北海道電力によるエリアインバランスの誤算定、全国のインバランス料金にも影響が及ぶ
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2017年02月03日
一般社団法人エネルギー情報センター

中部電力に引き続き、北海道電力も1月23日に誤算定によるエリアインバランス量(kWh)報告値への影響を経産省に報告しました。誤算定によるエリアインバランス量は合計で約3億58百万kWhとなります。また、今回の誤算定で全国各エリアのインバランス料金精算にも影響が及びます。
北海道電力、誤算定によるエリアインバランス量を経産省に報告
中部電力に引き続き、北海道電力は1月23日に誤算定によるエリアインバランス量(kWh)報告値への影響を経産省に報告しました。2017年1月12日に、北海道電力が経済産業省へインバランス誤算定を報告し、同日付で経済産業省から報告徴収を受領したことへの対応となります。今回の1月23日における報告の前、1月18日にも誤算定の概要、原因、再発防止策等について取りまとめ、経済産業省へ報告しています。
2016年4月から11月までの、誤算定がなかった場合のエリアインバランス量は合計で約1億97百万kWhの不足となります。また、誤算定によるエリアインバランス量は合計で約3億58百万kWhとなります(図1)。
図1 誤算定によるエリアインバランス量(kWh)への影響 出典:北海道電力
なぜ誤算定したのか
エリアインバランスは、発電インバランス(発電実績 - 発電計画)と 需要インバランス(需要計画 - 需要実績)を加算したものです。このエリアインバランスの算定について、域外分の考慮漏れがあり、それが誤算定の原因だと考えられています(図2)。
図2 北海道におけるエリアインバランスの誤算定例 出典:北海道電力
今回、北海道のエリアおよび需要インバランスが正しく算定されていなかったことにより、現行のインバランス制度が開始された平成28年4月以降の調整項(α値)の算定に影響を及ぼすこととなります。調整項(α値)の算定に影響を及ぼしているため、調整項(α値)の補正が必要となります。つまり、北海道エリアのみならず、全国各エリアのインバランス料金精算にも影響が及ぶこととなります(図3)。
図3 北海道電力のエリアインバランス誤算定による全国への影響イメージ 出典:北海道電力
改善や再発防止に向けた取り組み、システム改修による対策などで対応
北海道電力は今回の件について、改善策と再発防止策を打ち出すことにより対応するとしています。まず、改善策としては「システム改修による対策」を実施するとしています。内容としては、託送業務システムの改修を実施し、エリアインバランス算定の定義を正しいものに見直すものです。
これまで、エリアインバランス算定プログラムの作成に際して、仕様の根拠となる書類等の確認が不十分であり、本来考慮すべき「域外分」の加減がシステムに反映されていなかったとしています。この託送業務システム改修は、平成29年3月末完了を目指すとのことです。なお、それまでの対策としては、暫定的に、手処理によりエリアインバランス によりエリアインバランス算定を実施します。
再発防止策としては、「システム構築におけるチェック体制の強化」を実施するとしています。まず、これまでの問題点として下記の2点を挙げています。
- 制度変更に関する情報収集の不足
- 仕様の確認が不十分
上記2点の問題点に対応するために、「システム構築におけるチェック体制の強化」として、下記3点の対応をとるとしています。
- 他の一般送配電事業者と連携した自社仕様の確認
- システム仕様検討箇所による確実な仕様確認
- 再発防止対策の水平展開を実施
電力の安定供給には影響なし
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