消えていく命

2017年08月28日

所属:多摩大学

インターン生:S.Kさん

消えていく命の写真

画像のカメは「イシガメ」と呼ばれる日本固有種のカメです。江戸時代以前からペットとして飼育されており、日本人にとって馴染み深いカメです。しかし、現在このイシガメは徐々に数を減らしており、いずれは絶滅する危険性があると言われています。

イシガメについて

そもそもイシガメとは、上記で述べたように日本固有種のカメであり、江戸時代以前からペットとして飼育されているなど、私達日本人にとって馴染み深いカメです。 色は基本的に茶色や黄土色に近い色をしていますが、中にはオレンジ色や赤色に近い色をしており個体によって様々です。

体長はオスよりもメスの方が大きくなり、よく言われている性別の見分け方として、イシガメを裏にひっくり返した時に、尻尾にある肛門の位置が甲羅よりも外側にあればオス、甲羅よりも内側で尻尾の根元にあればメスになります。

きれいな水を好み、野生では川やきれいな池に住んでいます。イシガメはカメの中でも比較的皮膚が弱く、水が汚れると皮膚病を起こすこともあります。

同じ日本のカメとして「クサガメ」も挙げられますが、あちらはイシガメと違って全体的に茶色っぽい色をしており、個体ごとによる大きな色の違いはありません。頭には黄色い模様があり、オスは成長につれて体が全体的に黒くなり、頭の黄色い模様が無くなります。

メスは特に変化することはなく、幼体をそのまま大きくしたような姿に成長します。成体はオスよりもメスの方が大きくなり、性別の見分け方として、肛門の位置を見て判断するという点はイシガメと共通していますが、きれいな水を好むイシガメとは違い、クサガメは汚れた水の中でも皮膚病にかかることなく生活できるため、そういった場所でも生活できるなど、住むところにも違いがあります。

しかし、現在に至るまでクサガメの化石が見つからず、クサガメが江戸時代以前から生息していたデータがないなどといった理由から、クサガメは外来種ではないかという説が出てきています。

消えていく命

凶悪な外来種

最初にイシガメは徐々に数を減らしていると述べましたが、何故イシガメは数を減らしているのでしょうか。一番の理由は外来種であるアカミミガメの存在です。

アカミミガメとは、アメリカに生息しているカメで、別名ミシシッピアカミミガメ、幼体のことをミドリガメとも言います。頭に赤い筋模様があるのが特徴で、日本においてはミドリガメという名前でよく知られています。恐らく、カメといったら最初にこのミドリガメ(アカミミガメ)を思い浮かべる方も多いと思います。それだけこのアカミミガメ(ミドリガメ)は日本でもよく知られた種類のカメになるのです。

では、このアカミミガメがイシガメにどのような影響を与えるのでしょうか。それはアカミミガメによって生態系が崩されているからです。アカミミガメもイシガメと同じように川や池の中で生活し、その中で餌を食べて、夜は寝て過ごしています。

アカミミガメが元々外来種ということは、アカミミガメが日本に入って来る前はイシガメやクサガメだけで川や池の中を過ごしていたということになります。そこにアカミミガメが入って来たことによって、イシガメやクサガメ達の生活に影響が出るようになったのです。

アカミミガメはカメの中でも気性が荒い性格で、イシガメやクサガメ達を元々住んでいた住処から追い出したり、餌を横取りしたりします。イシガメやクサガメは比較的大人しい性格で、アカミミガメに対して強気になれません。

また、アカミミガメは成長すると体長が15~20㎝位(オス)、20~30㎝位(メス)、個体によっては30㎝を超えるなど想像よりも大きくなるのに対して、イシガメは成長しても15㎝前後(オス)、20~25㎝(メス)とアカミミガメよりも小さく、体格的にも不利なため、住処や餌を奪われないようにするためにアカミミガメと争うのも難しく、本能的に勝てないと判断するのでしょう。また、アカミミガメはクサガメと同じように汚い水の中でも過ごすことができるため、元々きれいな水だった場所であっても、その水を汚したりします。

このようにアカミミガメがイシガメ達の住処や餌を奪ったり、きれいだった水を汚して水質悪化させたため、イシガメ達は住処を追い出されたり、餌が食べられずに餓死したり、汚れた水に適応できずに死んでしまったため、イシガメの数が減り、アカミミガメの数が増える結果になりました。

更なる凶悪な外来種

上記でアカミミガメがイシガメの住処や餌を奪ったりしたと述べましたが、イシガメにとって敵はアカミミガメだけではありません。アカミミガメと同じ外来種であるアライグマもイシガメにとって敵となります。アライグマはアカミミガメと同じアメリカに生息している動物で、1970年代に日本でアライグマを題材としたアニメが流行った際にペットとして輸入されました。

しかし、アライグマは非常に器用な動物で、脱走しやすい動物でもあり、また、可愛らしい姿とは裏腹に気性が荒い動物で、飼育の最中に脱走されて野生化したり、飼いきれなくなった飼い主が捨てたり逃がしたりしたものが野生化したりして全国的に数を増やしました。

アライグマは雑食性で、両生類、爬虫類、魚類、鳥類、哺乳類、昆虫類、甲殻類、果実など幅広いものを捕食します。水生生物の中では、特にザリガニ類を好み、具体的に捕食対象となる生物は、両生類の場合はサンショウウオやカエル、昆虫の場合はトンボ、バッタ、アリ、ハチ、などで、魚類の場合はブラックバス、コイ、ナマズ、ウナギ、パイク、マスなどを捕食します。爬虫類はあまり捕食しませんが、まれにヘビやトカゲなどを捕食することがあり、変わったところではウミガメの卵を餌とすることもあります。

海岸沿いに生息するアライグマは、二枚貝(カキなど)、エビ、カニ、ウニなどを食べ、時にはイノシシやシカの死骸を食べることもあります。また、人間の居住地近くでは、生ごみを利用するアライグマもいます。

何でも食べるため、もちろんイシガメもアライグマの捕食の対象となります。甲羅は硬いため、食べることはありませんが、頭や4本の足を食いちぎったりして捕食します。アライグマに捕食されたことにより、死亡したり、足を失ってその後の生活に影響が出るなど、住処や餌を横取りして間接的に命を脅かすアカミミガメとは違い、アライグマは直接的に命を奪おうとしてきます。

これによって、現在イシガメが生息している田舎や山奥など、人間の手が付けられていない場所でも数を減らす結果となっており、ますますイシガメの絶滅が危惧されています。

意外な所に危機がある

実は純血のイシガメはアカミミガメに住処や餌を奪われて餓死したり、アライグマに捕食されて死亡したりして数を減らしているだけではありません。他種のカメと交雑種を生むことによって、純血のイシガメが数を減らすことに繋がっているとも言われています。

序盤の方で簡単に紹介したクサガメは外来種であるという説が出ている状態ですが、仮に外来種であることが確定しても、このクサガメはアカミミガメと違い、大人しい性格で、アカミミガメのように生態系を壊すことが考えられにくく、また、現状アカミミガメの方が深刻な問題を引き起こしているという状態からクサガメに対する優先度は低く、きちんと飼育すれば人間に懐く種類のカメで、日本に生息しているカメの中では比較的飼育しやすいカメだと言われています。

イシガメにとってクサガメは比較的性格が近く、また、イシガメもクサガメも共に数を減らしており、その分同種同士で出会うことが少なくなったため、子孫を残すための手段としてイシガメはクサガメと、クサガメにとってはイシガメと交尾をすることによって子孫を残しています。

しかし、子孫を残すという目的は達成していても、交雑種が増えることにより、ますます純血のイシガメが数を減らすことに繋がっています。通常交雑種は繫殖能力を備えていない個体が多い傾向にあります。イシガメとクサガメの交雑種を「ウンキュウ」と言いますが、このウンキュウは交雑種でありながら繁殖能力を維持した個体が多く、純血のイシガメやクサガメ、またはウンキュウ同士で交尾をすることにより更に交雑種が増えていくことになります。

交雑種であるウンキュウが増えるということは、その分純血のイシガメやクサガメが数を減らすことになり、結果として、野生においてイシガメが数を減らす原因の1つであると言われています。実際にウンキュウは非常に珍しいカメだということで1匹あたりの値段が高く設定されて売られていたこともありましたが、現在は純血のイシガメの方が希少価値だということで、純血のイシガメの値段が高く設定されて売られており、ウンキュウはクサガメなどとさほど変わらない値段で売られています。

場合によっては、ウンキュウとクサガメの区別がつけられていない状態、ウンキュウとクサガメが混ざった状態で売られていることもあります。ただでさえ外来種によってイシガメが数を減らしている状態なのに、子孫を残すという目的のために違う種類のカメであるクサガメとの交雑種を残していては、イシガメが増えるどころかますますイシガメの数を減らす結果になってしまうのです。

ある意味最大の天敵

ここまでイシガメが数を減らしている理由として、「外来種であるアカミミガメがイシガメの住処や餌を横取りしているから」、「同じく外来種であるアライグマがイシガメを捕食しているから」、「イシガメがクサガメとの交雑種であるウンキュウを残していて純血のイシガメが増えないから」といった理由を述べました。

では、何故アカミミガメとアライグマが野生化するようになったのでしょうか、そもそもどのようにしてアカミミガメとアライグマが日本に入ってきたのでしょうか。アカミミガメが日本に本格的に輸入され始めたのは1960年代で、お祭りで「亀すくい」や街中の金魚屋などで売られていました。きれいな緑色の可愛らしい姿と1匹300~500円と手頃な価格によって、徐々に人気が高まりました。

1966年には、とある菓子メーカーが景品として毎週3,000人に無料配布し、更に人気が高まりました。1970~2000年代には大手のペットショップチェーンやホームセンターなどでも販売されるようになり、アカミミガメは日本のカメの中でも人気のある一種になりました。

しかし、アカミミガメが幼体の時は小さくて美しい緑色でも、3年ぐらいで体色が黒ずみ、体長は10cmを超えます。やがて小さな容器では飼えなくなり、さらに成長すると、体長は30cmに達する個体もいます。そのまま大事に飼えば、40年生きますが、寿命を待たずに途中で飼育を放棄して、野外へ放してしまう飼い主や、うっかり脱走されてしまう飼い主が増え、1970年頃から各地でアカミミガメの野生個体が確認されるようになりました。

また、1975年には、アカミミガメが持つサルモネラ菌による食中毒事例が報道され、誤解によって野外へ放すことが増えてきたと言われています。その後も野外へ放されたり、脱走した個体が野生化し、これらの個体が各地で繁殖して更に分布を拡大させていったと考えられています。

アライグマの場合、先ほど上記で述べたように1970年代に日本でアライグマを題材としたアニメが流行った際にペットとして輸入されました。しかし、可愛らしい姿に反して気性が荒く、また、手先が器用で脱走しやすい動物であるため、途中で飼育を放棄して、野外へ放してしまう飼い主や、脱走されてしまう飼い主が増え、放されたり脱走した個体が野生化し、日本各地に生息するようになったと言われています。

このように、流行に乗ったり、可愛らしさだけを見て事前に動物の情報を調べずに飼い始めた人が、勝手な都合で捨てたり放したりして現在のような状況を招いているのです。 人間の勝手な都合が、私達の国に住む動物達を苦しめ、命を奪っているのです。

もしも、アカミミガメやアライグマを逃がさずに最期まで飼い続けていれば、飼い始める前に動物について調べておけば、このような事態にはならなかったでしょう。こう考えた時、イシガメや他に数を減らしている動物からしたら、外来種を持ち込み、自然に放つ私達人間は、ある意味彼らにとって天敵であるのかもしれません。

これからの未来

未来を変える

人間の都合のいいように外来種を持ち込み、勝手な都合で自然の中に放されて数を増やした今、それによって数を減らしている命があります。もし、このままの状態にしておけば、更に数を減らし、最悪の場合、いずれは絶滅してしまう可能性があります。生き物を愛する人々にとって、それは最悪の未来。その未来が現実となってしまってからでは取り返しがつきません。だからこそ、今からでも出来ることをして最悪の未来を回避しなければなりません。

口だけでなく行動を

今述べた内容は、誰にだって口にすることができます。例え動物に興味がない人間でも、過去にアカミミガメやアライグマを捨てたことがある人間でも、口にすることができます。口でなら、何とでも言えるのです。心からその動物を救いたいなんて微塵も思っていません。

では、本当にイシガメを救うにはどうしたらよいのでしょうか。現在、イシガメを救うことに繋がる活動として、環境省がミドリガメ(アカミミガメ)に関する様々な規制を発表しました。これは2020年を目途に、アカミミガメを輸入禁止にし、同時にアカミミガメの飼育も規制するものです。

この規制は、日本固有種のイシガメを救うという理由だけでなく、他にも様々な理由がありますが、この規制によって将来的にペットショップでミドリガメ(アカミミガメ)を見ることが無くなるでしょう。他にも、今後の対策として、アカミミガメを野外への遺棄の防止、野生のアカミミガメの駆除等を総合的に実施していくため「アカミミガメ対策推進プロジェクト」を進めています。

ネット上では、「対応が遅い」などの批判意見が多いですが、これは「一度に規制を強化すると、捨てられるカメが増え、逆効果になる」といった理由で、「規制の導入が逆にカメを捨てることにつながらないよう飼い主の理解を得ながら進めていきたい」と環境省の北村副大臣は話していました。

実際に、「アカミミガメ(ミドリガメ)を『特定外来生物』に指定することを環境省が検討している」という報道があってから引き取りが急増しており、いかに無責任な飼い主が多いことが伺えます。 このように、現時点でもアカミミガメに関する具体的な対策は取られており、今になってようやく国が動き出したという形になっています。

しかし、国に任せてばかりではいけません。私達一人一人がイシガメの現状と外来種による影響を理解し、意識を持つことが必要です。そのようにして意識を持つことで、外来種の飼育をするかしないか、イシガメの為にどのようなことができるか、そういった考えを持つようになって、いずれはイシガメが日本の自然の中で生きていく昔のような日本を蘇らせたいです。