陽光発電に対する省庁の動きを見ていきます。

太陽光発電設備の廃棄処分等に関する省庁の対応

平成24年7月の再生可能エネルギー固定価格買取制度の創設以降、太陽光発電の導入が拡大しています。太陽光パネルの耐用年数は20~30年程度とされており、2030年代半ば頃から使用済太陽光パネルの排出量が急増する見込みです。経済産業省の資料によると、2015年時点の使用済太陽光パネル排出量は約2400トンであったのが、2040年には約80万トンと15年間で300倍以上になると想定されています。

また、2019年11月から始まった卒FIT等により、2030年までは住宅用太陽光パネルを中心として使用済パネルが増加する見込みです。2015年には住宅用が677トン、非住宅用が1674トンであったのが、2030年には住宅用が2万5329トン、非住宅用は4150トンとなり、今後10年間は住宅用の使用済パネルが急増する見込みです。

太陽光パネルには、鉛、セレンといった有害物質が使用されているものもあり、使用済みパネルは関係法令に沿って適正な廃棄処理等が必要とされます。しかしながら、総務省が2017年9月に公開した「太陽光発電設備の廃棄処分等に関する実態調査」によると、損壊パネルによる感電や有害物質流出の危険性について、一部を除き、地方公共団体・事業者とも十分な認識がなく、地域住民への注意喚起も未実施であったとされています。加えて、損壊現場における感電等の防止措置は、一部を除き、十分かつ迅速に実施されていないという結果が示されました。

また、有害物質情報は排出事業者から産廃処理業者に十分提供されず、含有の有無が未確認のまま、遮水設備のない処分場に埋立てされ、有害物質が流出する懸念があると報告されています。こうした結果に基づき、総務省は経済産業省や環境省に対して、「災害による損壊パネルへの対処」「使用済パネルの適正処理・リサイクル」の2点を中心とした改善措置勧告を実施することとなりましたが、この勧告に対する改善措置状況を、2019年11月に総務省が公表しました。

災害による損壊パネルへの対処

災害による損壊パネルへの対処については、「感電等の危険性やその防止措置の確実な実施等について周知徹底すること」と総務省から環境省に勧告されており、それに対する環境省の対応が今回の発表では整理されています。

結果としては、環境省は平成30年の災害に際して、関係都道府県に対し、損壊パネルによる感電等の危険性等について、市町村・事業者への周知を求める通知を発出したとしています。

また、平常からの備えを一層推進するため、平成30年12月、環境省ガイドラインに、損壊パネルの取扱い・留意事項等を追記するなどの改訂・公表を行い、地方公共団体・関係事業者団体に周知したとしています。

使用済パネルの適正処理・リサイクル

使用済パネルの適正処理・リサイクルへの対処については、「有害物質情報を容易に確認・入手できる措置、排出事業者から産廃処理業者への情報提供義務の明確化、適切な埋立方法の明示」や「使用済パネルの回収・適正処理・リサイクルシステムの構築について、法整備も含めた検討」を進めることが総務省から環境省および経済産業省に勧告されました。

それに対し、環境省はパネルメーカー等が有害物質情報を積極的に開示していくことを、次世代電力ネットワーク小委員会の中間報告におけるアクションプランに盛り込んでいます。また、業界団体を通じた働きかけを実施し、環境省ガイドラインを平成30年12月に改訂しています。その他、平成30年7月、円滑・効率的なリサイクル・適正処分に係る制度の早期導入について公表しています。

経済産業省は、平成30年7月、エネルギー基本計画を閣議決定し、パネルの適正処理の確実な実施等を明記しました。また、廃棄等費用の積立計画・進捗状況の報告を義務化し、平成31年4月にはWGを立ち上げて積立ての内容について下記の通り検討を始めています。

廃棄等費用の積立てが必要となる見込み、0.6~0.8円/kWh程度となる可能性

FIT制度では、調達価格等算定委員会において廃棄等費用として資本費の5%が必要となることを前提に調達価格が決定されています。つまり、廃棄費用を太陽光発電事業者が捻出するという前提で、それでもなお適切な利益が発生するという計算の元で買取価格が毎年決定されている形となります。

また、事業計画策定ガイドライン(太陽光発電)においても、資本費の5%以上を一つの目安と定めており、事業者においては、少なくとも上記の水準で廃棄等費用を積み立てておくことが期待されています。

ただ、現状の制度では太陽光発電の廃棄に対する対応が薄く、発電事業の終了後、太陽光発電設備が、放置・不法投棄される懸念があります。そのため、経済産業省では平成31年より「太陽光発電設備の廃棄等費用の確保に関するワーキンググループ」を設置し、適切な積立が行われるよう制度設計が議論されています。

廃棄関連費用については、2012年度の調達価格ベースでは1.7万円/kW相当、最も低くなっている2019年度では1.0万円/kWと想定されています(図1)。しかしながら、廃棄費用については、kWhベースで積み立てることが適当ではないかとされています。理由の一つとしては、例えば発電量が少なく、売電収入が少ないときにも定額での積立てを求めることは、発電事業者の財務状況に大きな影響を与える可能性があるからです。

調達価格の算定において想定している廃棄等費用

図1 調達価格の算定において想定している廃棄等費用 出典:経済産業省

kWhあたりの積立単価は現状では確定しておりませんが、積み立てるべき額の水準として、以下の金額水準が想定されています。

  1. 案①:当該年度の非入札案件の調達価格の算定において想定している廃棄等費用
  2. 案②:当該年度の翌年度の非入札案件の調達価格※の算定において想定している廃棄等費用
  3. 案③:当該年度の非入札案件の調達価格の算定において想定している廃棄等費用を、当該年度の非入札案件の調達価格で除して、当該入札回の入札案件の最低落札価格を乗じた費用

なお、第3回の2018年度下期における太陽光発電の入札をベースでみると、廃棄等費用として積み立てるべき額の水準としては下記が想定されます。積立金額は年度ごとに算出されると考えられますが、2018年度ベースにおいては0.63~0.8円/kWh程度の費用負担となる可能性があります。

  1. ①当該年度の非入札案件の調達価格の算定において想定している廃棄等費用:0.80円/kWh(1.2万円/kW)
  2. ②当該年度の翌年度の非入札案件の調達価格の算定において想定している廃棄等費用:0.66円/kWh(1.0万円/kW)
  3. ③当該年度の非入札案件の調達価格の算定において想定している廃棄等費用を、当該年度の非入札案件の調達価格で除して、当該入札回の入札案件の最低落札価格を乗じた費用:0.63円/kWh(0.9万円/kW)

契約条件の変更がハードルに

FIT認定事業者(太陽光発電の設置者)は、買取義務者(送配電事業者又は小売電気事業者)と間で、FIT法に基づく「特定契約」を締結しており、本契約にて電気の調達価格(買取価格)等が定められています(図2)。

しかしながら、新たに廃棄費用の積立金を求める際、調達価格から積立金を源泉徴収的に予め差し引いて支払う形が想定されますが、その場合はFIT認定事業者と買取義務者との間で、①特定契約の契約変更を行うか、または②別途並行して積立金の支払契約を締結する必要があります。

現時点で既稼働の事業用太陽光案件は約50万件あるため、膨大な案件について契約変更等を行うことは、買取義務者にとって大きなコストとなります。また、太陽光発電を設置した個人・企業等からすると、積立金を突然求められるように見えてしまう可能性もあり、これによりFIT認定事業者が契約変更等に応じず、積立金の確保ができないリスクがあります。

このため、例えば法律に基づき、FIT認定事業者に対して積立金の管理機関への廃棄等費用の積立て義務を課した上で、FIT認定事業者と買取義務者の間で、個別の契約変更等を行わなくとも調達価格の支払と積立金の積立てを相殺的に処理できるような措置を講じることが今後検討される見込みです。

現行のFIT認定事業者と買取義務者の契約関係

図2 現行のFIT認定事業者と買取義務者の契約関係 出典:経済産業省

10KW以上の太陽光が対象、開始時期は2022年7月見込み

廃棄費用の積立に関する制度は、既に稼働済みのものも含めて、10kW以上の全ての太陽光発電が対象となるものと想定されます。この太陽光発電設備の廃棄等費用の積立てを担保する制度の施行時期については、2022年7月までの適切な時期に施行される見込みです。

なお、FIT認定事業者が積立て金を支払う期間については、太陽光発電所毎のFIT調達期間の終了前10年間とする方向性で取りまとめられています。

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