発電単価の低い石炭火力の新設容認へ
| 政策/動向 | 再エネ | IT | モビリティ | 技術/サービス | 金融 |
一般社団法人エネルギー情報センター

環境省が、石炭火力発電の新設を容認する方針を示しました。一方で、日本は国際公約や自主規制によりCO2排出量の削減を定めているため、経済性と環境保護のバランスを考慮した開発が促進されていくと考えられます。
環境省が石炭火力の容認
環境省が石炭火力発電所の建設を容認する方針に転じました。これまでは二酸化炭素の排出量が多いとして新設に慎重でしたが、電力業界の管理強化を条件に容認する形です。
環境大臣は、昨年5回にわたり、環境影響評価(環境アセスメント)の観点から石炭火力の新設を「是認しがたい」としていました。一方、東日本大震災以降、原子力発電の停止により石炭火力の新規建設案が2012年以来続出し、現時点では47基、設備容量2250.8万kWとなりました。G7の中で比較すると、日本の石炭新設計画は規模が大きく、電力業界としては自由化をにらんだ単価の低い発電所の需要が高まっていると考えられます。(図1)
図1 G7の石炭火力建設計画 出典:E3G Japan isolated as USA leads the way in G7 move beyond coal
各電源の単価
電力業界が石炭火力の普及を推し進めたい理由として、単価の低さがあります。コスト等検証委員会による試算によると、コモディティ価格等による変動はありますが、石油発電の単価は20円程度であるのに対し、石炭発電は10円程度と、半分ほどの費用で電力を作ることができます。(図2)
図2 各電源の発電コスト 出典:コスト等検証委員会
石炭火力建設の監視ルール
環境省は経産省と協力し、省エネ法とエネルギー供給構造高度化法に基づき、業界の取り組みを監視するルールを整備します。石炭を含む火力発電の効率に数値目標を定めて、効率の悪い設備の廃炉を促すほか、非化石電源の利用を合計で44%以上にするよう各電力会社に求めます。
CO2の削減目標
昨年末日本が合意したパリ協定では、今世紀後半のCO2排出を実質ゼロにするとしています。また、環境省の「気候変動長期戦略懇談会」においては、2050年80%削減の方向性が示されました。日本においては、2030年時点のCO2排出量を2013年と比較し26%減らす国際公約を掲げました。電力業界については、2030年度の1kWhあたりのCO2排出量を、2013年度比で約35%削減するとの自主目標を発表しています。
世界の動きとしては、アメリカが石炭発電の規制方針を示し、イギリスが2025年に既存の石炭火力の撤廃を決めるなどがあります。そのため、日本においても今回の石炭発電の容認といった電力業界の便益や経済性の向上に加えて、CO2排出量の少ない電源の確保も進められると考えられます。
出典:電気事業連合会
この続きを読むには会員登録(無料)が必要です。
無料会員になると閲覧することができる情報はこちらです
執筆者情報
一般社団法人エネルギー情報センター
EICは、①エネルギーに関する正しい情報を客観的にわかりやすく広くつたえること②ICTとエネルギーを融合させた新たなビジネスを創造すること、に関わる活動を通じて、安定したエネルギーの供給の一助になることを目的として設立された新電力ネットの運営団体。
| 企業・団体名 | 一般社団法人エネルギー情報センター |
|---|---|
| 所在地 |
〒160-0022 東京都新宿区新宿2丁目9−22 多摩川新宿ビル3F |
| 電話番号 | 03-6411-0859 |
| 会社HP | http://eic-jp.org/ |
| サービス・メディア等 |
https://www.facebook.com/eicjp
https://twitter.com/EICNET |
関連する記事はこちら
一般社団法人エネルギー情報センター
2026年02月11日
電力小売全面自由化から10年 数字が語る制度と市場の現実【第3回】なぜ私たちは、10年経っても「電気代の比較」で迷い続けるのか
電力小売全面自由化から10年が経過し、電気料金のメニューや契約形態は大きく多様化しました。 一方で、どの電気契約が有利なのかという問いは、いまも多くの現場で解消されないまま残っています。 見積書を並べ、単価を比較し、条件を読み込んでも、最後の判断に踏み切れない。こうした迷いは、単なる理解不足や情報不足として片づけにくいものになっています。 判断が難しくなる背景には、情報の量ではなく、比較に持ち込まれる情報の性質が揃わなくなったことがあります。 単価のように「点」で示せる情報と、価格変動や運用負荷のように時間軸を含む「線」の情報が、同じ比較枠の中で扱われやすくなっているためです。 本稿では、この混線がどこで起きているのかを整理します。
一般社団法人エネルギー情報センター
2026年01月19日
2025年の電力先物市場:年間取引量4,583GWhで過去最高更新、年度物導入と中部エリア上場を控えた市場の変化
価格変動リスクへの対応を意識した取引行動が、実務レベルで具体化し始めた一年となりました。 制度面では年度物取引の導入、取引環境では流動性改善やコスト低減策が進み、企業側では中長期のヘッジ設計を見直す動きが重なりました。こうした複数の要因が同時に作用した結果、東京商品取引所(TOCOM)における電力先物の年間取引量は約4,583GWhと、前年比約5倍に拡大し、過去最高を更新しています。 中でも、東エリア・ベースロード電力先物が前年比約5倍、西エリア・ベースロード電力先物が前年比約3倍と伸長し、主要商品の取引が全体を押し上げた形となりました。加えて、2025年5月に取引を開始した年度物取引も、市場拡大を牽引する要素となっています。 本稿では、2025年通年の動向を中心に、市場拡大の背景と今後の論点を整理します。
一般社団法人エネルギー情報センター
2026年01月19日
電力小売全面自由化から10年 数字が語る制度と市場の現実【第2回】10年で広がった、「経営の期待」と「現場の実務」の距離
「自由化から10年」という節目を迎え、制度の成果や市場の成熟度をめぐる議論が活発化しています。 現場の会話をたどると、同じキーワードでも立場により意味がずれます。 たとえば、経営の「コスト削減」は現場では「業務負荷の増加」、制度側の「安定供給」は供給現場では「柔軟性の制約」として現れます。 第2回では、こうした変化のなかで生じている立場ごとの認識のずれを整理し、経営・現場・供給事業者という三つの視点から、なぜ議論が噛み合わないのかを構造的に考察します。
一般社団法人エネルギー情報センター
2025年12月31日
電力小売全面自由化から10年、数字が語る制度と市場の現実【第1回】数字の区切りに惑わされず、いまの制度と市場を見直す
「自由化から10年」という言葉が、各所で頻繁に取り上げられるようになりました。 しかし、制度の導入や市場設計の見直しが今も続いており、電力を取り巻く環境は「完成」に近づくどころか、なお変化の途上にあります。 本稿では、数字がもたらす完了感と、制度・市場の実態との間にあるずれを整理し、“節目”という言葉の意味をあらためて考えます。
一般社団法人エネルギー情報センター
2025年12月27日
政府も注目する次世代エネルギー 核融合の仕組みと可能性 【第5回】社会実装と中長期シナリオ 2030年代のロードマップと日本の戦略
これまで4回にわたり、核融合という次世代エネルギーの可能性を、研究・技術・制度の観点からたどってきました。長らく“夢のエネルギー”と呼ばれてきた核融合は、いま確実に社会の現実へと歩みを進めています。 最終回となる今回は、社会実装に向けたロードマップと、日本が描くべき中長期戦略を考えます。 核融合が“希望の象徴”で終わらず、私たちの暮らしに息づくエネルギーとなるために、次の時代に向けた道筋を描きます。








