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デマンドレスポンス:企業ケーススタディー

株式会社西原エネルギー

代表取締役 高橋洋平

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前回の記事ではデマンドレスポンス(DR:Demand Response)の概要を鳥瞰してみました。今回は前回紹介した「Capacityとしてのデマンドレスポンス」と「Balancingとしてのデマンドレスポンス」をビジネスとして手掛けている企業をそれぞれ紹介していきます。

デマンドレスポンス:企業ケーススタディー CapacityとBalancing

前回の記事ではデマンドレスポンス(DR:Demand Response)の概要を鳥瞰してみました。今回は前回紹介した「Capacityとしてのデマンドレスポンス」と「Balancingとしてのデマンドレスポンス」をビジネスとして手掛けている企業をそれぞれ紹介していきます。

先ず「Capacityとしてのデマンドレスポンス」を手掛けている企業として米国EnerNOC社を取り上げたいと思います。EnerNOC社は、デマンドレスポンスのアグリゲーター(DRアグリゲーター)の最大手企業であり、NASDAQに上場しています。売上は、2012年は2億8000万ドル、2013年には3億8000万ドル、2014年には4億7000万ドルと高成長を続けています。余談ですが、Harvard Business Schoolのケーススタディにも取り上げられています。(出所:http://www.hbs.edu/faculty/Pages/item.aspx?num=42945)

日本でも丸紅と合併支社を設立し、経産省のネガワット取引実証実験に参加するなど、デマンドレスポンスの市場に積極的に参画しているようです。

主力ソリューションであるEnergy Intelligence Software(EIS)はエネルギーマネジメントとデマンドレスポンスの双方の機能を提供します。これらの需要家の施設にESS(エナーノック・サイト・サーバー)というゲートウェイを設置し、このゲートウェイと本拠地ボストンにあるNOC(Network Operations Center)というコントロールセンターの間でリアルタイムのエネルギー消費を24時間365日体制でモニタリングしています。また自動デマンドレスポンスに対応すべく、OpenADR対応のESSの設置も開始しました。

同社のビジネスモデルは、電力会社と需要家の間に立ち、電力会社からの削減要請に従って、アグリゲートした需要削減分に応じで電力会社からインセンティブ報酬を得ることです。

Capacityとしてのデマンドレスポンス

同社の顧客は、主に商業施設や産業施設などの事業所(C&I:Commercial and Industrial)で、1事業所当たりの電力消費が年間10万ドルを超える需要家をターゲット顧客として捉えています。同社のアニュアルレポートによると、顧客層を7つのセグメントに区分しています。

顧客層における7つのセグメント

同社のデマンドレスポンスのサービスを利用する顧客数は2014年12月時点で6500社、事業所ベースでは1万5000か所にも上ります。これらの顧客と契約しているピーク電力需要は24-27GWにのぼり、その約1/3の9GWをDR資源としてコントロール可能です。売上比率を見ると、70%が卸取引市場からと大きいですが、電力会社との相対契約も20%を占めています。

EnerNOC社の売上比率

昨今話題のFERC745の影響に関しては、もしFERC745が無効と最終決定された場合は、同社の2014年5月以前の売上からEconomic DR分の売上20.1百万ドルが減額される見通しとの事です。更に2014年5月以降の売上のうち、2.0百万ドルが繰り延べされています。ただ、EnerNOC社のPJM向け売上の大半がCapacity DRであり、FERC745の判決の影響は限定的と見られているようです。

EnerNOC社はデマンドレスポンス業界のリーディングカンパニーであり、日本企業から見てもテクノロジー、ビジネスモデルなど多様な観点からベンチマークすべき企業だと言えます。

次に「Balancingとしてのデマンドレスポンス」を手掛ける米国ベンチャーのOhmConnect社の動きを見てみましょう。同社は2014年創業のソフトウェア会社で、カリフォルニア州の3500世帯にスマホなどのインターネット経由で消費者にダイレクトに参加を呼びかけるデマンドレスポンスのサービスを展開しています。

彼らのデマンドレスポンスの対象は「Peaker Plant(ピーク用電源)」です。カリフォルニアの電力会社は法律によってピーク時の電力量を賄える電力の調達が義務付けられており、現状こうしたピーク電力は天然ガス火力発電によって賄われています。例えば、系統運用者であるCalifornia Independent System Operator (CAISO)は常に需要者の電力消費量のフォーキャストをアップデートしてますが、電力需要がこのフォーキャストを超えるときには(週に1~2回程度だそうです)、Peaker Plantから電力を賄います。

OhmConnectではカリフォルニア州の800か所の発電所の発電コストを5分おきにモニターしており、この電力需要予測がフォーキャストを超える際に、Peaker Plant発電の代替として、需要者にデマンドレスポンスへの参加を呼びかけるというサービスを提供しています(同社ではこうしたデマンドレスポンスの時間をOhmHourと呼んでいます)。通常発電コストは1メガワット当たり約30ドルに対し、こうしたPeaker Plantでは発電コストが最大で1メガワット当たり2000ドルに跳ね上がるようです。

PeakerPlantの発電コスト

電力会社からのDRインセンティブのうち、20%を手数料としてOhmConnectがもらい、残り80%を需要者に還元するというスキームです。需要者は平均で年間100ドル~150ドルの報酬を受け取れるようです。更にオートメーションと報酬額にはプラスの相関関係があるようで、NestのサーモスタッドやEVなどを保有している世帯では、報酬額が高くなる傾向があるようで、実際に月間のDRインセンティブが220ドルに達する世帯もあるようです。ちなみに同社では2015年10月からNestやその他の家庭用サーモスタッドなどホームオートメーションの製品を自社ウェブサイトでの販売を開始しました。

従来のデマンドレスポンスが系統システム全体のCapacityに不足分を供給していたのに対し、こうしたアンシラリー用途のデマンドレスポンスではローカル需要、特に家庭用PV、サーモスタッド、EVなど分散型電源(DER)にフォーカスしています。昨今のデマンドレスポンスのトレンドとして、こうした分散型電源を系統コントロールに活用する動きが顕在化しています。例えばカリフォルニア州では2016年6月開始予定のDemand Response Auction Mechanism (DRAM)というパイロットプログラムが導入されました。このプログラムのアグリゲータ公募が先日あり、OhmConnectは無事採択されたようです。契約高としては、Southern California Edisonと5.5MW、SDG&Eと1.85MWとなったようです。まだプログラムとしては小規模ですが、今後成長が期待される市場だと思われます。

最後に「Balancingとしてのデマンドレスポンス」を手掛ける企業として、アンシラリーサービスを展開しているカナダのベンチャー企業であるEnbala Power Networks社を紹介します。アンシラリーサービスとは、電力の需要と供給を一致させて周波数を一定範囲内に収めるために、分単位で出力を調整したり、需要調整に応じたりするサービスです。アンシラリーサービスの背景として、昨今の再生可能エネルギーへの世界的なシフトに伴い、系統電力網に接続される太陽光発電や風力発電が増えており、系統の安定化や電力需要のピークシフトがニーズとして高まってきています。オークリッジ国立研究所(ORNL)が実施した調査によると、約26GW(米国電力消費量の約3%に相当)がアンシラリー用途の市場規模だそうです。今後、太陽光や風力など出力が不安定な再生可能エネルギーの導入が進むほど、アンシラリーの重要性が高まると期待されています。

従来アンシラリー分野では発電側で周波数調整などの電力品質の保持を担保していたのですが、Enbala Power Networks社の場合は、デマンドレスポンスを利用して、需要家の設備を制御して需給調整を行います。特に同社では水道事業者、冷蔵倉庫、工場など大量に電力消費を行う需要家に対して、電力負荷を調整することでアンシラリーを実現しています。需要側での需給調整が可能になると、火力発電所などの初期投資が必要なアンシラリー手法に比べコストが安いので、競争力があると言われています。同社のビジネスモデルは下図3をご覧ください。

EnerNOC社のビジネスモデル

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