再生可能エネルギー業界のビジネスチャンスはこれから

執筆者:テクノケア株式会社 代表取締役 穴田輔氏

テクノケア株式会社 http://techno-care.jp/

本連載は書籍『エネルギー自由化は「金のなる木」70の金言+α』(2018年5月発行)より、コラム記事を再構成して掲載しています。

再生可能エネルギー業界のビジネスチャンスはこれから

2012年7月に再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT制度)がスタートして以来、再生可能エネルギーの普及が急速に進んでいます。特に太陽光発電の設置が群を抜いており、FIT制度スタート時は全国で1万件弱だった稼働済発電設備の数(10kW以上)が、4年経過した2016年6月末の段階で約42万件に急増しています。

一方で、風力発電はじめ小水力、バイオマス発電やその他の再生可能エネルギーは思ったように普及が進んでいません。FIT制度がスタートした4年半を見てみると、太陽光発電は設置バブル、その他の再生可能エネルギーは予想外に成長しないという極端な構図になっています。

現在、太陽光発電業界はバブルの反動で2016年は過去最高の倒産件数となり、特に販売・施工店は苦境に立たされている企業が多くなりました。またその他の再生可能エネルギーでは、特に小型の風力発電市場で急速な普及が進んできそうな状況です。これらをふまえて、今後のビジネスチャンスについて考えてみたいと思います。以下3点がポイントになると考えます。

1.太陽光発電業界は保守メンテナンス、中古市場が活発化する

2.発電した電気は、創って売る時代から、溜めて使う時代に

3.風力発電市場はこれから徐々に活性化する

それぞれ解説を加えていきますので、ビジネスの参考にして頂ければ幸いです。

1.太陽光発電業界は保守メンテナンス、中古市場が活発化する

お伝えしたように、再生可能エネルギーの中では、太陽光発電の導入量が突出しており、爆発的な伸びを見せております。

太陽光発電市場は、既に2015年度あたりから買取単価下落の影響を受け、新規の設置件数が減少し、2017年度以降は更に落ち込むことが予想されています。しかしながら、既に設備の申請をしていて稼働していない設備が、2016年6月末の段階で約45万件程度あり、稼働件数の約倍の数値となっています。従って今後も稼働設備の数はハイペースで増え続けていくと予想されています。

さて、このように急拡大した太陽光発電市場ですが、2017年4月に大きな転換期を迎え、ました。FIT制度開始から約4年半、設備の現場では多くの機器不具合、トラブル、事故が後を絶ちません。パネルのひび割れ、パワーコンディショナの故障、雑草問題、集電箱の焼焦げ等にはじまり、台風による設備事故や、火災時の感電リスクの為に、消火活動の妨げになるなど徐々に社会問題化しつつあります。

これらの現場の不具合は、設備が稼働する前段階の販売、設計、施工に問題があり発生しているケースも多く、さらに設置後の保守メンテナンスは、中小の設備(出力規模50kW未満)の場合、ほぼ実施されていないという状況でした。

そこで政府も動き出し、2017年4月からFIT法が改正され、保守メンテナンスの義務化や、買取期間中の事業計画の提出など、より設置者に事業に対する責任を持たせる制度内容に変わったのです。

 

今回のFIT法改正により、太陽光発電設備の保守メンテナンス市場は一気に拡大していくことが予想されます。まだまだ実施業者も少なく、特別なノウハウも必要ありませんので、関連業種からの新規事業参入も増加しています。

このビジネスは設置工事と違い継続性が高く、長ければ買取期間20年の間実施を任される場合もある為、請負単価や利益率は低いですが、1つづつ積み上げていけば安定収益に繋がる可能性があります。また、顧客との信頼関係を構築できれば、マンション管理会社と同様、他の提案も可能になります。

保守メンテナンスと合わせて、今後活性化するのが中古市場です。まだ時間がかかりますが、設置した設備を売却したいというニーズが少しづつ増えてきております。

発電設備のオーナーは、個人からサラリーマン、法人、投資家まで様々ですが、キャッシュを得る為の売却や、購入時に一括償却が終わり、今度は一転損失補填をしたいというような利益の乖離が大きい企業では、売却を検討する可能性があります。

また、買う側のニーズとしては、毎年ほぼ安定して売電収入を得られ、10年前後で投資回収が見込める設備を購入するのは魅力的な選択と思われますので、近い将来中古市場が活性化していくのは間違いありません。これらの中古市場に目をつけ、いち早く、売買仲介、査定、手続き代行といった事業を開始している企業も出てきました。

バブルがはじけ倒産が後を絶たない太陽光発電業界ですが、ある意味正常な状態に戻ったと考えます。設置後の新たな市場が開かれ、長期的な事業展開が可能になった今がビジネスチャンスと言えそうです。

2.発電した電気は、創って売る時代から、溜めて使う時代に

最近、スマートハウスやゼロエネルギーハウスという言葉をよく耳にするようになりました。電気を消費せずに自分で創って溜めて使うという新しいライフスタイルの住宅です。

ご家庭の電気も自由化され電気を選べる時代になりましたが、今後は電気を使わない時代がやってくるかもしれません。実はこの流れは太陽光発電の普及と共にやってきていて、2009年から本格的に普及がはじまったご家庭の太陽光発電の買取期間が10年後の2019年に終了する時期を境に本格的にその時代がやってきそうです。

その背景をご説明します。2009年あるいはそれ以前にご自宅に太陽光発電システムを設置されたご家庭の売電単価は48円/kWhでした。エリアによりますがご家庭の買電単価は24円~27円/kWh程度ですので、当然ほとんどの家庭は、余った電気を電力会社に売電する事を選択してきました。

ところが売電契約の終了する2019年からは、電気の原価に近い9円~10円/kWh程度の売電単価になることが予想されており、売電するより家の中で使う方がはるかに経済的になってきます。

その数は2019年で約50万世帯。以降毎年20万世帯づつ対象が広がります。24時間家の中で電気を使うには蓄電池が必要です。この蓄電池が2019年以降急速に普及するのは間違いないでしょう。政府や自治体からの補助金支給も年々手厚くなっており、蓄電池の普及は1つのビジネスチャンスになりそうです。

同時に普及が進むのが電気自動車です。日産の電気自動車リーフの宣伝でもあるように、電気自動車が蓄電池の代わりとして活用されています。実は大手の自動車メーカーは2019年に一斉に電気自動車を市場に投入する予定になっており、ここからも様々なビジネスチャンスが生まれそうです。

電気は創って売るから、創って溜める時代がもうすぐやってきます。ライフスタイルの変換こそが大きなビジネスチャンスになってくるでしょう。

3.風力発電市場はこれから徐々に活性化する

再生可能エネルギーの中で風力発電は、世界的にも大幅な導入拡大が進んでいます。導入コストが、他の電源と比べても安価になり、世界各国で太陽光発電以上に導入されるようになりました。しかしながら日本では、導入コストがまだまだ高く、太陽光発電に比べると導入が進んでいません。

しかしながら、風力発電の導入を推し進める為、買取単価が20kW未満の小型風力で55円/kWhと他の電源に比べて極端に高く設定された影響で、直近の1年間(平成27年11月~平成28年11月)の設備認定の申請件数は、312件から2863件と急増しています。

このように設備稼働前の申請件数が急増していることから、導入件数も大きな伸びを示すでしょう。世界で普及が進む風力発電は、これからが本番と言えそうです。

風力発電市場が活発化することで、システム販売や設置工事、保守点検、補助金申請代行等のビジネスも大きく拡大していきそうです。市場の動きに注目をしてみてください。

以上3点、今後の市場でのビジネスチャンスとしてお伝えしてまいりましたが、業界の流れは速く、政府の方針も急に変更になるケースもありますのでタイムリーな情報収集を行っていただければと思います。

執筆者:テクノケア株式会社 代表取締役 穴田輔氏

BEAS株式会社 http://techno-care.jp/