人口2位のインドで2050年に100%再エネ可能と予測、ラッペーンランタ大学発表

2017年10月13日

一般社団法人エネルギー情報センター

新電力ネット運営事務局

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9月25日、経済成長を続けるインドにおいて、2050年に100%再エネへと移行することが可能とする研究を、ラッペーンランタ大学が発表しました。主に石炭で構成される、インドの現在のシステムよりも安価にすることが可能としており、MWhあたり57ユーロの現状から、MWhあたり46ユーロが実現可能と指摘しています。

インド、2050年に100%再エネが可能との想定、石炭よりも再エネが安価に

IMFによると、2016年度の人口においてインドは約13億人の規模となっており、中国に次いで2位に位置付けています。また、国連経済社会局の6月の発表によると、世界人口が現在の76億人から2050年に98億人に達するとの予測されています。その中で、インドの人口については、2024年頃には中国を抜き首位に躍り出るとされています。

経済成長についても、インドは高い経済成長率を維持し続けています。国際協力銀行が2016年12月に発表した調査では、中期的有望事業展開国ランキングにおいて、インドが3年連続で第1位となりました。

このように成長を続けるインドにおいて、2050年に100%再エネへと移行することが可能とする研究を、ラッペーンランタ大学が発表しました。主に石炭で構成される、インドの現在のシステムよりも安価にすることが可能としており、MWhあたり57ユーロの現状から、MWhあたり46ユーロが実現可能と指摘しています。

太陽光と蓄電池を主軸に、再エネ発電の総投資額は約3380億ユーロ

ラッペーンランタ大学が提案した再生可能エネルギーシステムは、主に太陽光エネルギーと蓄電池で動作します。太陽光発電の大規模な導入には、発電量の変動に対応するため、蓄電池が必要です。研究では、電力、海水淡水化、および産業ガスといったセクターの需要があるインドにおいて、2050年までの時間分解モデルに基づく100%再エネ移行への経路がシミュレートされています。

シミュレーションモデルでは、蓄電技術として揚水蓄電(PHS)、断熱型圧縮空気エネルギー貯蔵(A-CAES)、熱エネルギー貯蔵器(TES)、およびパワーツーガスなどが考慮されています(図1)。関連する全てのエネルギー技術の想定コストと技術的な状況を考慮し、5年単位の区切りでモデル化され、シミュレーションされます。

このモデルは、基準年(2015年)の発電所容量、その寿命および総電力需要を考慮しており、再エネ発電所および貯蔵技術を最適化してコストを最小にします。結果として、インドにおいて、2050年には100%の再生可能エネルギーを土台としたエネルギーシステムが実現可能であることが示されています。

エネルギーシステムのモデル

図1 エネルギーシステムのモデル 出典:ResearchGate

100%再エネの目標を達成するためには、インドは太陽光や風力などの再エネ技術に投資する必要があります。例えば、シミュレーションにおいて、太陽光発電は最も経済的な電力源となり、2050年には3.2〜4.3TWpの容量が導入される想定です。必要な総投資額は、約3380億ユーロと推定されています。これは、2015年の約1720万MWhから2050年の約6200MWhへと、電力需要が約3.6倍と大幅に増加することを反映したものとなります。

モンスーン期間の対応、風力やグリットで対応

気候の面においてインドにおいて特徴的なのは、モンスーンの季節にあります。インドのモンスーン期間は、太陽光発電量が減少する唯一の時期となります。100%再生可能なシステムにおいて、太陽光発電の不足は、風力発電などの増加と、モンスーンの影響を受けにくい近隣地域からの太陽光発電の補完によって補われることになります。

モンスーン期間においては、62%を占める地域において風力エネルギー出力が増加します。しかし、風資源の量はインド全土で同じではありません。風力資源が不足する部分については、太陽光発電とグリッドによって管理することとなります。

インド北西部のような、モンスーンによる影響を受けにくい地域は、送電網を介して他の地域に太陽光の電気を送電することができます。モンスーン期間では、グリッド使用率は非モンスーン期間から1.3%増加します。インド北西部とインド南部の2つの地域においては、モンスーン期間に発電電力の約43%を輸出することとなります。

PVプロシューマーが電力需要の約15-20%に貢献

再エネの導入のメリットについて、今回の発表では①気候変動の目標達成への貢献、②健康状態などへの貢献を挙げています。研究者のAshish Gulagi氏は、「健康管理コストの削減や、大気の質の向上による早期死亡の大幅な削減」という利点について言及しています。

また、再エネへの移行において、民間世帯、商業会社、産業などによるPVプロシューマーが増加することは重要です。より分散的で適応力のあるエネルギーシステムが形作られ、プロシューマーは、インドの総電力需要の約15-20%に貢献することが可能としています。加えて、PVプロシューマーの増加は、2030年までにインドで販売される自動車を電気自動車のみに制限するという政策に対して貢献する可能性もあります。

主任研究者のPasi Vainikka氏は、「インドが30年以内に完全に再生可能な電力システムに移行し、かつ現在のシステムよりも経済性に勝る可能性があるということは、開発途上国が経済発展において排出量が激しく増加する段階をスキップできることを示す。」と述べています。

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