電力のグリーン購入と電力供給事業者のデータベース
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2016年11月26日
グリーン購入ネットワーク(GPN)
環境配慮の視点で電力を選ぶ「グリーン購入」のためには、どの事業者が供給する電力がより環境負荷が少ないかを判断する必要があります。グリーン購入ネットワーク(GPN)では、「電力のグリーン購入」解説書を作成し、その考え方を示しています。「電力供給事業者の環境情報データベース」を作成しましたのでご紹介します。
「電力供給事業者の環境情報データベース」を公開
4月より電力小売の全面自由化がスタートし、様々な電力プランが増えてきました。電気料金や付加サービスだけに注目するのではなく、環境の視点から電力事業者を選択する「電力のグリーン購入」を実践する事業者や消費者も少なからず存在します。
グリーン購入ネットワーク(GPN)では、2015年度より「電力供給事業者の情報提供研究会」を開催し、その検討結果等を踏まえ、電力のグリーン購入の促進に向けたサイト「電力会社はどう選んだらいい?『電力のグリーン購入』」を開設しています。
このサイトでは、電力のグリーン購入の基本的な考え方などを示すとともに、事業者選択の一助としていただくいために「電力供給事業者の環境情報データベース」を公開しています。
「電力供給事業者の環境情報データベース」の特徴
- 電力供給事業者のCO2排出係数、再生可能エネルギー導入率、原子力発電の割合等の環境情報を一覧表示するとともに、平均値を上回る値(より環境負荷が少ない)かどうかを明示。
- 各事業者のインターネット上の公開情報、事業者へのアンケート調査に基づき、詳しい電源構成やバイオマス発電等の具体的な環境情報を把握し掲載。
電力供給事業者の環境情報データベース」の画面
電力のグリーン購入」解説書を発行
電力のグリーン購入のためには、どの事業者が供給する電力がより環境負荷が少ないかを判断する必要があります。「電力供給事業者の環境情報データベース」で情報提供項目のうち、CO2排出係数や再生可能エネルギーのメリット、固定価格買い取り制度(FIT)などについて、詳しく説明した「電力のグリーン購入」解説書を作成しホームページで公開しています。
この解説書より「発電方法と排出係数の関係」と「再生可能エネルギーの利点」「FIT制度による電力についての考え方」についてピックアップして紹介いたします。
発電方法と排出係数の関係
私たちが電力事業者から電気を購入して使う際には、その事業者自らが発電した電気や外部から調達したさまざまな発電方式の電気が混ざって送られてきます。電気事業者においては、電気の発電量に対する温室効果ガス(CO2換算)の「排出係数」を年度ごとに決める方法が広く用いられており*1、電気の使用に伴う温室効果ガスの排出量は、使用量(kWh)に排出係数(kg-CO2/kWh)を乗じて算定できます。この排出係数がより小さい電気を電気事業者から購入することが重要になります。
排出係数は発電方式により大きく異なります。一般的に石炭や石油、天然ガスなどの化石燃料を使った火力発電による電気は排出係数が大きくなりますが、同じ化石燃料でも石炭による発電の排出係数は液化天然ガス(LNG)の2倍近くとなっています。
一方、太陽光や発風力などの再生可能エネルギーによる発電は、排出係数が一般的にかなり小さくなります。発電設備等の製造時や廃棄時にCO2が排出されますが、発電(設備稼働)に伴う排出係数はほぼゼロとなります。バイオマス(廃棄物を含む)については、その利用過程により排出係数が異なりますが、一般的に燃焼や分解に伴って発生するCO2は、植物としての固定化などにより時間をかけて循環し、排出係数がゼロに近づくと言われています。ただし、バイオマスの加工や輸送等に伴って発生するCO2にも留意する必要があります。
電気事業者ごとの排出係数の算定方法は非常に複雑になっており、当該事業者が所有する施設による発電だけではなく、他社や電力市場からの調達についても考慮する必要があります。さらに、京都クレジットなどの海外クレジットの扱いのほか、特に固定価格買取制度(FIT)で調達された再生可能エネルギーの電気の排出係数は、環境価値を電気の全ユーザーで按分しているとみなされ、全体のほぼ平均値となり、現状では化石燃料による発電と同等になります。その結果、FITの再生可能エネルギーの電気を多く扱っている電力会社ほど調整後の排出係数は大きくなり、調整前の「実排出係数」とのかい離も大きくなります。
*1 環境省「電気事業者ごとの実排出係数及び調整後排出係数の算出及び公表について(平成27年4月1日改正)」
発電方式ごとの排出係数(電中研ニュースNo468 2010年 GPNで作図)
再生可能エネルギーの利点
電力の主な発電方法には、石炭や石油・天然ガスなどの化石燃料、原子力、そして再生可能エネルギーがあります。再生可能エネルギーは、太陽光、風力、水力、地熱、バイオマスなど、自然の営みや循環を利用して生み出されるエネルギーで、枯渇性の資源に依存せず、発電時に地球温暖化の原因となるCO2を排出しません。また、発電に伴って処理が困難な有害廃棄物が発生せず、影響が広域・長期間に及ぶような巨大事故を引き起こすこともないため、安全性という面でもリスクが小さいエネルギーだといえます。
再生可能エネルギーは、自然条件に応じて日本の多くの地域で導入が可能であり、貴重な国産エネルギーとして位置づけることができます。また、分散型エネルギーとして各地域の電力需要規模に対応したかたちで発電施設を設置することができ、地域における雇用の創出、自然災害等の発生時の電源確保やリスクの分散といった面からもメリットがあります。
海外では欧米諸国等を中心に再生可能エネルギーの導入が進んでおり、スペインやドイツなどでは主要な電源のひとつとなっています。また、大規模施設の建設や広域の送電網の整備を伴わずに導入できること、エネルギー資源の輸入を必要としないことから、途上国でも再生可能エネルギー利用の動きが広がりつつあります。
日本の再生可能エネルギーの割合は2013年度では11%程度となっていますが、水力発電を除くと2%程度の水準にとどまります。日本は再生可能エネルギーによる発電に関し大きなポテンシャルを持っており、安全で環境負荷の少ないエネルギーによる電力供給を促進していくためにも、電力のグリーン購入の実践が求められています。
発電電力量に占める再生可能エネルギーの国別比較(資源エネルギー庁 新エネルギー小委員会 第1回、2014年、資料3より)
FIT制度による電力についての考え方
再生可能エネルギーの普及を目的に2012年7月1日に導入された再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度(以下、FIT制度)は、再生可能エネルギー電気(太陽光、風力、中小水力、地熱、バイオマスなどからの電気)を、国が定める固定価格で一定の期間電気事業者が買い取ることを義務づけています。
電気事業者が固定価格で買い取る費用は、需要家全体で負担し、使用電力に比例した賦課金として電気料金から徴収されています。
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執筆者情報
グリーン購入ネットワーク(GPN)
グリーン購入ネットワーク(GPN)は、環境負荷の小さい製品やサービスの市場形成を促し、持続可能な社会経済の構築に寄与するため、グリーン購入活動を促進し、グリーン購入に関する普及啓発や情報提供、調査研究などを行っています。企業・行政機関・民間団体など様々なセクターが参加する緩やかなネットワークとして1996年2月に設立されました。2016年9月時点の会員数は合計1,837団体。
企業・団体名 | グリーン購入ネットワーク(GPN) |
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