東京電力、ピーク時の最大電力が4年連続減少の想定、自由化や節電が影響
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2016年04月10日
一般社団法人エネルギー情報センター

4月8日、電力需給検証小委員会が開催され、各電力会社の需給見通し等が発表されました。このコラムでは、東京電力における2016年度のピーク時発電量や需給見通しを見ていきたいと思います。
東京電力のピーク時発電量、2012年から連続で減少
東京電力のピーク時発電量が、減少傾向にあります。発電端3日最大電力においては、2010年の5722万kWから、2011年の4697万kWと1年間で約18%減少しました。この時期の発電量減少は、震災に伴う節電要請の影響が強いものと考えられます。
その後、2012年には5039万kWと、2011年度比で342万kW増加しましたが、2012年以降は年々減少し、2016年で4年連続の想定となります。2016年度においては、2010年度比1219万kW(約20%)の減少、前年の2015年度比でも159万kW(約3%)の減少想定です。
要因別に見ると、主に「①経済影響」、「②離脱影響」、「③節電影響」の3つに大別できます。近年の電力需要の減少は、「②離脱影響」と「③節電影響」が関係しており、新電力への切り替えに伴う電源開発や、節電意識の向上が影響していると考えられます(図1)。
図1 東京電力における発電端3日最大電力の推移と要因別対2010年度差 出典:東京電力パワーグリッド、東京電力エナジーパートナー
新電力への離脱等で577万kW、節電で735万kWの減少想定(2010年度比)
東京電力における今夏(2016年)の発電端1日最大電力の見通しは、4503万kWとの想定です。2010年度は5886万kWだったので、6年間で1383万kWの減少となります。
内訳としては、景気影響(GDP等の増加)で電力需要は上向いたものの、新電力などへの離脱(577万KW)や、節電(735万kW)などが影響した形です。また、気象状況も関係しており、最高気温が上がると最大発電量も増加する計算となります。仮に2016年度も2015年度猛暑並みの気温であった場合、電力需要が増え、4503万kWから4810万kWとなる見通しです(図2)。
図2 東京電力における今夏の発電端1日最大電力(2010年度比) 出典:東京電力パワーグリッド、東京電力エナジーパートナー
2015年度比では、新電力への切り替え影響が色濃く233万KWの減少
電力小売りの全面自由化により、新電力への切り替えと、それに伴う電源開発に拍車がかかる想定です。2016年度のピーク時最大電力の想定は、新電力などへの離脱影響部分を切り取ると577万kW減(2010年度比)でした。2010年~2016年の6年間の内、2016年度の単年度で見ると、新電力などへの離脱影響は233万kWです。これらから、2010年から2015年の5年間で、概ね344万kW(577-233)の離脱が実施されたと考えられます。
2016年においては、新電力などへの影響において1年間で233万kWの離脱想定なので、2010~2015年の5年間における344万kWと比較すると、離脱ペースが上昇していることが見て取れます。これは、電力自由化の影響が大きいと考えられます。電力切り替えの間口が広がったこと、新電力の知名度向上などが影響していくと考えられます。また、首都圏エリアには各地の一般電気事業者も参入するため、それらも影響すると想定されます。
気温に関しては、2015年度の猛暑より低くなり電力需要が少なくなると想定されるため、2016年度は242万kWの減少見込みです。節電は昨今(2015年)と比較すると効果が薄くなり、61万kWの増加見込みです。節電効果の算定基準は、9電力会社管内で、大口需要家・小口需要家・家庭それぞれに対して、2月中旬から3月上旬にかけて実施された節電アンケートに基づいています(図3)。
図3 東京電力における今夏の発電端1日最大電力(2015年度比) 出典:東京電力パワーグリッド、東京電力エナジーパートナー
予備率は3%以上を確保、安定運用の見通し
東京電力における今夏の需給バランスは、予備率が6.4%~9.4%となり、3%以上を確保できる見通しです(図4)。また、トラブル時においても安定した電力供給を実施できる見込みです。仮に、大型火力機(100万kW)がトラブルにより停止した場合においても、当日の供給力は5%程度は確保可能、また供給力トラブルが夜間継続した場合においても、翌朝運用に支障とならない水準まで回復可能な見通しだとしています。
図4 東京電力における2016年度の需給バランス 出典:東京電力パワーグリッド、東京電力エナジーパートナー
原子力の停止後も、火力の発電量は減少傾向
東京電力による火力発電量は原発の停止に伴い、2011年の4166万kWから2012年には4407万kWと約250万kW増加しました。しかしそれ以降、年々と火力による発電力は減少していき、2016年度は3923万kWと、原発が稼働していた2010年度の4150万kWよりも200万kWほど少なくなる見通しです。
火力による発電量が減少している要因として、節電や新電力の台頭、そして太陽光発電の増加が挙げられます。太陽光発電に関しては、年々と増加しており、2012年度は24.8万kWであったものが、2015年度には377.9万kWと15倍近くになっています。
太陽光発電量に関して、2016年度は一見すると147万kWと2015年度の377.9万kWよりも減少しているかのように思われます。しかし、これは2016年度は推定値、2015年度は実績値であるためです。2015年度も、推定値は約123万kWでしたので、それと比較すると2016年度は147万kWと増加していることが分かります。また、2016年度も、実績値は推定値を上回るものと考えられます(図5)。
図5 ピーク時における東京電力の供給力内訳 出典:電力需給検証小委員会
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