29年度のインバランス収支は約270億円の赤字、余剰時料金やFIT特例が要因に
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2018年06月28日
一般社団法人エネルギー情報センター
6月に開催された制度設計専門会合において、29年度における一般送配電事業者のインバランス収支が約270億円になったと発表がありました。二つの要因(余剰インバランス、FIT特例)について見ていきたいと思います。
平成29年4月~平成30年3月分の1年間で、約270億円もの赤字
2016年4月の小売全面自由化以降、発電事業者と小売電気事業者は、前日段階での発電・需要の計画を、一般送配電事業者に提出しています。計画を受け取った一般送配電事業者は、これら計画値と当日の実績値との差分の電気(インバランス)を調整し、電力の安定供給を維持しています。
インバランス調整には費用が必要ですが、一般送配電事業者が、発電事業者および小売電気事業者との間で事後的に精算を行っています。このインバランス精算の単価は、卸電力取引所における市場価格がベースとなっています。
傾向として、全国大のインバランス発生量が余剰のときは市場価格より低めに、不足のときは市場価格より高めになるような調整項αを用いて算定されます。具体的には、「スポット市場価格と時間前市場価格の30分毎の加重平均値×α+β」となります(αとβの値については、2017年10月に算定方式が一部見直されています。)
この一般送配電事業者のインバランス収支については、算定方法が変更された2017年10月以降も、全体としては赤字傾向が継続しています。中部と北陸の2社が黒字であり、残りは赤字となっています。
全体としては、平成29年4月~平成30年3月分の1年間で、約270億円もの赤字となっています。月間ベースでみると、計算方式が見直された10月以前は約27億円の赤字だったものの、10月以降は約19億円と改善しています(図1)。しかしながら、依然として赤字の状態が続いている状況です。
この赤字の要因は、インバランスが全国的に余剰傾向である中で(図2)、インバランス料金と調整力kWhコストの逆転が起きていることです。つまり、余剰インバランスの場合、一般送配電事業者は出力減の対価として収益を得られる一方、系統利用者(発電・小売)には支払いが発生するので、差し引きでマイナスとなる傾向にあります。
例えば、余剰インバランスの場合、6.5円/kWhの利益が発生しても、インバランス料金として8.7円/kWhを系統利用者(発電・小売)に支払うため、差し引きでkWhあたり2.2円の損失となります。一方で、不足インバランス発生の場合では、一般送配電事業者は利益を上げやすい傾向にあります(図3)。
加えて、FIT特例①のインバランス精算が「回避可能費用(市場価格)」で行われているため、さらにインバランス収支を悪化させる要因となっている可能性があります。通常と比較すると、FIT特例①ではインバランスが発生したとき、不足時には一般送配電事業者の利益が少なくなり、余剰時には損失が大きくなる傾向にあります。
FIT特例①によるインバランス精算の影響分は、インバランスリスク料による収入により補填される仕組みとなっています。この特例①の場合、託送料金支払の際に併せて精算が行われます。そのため本来は赤字もなく、問題なく運用できる仕組みとなっています。
ただし現在は、インバランスリスク単価が簡易な方法で年度ごとに定められており(図4)、このため負担増を適切に補填する額になっていないと考えられます(本来、インバランスリスク単価は、30分ごと・エリアごとに算定することとされています)。
特に、2017年度については、インバランスリスク料収入は全エリア0円であり、FIT特例①の負担増が全額、収支の悪化に結びついています(図5)。
こうした状況のため、制度設計専門会合では、「できるだけ早期にインバランスリスク料の算定が本来のルールに移行できるよう、一般送配電事業者及び資源エネルギー庁に対し、業務フローの検討やシステム改修等を速やかに進めるよう要請する。」ことが求められています。
ただし、制度設計専門会合の資料によると、本来のルールに基づくインバランスリスク料の算定ができるようになるまでには、1年以上の期間を要する見込みです。
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