日本の水環境保全への取り組み

2017年08月25日

所属:國學院大学

インターン生:M.Rさん

日本の水環境保全への取り組みの写真

私たちが生きるためにきれいな水が必要不可欠です。水をきれいに保つために水環境を整える必要があります。そこで私は行政が行っている東京の水辺環境の向上への取り組みについて調べました。また、水辺を保護するための条約であるラムサール条約について紹介したいと思います。

水環境とは

水環境とは、水量・水質・水生生物・水辺地から構成されています。水量とは、平常時において、水質、水生生物等、水辺地の保全等を勘案した適切な水量が維持されるとともに、流量の変動が適度に確保されることです。また、土壌の保水・浸透機能が保たれ、適切な地下水位、豊かな湧水が維持されることです。

水質とは、水環境において、人の健康の保護、生活環境の保全、水生生物等の保全の上で望ましい質が維持されることです。水生生物とは、人と多様な水生生物等との共生がなされ、豊かな生物多様性が保全されることです。

水辺地とは、人と水とのふれあいの場となり、水質浄化の機能が発揮され、水辺地周辺の環境と相まって、豊かで多様な水生生物等の生育・生息環境として保全されることです。これらは相互に関係・影響します。

行政の水環境の向上

1.平成23年12月国土交通省水管理・国土保全局が行った良好な河川環境の保全への取り組み

国土交通省水管理・国土保全局は、良好な河川環境の保全のための整備を行っています。自然再生と水環境整備と水辺整備です。自然再生とは、魚類の遡上・降下が困難な地域において、魚道の整備・自然環境の保全・復元を必要とする区域についての河川整備・湿地再生を行う取り組みです。

水環境整備とは、水環境の悪化の著しい河川及び濁水、富栄養化などの著しいダムの浄化、浄化施設整備、水環境悪化の著しい河川に対する導水を行う取り組みです。水辺整備とは、治水上及び河川利用上の安全・安心に関わる河川管理施設の整備を行う取り組みです。

(1)自然再生の取り組み

横浜市・梅田川の整備では、洪水対策で川の断面を広げる改修を行う際山の斜面に沿う川の蛇行を残すことで、魚の暮らし場となる瀬や淵の形成や、餌となる虫を提供し稚魚の隠れ場となる水際植生の育成を促しています。

円山川の自然再生の取り組みでは、川の容量を拡大するための掘削を行う際に、水深が浅い温地帯を生み出し、コウノトリの採餌環境を創出しました。改修後、2008年10月にはコウノトリが復帰しました。遠賀川の改修では、河川横断施設の改築・魚道の改築及び新築・減水区間における試験的な流動増加等の流況改善・生息環境の改善として水際植生の確保、ワンド形成等、魚が住みやすい川づくりしました。

(2)水環境整備の取り組み

水環境整備の取り組みでは、汚染の著しい河川、湖沼において、水質の浄化を図っています。例えば、島根県松江堀川では、治水・利水事業として流量の豊富な河川から汚濁の進んだ湖沼への浄化用水を導入しています。また、静岡県佐鳴湖のように汚濁著しい湖沼では植生による浄化を行っています。

(3)海の環境に関する港湾の取組

海の環境に関する港湾の取組については、海底環境の改善・干潟・藻場の創出、港湾構造物の生物共生型への転換、海洋ゴミ・流出油の改修、海域環境のモニタリングと解析モデルの開発という取り組みを行っています。

海底環境の改善・干潟・藻場の創出の活動は三河港の人工干潟による潮干狩り・尾道糸崎港の魚の住みかとなっている藻場創出です。港湾構造物の生物共生型への転換の活動は、横浜港では老朽化した護岸を生物共生型に改良することです。海洋ゴミ・流出油の改修は、神戸港では清掃船「いこま」で行っています。

(4)瀬戸内海の環境に関する港湾の取り組み

海の再生全国会議 各湾における「海の再生プロジェクト」施策の情報共有・配信、市民等との連携・協働の推進などを目的として開催されています。平成19年度は大阪市、平成21年度は広島市にて開催されました。

海辺の自然学校 ・みなとの良好な自然環境を活かした体験型活動を積極的に支援しています。平成22年度は玉野市・周南市・尾道市・徳島市などの全国13か所で開催されています。

2.東京都の水環境に関する取り組み

東京の水循環の再生と水辺環境の向上にむけての活動地下水の保全と利用の適正管理・湧水等の保全・回復・水辺環境の向上・河川等の安全性向上など災害対策の推進を行っています。

地下水の保全と利用の適正管理については、地下水を取り巻く近年の状況変化を踏まえ、地下水の実態把握を行った上で、「保全と適正利用」のバランスを取るための管理方策を検討します。また、地下水利用の一つである温泉についても、地下水と連携した検証を継続します。

湧水等の保全・回復については、湧水は、河川の水源となるほか、生物を育む場所や地域のコミュニティ形成の場、観光資源になるなど有用な資源となるため地下水涵かん養に大きな役割を果たす緑地・森林の保全や地下水の涵かん養量を増やす雨水浸透を推進します。

水辺環境の向上については、東京の水辺環境の向上のため、水辺環境の整備を進める事業者や区市町村との連携・支援を行うとともに、清流の復活や皇居外苑のお濠の水質改善などの取組を継続し、隅田川周辺、臨海部等の取組を進めます。

河川等の安全性向上など災害対策の推進については、「東京都豪雨対策基本方針(改定)」等を踏まえ、流域対策、河川や下水道の整備など、浸水被害の軽減に向けた総合的な対策を実施します。また、大規模地下街等の浸水対策を進めるほか、洪水予報システムの機能強化や最新型レーダーの東京アメッシュへの導入などにより情報発信を強化します。

さらに、台風・豪雨等に伴う土砂災害の防止に向けて、砂防えん堤やのり枠工などの砂防施設の整備を進めるとともに、高潮等による浸水被害の防止に向けては、スーパー堤防の整備、防潮堤及び内部護岸等の耐水対策等を推進します。

水辺を保護するための条約

水辺を保護するための条約でラムサール条約があります。

ラムサール条約

ラムサール条約とは特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する条約です。ラムサール条約の基盤は水の循環を調整するものとしての湿地の及び湿地特有の動植物特に水鳥の生息地としての湿地の基本的な生態学的機能を保全すること、湿地の進行性の侵食及び湿地の喪失を現在及び将来とも阻止すること、国際的な資源として考慮・認識し、湿地及びその動植物の保全が将来に対する見通しを有する国内政策と、調整の図られた国際的行動とを結び付けることにより確保することを目的とした条約です。 1980年に日本はラムサール条約に加入しました。

沼沢地、湿原、泥炭地又は水域をいい、低潮時における水深が六メートルを超えない海域指定された土地のことを湿地といいます。指定された湿地は、国際的に重要な湿地に係る登録簿に登録されます。世界では世界には2,228の条約湿地があり、総面積は約2億1,491万haあります。(2016年2月22日)日本では、釧路湿原などの50か所登録されています。(2016年2月22日)日本の条約湿地面積は、148,002haです。(2016年2月22日)

日本のラムサール条約登録地

日本のラムサール条約登録地をいくつか紹介します。

釧路湿原

釧路湿原は北海道釧路市、釧路町、標茶町、鶴居村にあります。北緯43度09分、東経144度26分に位置しています。標高は3~10m です。面積は7863ha で日本最大の湿原です。国指定鳥獣保護区特別保護地区、国立公園特別保護地区および特別地域に指定されています。1980年6月に登録されました。

釧路湿原は、かつては海でしたが、海が後退し、太平洋との開口部に砂嘴が発達するにつれ汽水湖となり、3000年ほど前から砂嘴の内側の湖底に泥炭の蓄積がはじまって、いまのような湿原が形づくられました。東、北、西を丘陵に囲まれ、釧路川などの川が大きく蛇行しながら流れ込み、その支流が湿原を網の目のように走っています。

湿原の東側には3つの淡水湖沼があり、また湿原には大小のいくつもの沼が点在しています。泥炭地の約80%がヨシ・スゲ群落とハンノキ林の低層湿原で残りの約20%をヌマガヤ、ヤチヤナギを主とする中間湿原、ミズゴケ群落を主とする高層湿原で構成されています。

高層湿原にはトキソウ、サワラン、ホロムイソウなど、湖沼群にはセキショウモ、タヌキモ、 ネムロコウホネ、 ミツガシワ など植物が生育しています。野生動物も哺乳類約26種、鳥類約170種います。タンチョウ・オジロワシ・オオワシ・キタサンショウウオも生息地しています。

尾瀬

尾瀬は、福島県檜枝岐村、群馬県片品村、新潟県魚沼市にあります。北緯36度53分、東経139度11分に位置しています。標高は1400 ~ 1420m(湿原部)、1665m(尾瀬沼)、2356m(最高地点)です。面積は8711ha です。湿地のタイプは高層湿原・淡水湖です。国立公園特別保護地区および特別地域に指定されています。登録は2005年11月にされました。

尾瀬は、首都東京から北へ約140kmの群馬、新潟、福島の3県にまたがる、本州最大の高層湿原です。周囲を燧ケ岳、至仏山など2000m級の山々に囲まれた盆地状の底に、西側の標高1400m付近に尾瀬ヶ原、東側の標高1600m付近に尾瀬沼が広がり、燧ケ岳の北側には御池田代の湿原があります。

尾瀬は、積雪が4mを超える豪雪地帯にあり、1年の半分以上を雪におおわれるので、植物が枯死しても分解されず、泥炭となって積み重なり、低層湿原から中間湿原へ発達し、やがて地表面が盛り上がり、降水や霧だけで涵養される貧栄養性の高層湿原へと遷移してきました。

尾瀬は2007年、日光国立公園から独立し尾瀬国立公園となりました。 尾瀬ヶ原は面積約760ヘクタールの本州最大の高層湿原で、ホロムイスゲ、ツルコケモモ、 ミカヅキグサ、 ワタスゲ、ニッコウキスゲ、ミズバショウなど多様な湿原植物が生息しています。また、尾瀬沼は燧ケ岳の噴火によってせき止められた周囲9km、面積約184haの湖で、カタシャジクモが多数生育しています。

琵琶湖

滋賀県大津市ほか9市にあります。北緯35度15分、東経136度05分に位置しています。標高は85.6mです。面積は65,984haです。周囲は235kmです。水深は平均41.2mです。 湿地のタイプは淡水湖です。低層湿原国定公園特別地域に指定されています。登録は1993年6月です。

琵琶湖は、日本のほぼ中央に位置する日本最大の淡水湖です。総貯水量は275億m3です。 滋賀県は周囲をぐるりと山に囲まれ、その全域から大小460本の河川が琵琶湖に流れ込み、流出河川は南西部の瀬田川だけで、京都、大阪をへて淀川となって大阪湾へ注いでいます。

琵琶湖の周りには、河川や水路で琵琶湖とつながった内湖と呼ばれる付属の小さな湖沼がいくつかあり、現存する最大の内湖である西之湖が、2008年10月に拡大登録されました。琵琶湖は、約400万年前にできた古い湖で、多様な自然環境に富み、約600種の動物、約500種の植物が生息しています。

魚類ではホンモロコ、 ニゴロブナ、 ビワコオオナマズなど16種、淡水貝類の約30種の固有種がいます。ガンカモ類の重要な越冬地です。淡水漁業が盛んで、アユやニゴロブナ漁、稚アユや淡水真珠の養殖もおこなわれています。

水辺に生息する生物

水辺に生息する生物には絶滅危惧種に指定されている生物がたくさんいます。

タンチョウ

タンチョウは、脊椎動物門・鳥綱・ツル目・ツル科に属する鳥類です。体長は約1.4m、翼を広げた長さは2.4m、オスはメスよりやや大きな体をしています。頭頂は皮膚が赤く露出していて、顔から喉・首にかけてと風切羽の一部は黒色、それ以外は全身白色です。

くちばしは長く黄褐色で、脚はとても長く黒色です。日本では北海道に分布しています。1952年に国の特別天然記念物に指定されています。 明治維新後の開拓によって生息地の湿原が開発され、一時は絶滅したと考えられていました。

冬季の給餌によって数を増やし、2000年には約740羽が確認されています。しかし、今までの保護によって人への依存が進み、冬季の給餌なしでは個体群の維持が不可能となってしまいました。絶滅危惧II類(VU)の生き物です。

コウノトリ

コウノトリは、脊椎動物門 鳥綱 コウノトリ目 コウノトリ科の鳥類です。体長は約110cm、翼を開いた長さは200cmに及びます。全身白色で、風切羽が黒色です。くちばしは黒色で、まっすぐ長く、眼の周りと脚は燈赤色です。

コウノトリは江戸時代末期には各地で繁殖していました。しかし、明治時代に入ると狩猟が解禁されそのため大きく数を減らしました。その後、開発と水質汚染が進んだため生息数は減少し、戦時中の大木の伐採によって営巣地の多くも失いました。

1992年、兵庫県のコウノトリ保護増殖センターでは、中国やロシアから大陸産のコウノトリを増殖に取り組みました。2001年1月、コウノトリは72羽が飼育され、野生復帰への取り組みが行われています。絶滅危惧IA類(CR)の生き物です。

トキ

トキは脊椎動物門・鳥綱・コウノトリ目・トキ科の鳥類です。体長は約75cm、翼を開いた長さは約160cmです。全体的にずんぐりしており、黒色の嘴は長く湾曲し、後頭部には長い冠羽があります。全身うすい桃橙色をしており、顔の大部分と脚が赤い鳥です。日本では佐渡島に生息しています。

江戸時代には日本の水辺の至る所でみられただけでなく、東アジア全域に分布していました。しかし、トキはその数を急激に減らし、絶滅を騒がれるまでになっていました。1981年、当時佐渡に残っていた最後の野生のトキ5羽を捕獲し、人工繁殖を試みましたが、残念ながら日本産のトキは、2001年4月に1羽だけになってしまいました。

しかし、中国で発見された同種のトキをゆずり受け、佐渡のトキ保護センターで繁殖が行われ、野生への復帰が試みられています。