地球温暖化が日本の農業に与える影響

2017年08月25日

所属:山形大学

インターン生:U.Sさん

地球温暖化が日本の農業に与える影響の写真

近年、地球温暖化の影響により四季が変動しており、実りの季節と言われている秋が短くなってきているように感じます。お米をはじめとする多くの作物や果物のほとんどは秋に収穫されます。地球温暖化により農業がどのように変化し、さらに消費者にどのような影響をもたらすか考えていこうと思います。

農業の特色

  1. 生産不可能性
  2. 移動不可能性
  3. 外延性
  4. 不可滅性
  5. 地域性

の5つがあります。これは広義の意味であるため開拓や開墾によって農地を作り出すことができることなど、細かなところでは一部あてはまらないところもあります。

農地は製造業などの資本と比べてより固定的な面が大きいことが分かります。農業には広大な土地が必要ですが、その地域の気候でしか作れない農作物もあります。

日本の農業の現状

日本の食料自給率は約40%と先進国の中で最も低く、輸入農産物に支えられた食糧消費大国であり、世界最大の食糧輸入国であります。

アメリカやドイツをはじめとするヨーロッパは国が農業に対して手厚く保護されているため、農業従事者の負担が少ないとされています。

しかし、日本は国民や政府の農業に対する認識が諸外国に比べ甘く、十分に保護されていないと考えられます。そのため、農業従事者の自己負担は諸外国に比べ多いと考えられます。

また、土地利用率の減少や生産者の高齢化と後継者不足の問題も抱えています。農業は天候に左右されやすく、その年により豊作にも不作にもなり得るため安定した収入を得られるとは限りません。

作業の効率化を図るために農業機械を購入したり、人手不足により一人当たりの作業が長時間になるなど労働に見合った収入が得られないこともあると考えられます。

さらには、新規就農者に対する国からの補助金が少ないため、新規就農者は莫大な初期投資が必要になりますが、初年度から多くの収量を得られるかは保証できないため大きな賭けをしているとも考えられます。

園芸作物への影響

永年生作物である果樹は、年間を通じて環境の影響を受け、また昨期の移動が困難なために温暖化の影響を最も受けやすいとされています。

長野県でリンゴが生産できなくなる?

現在、長野県はリンゴの生産量が青森県に続く第二位と主要な県であるといえます。リンゴの生産は年平均気温が6~14℃の冷涼で年降水量が少なく、昼夜に温度差が大きい地域が適しています。

しかし、このまま地球温暖化が進むと冷涼な地域はなくなり、リンゴの適地が北上していき長野県でリンゴを生産することが難しくなると考えられます(図1)。

図1 出典:農研機構

東北地方で温州ミカンが生産できるようになる?

温州ミカンは和歌山県や愛媛県、静岡県といった比較的温暖な地域で生産されます。温州ミカンは年平均気温が15℃以上、冬の最低気温が氷点下5度以下にならないことが条件です。

さらにおいしいミカンを作るためには8~10月にかけて日照時間が多いことが重要です。現在では東北地方や関東地方では生産することは難しいですが、このまま温暖化が進めばこれらの地方でミカンの生産ができるようになるかもしれません(図2)。

図2 出典:農研機構

果樹では他にもリンゴやブドウの着色不良、温州ミカンの浮皮、ナシの発芽不良などが挙げられます。地球温暖化による園芸作物への影響は、生産地の北上だけでなく品質低下もあります。

野菜においては、施設栽培のなす、トマトの夏場の高温による着花・着果不良などの生育不良や着色不良などの発生、いちごの花芽分化の遅れなどが問題となっています。露地野菜でも収穫期の前進あるいは遅延、ほうれんそうなどの葉菜類の抽だい(茎が伸張・分枝する現象)の増加、レタスの結球不良などが指摘されています。

花きにおいても生育期間の高温に起因する開花期の前進や遅延、奇形花や退色などの品質低下の影響が出てきています。

お米への影響

作物の生産性は、気温、降水量、日射量などの気象要素と、大気中の二酸化炭素やオゾン濃度などの大気環境要素、土地の肥沃度、排水性などの土壌要素、人間による肥料投入量や管理の仕方、灌漑施設の有無などの人為的要素といった様々な要因に左右されます。

作物の花芽形成から開花受精にいたるまでの温度変化に対して敏感な時期である夏の高温は花粉の発達阻害や受精阻害を通じて作物の生産性を減少させます。

昼の温度が35℃、夜の温度が30℃程度を超えるとイネに高温障害が発生する恐れがあります。夜間の高温は、イネの呼吸作用を増加させます。

日中に生産したデンプンが呼吸で消費されてしまい穂や根に送りこむ量が少なくなり、登熟歩合(全籾数に対する成熟した籾の割合)の低下や、乳白米(白未熟粒)発生の原因となります。

さらに高温の影響は害虫であるカメムシを増やします。カメムシは米に黒い斑点を付け品質を低下させます。多く発生すると米検査で不合格となり市場に出せないため、農家に大きな影響を与えます。

家畜への影響

一日の食事のうちのどこかでお肉や乳製品を口にする人は多いと思います。このように畜産物は私たちの食生活に深く入り込んでいます。そのため、年間を通して畜産物を安定的に供給することは非常に大切なことです。

家畜は人間よりも暑さに弱いため、口を大きく開けて呼吸し、よだれを垂らし、体温は1~2℃も上がります。地球温暖化により暑さに耐えられなくなると、食べる量は減ってしまい体重の増加が滞り、乳量や産卵数も減少し、畜産物としての生産量は落ちてしまいます。

高温だけでなく、高湿度によっても家畜に大きな影響を与えると考えられています。気温と相対湿度を組み合わせた体感温度を厚熱負荷の指標として用い、増体量への影響を予測してみたところ、2060年代において九州の南部では相対湿度が現在と同じ場合でも増体量が21%低下し、相対湿度が5%上昇すると増体量は25%も低下すると言われています。

農業が地球温暖化に及ぼす影響

 これまでは地球温暖化が農業に及ぼす影響を述べてきましたが、逆に農業が地球温暖化に及ぼす影響もあります。牛や羊などの反芻動物のゲップは温室効果ガスの一つであるメタンを多く含んでいます。

反芻動物は胃を4つ持ち、食べたものの消化するのに時間をかけて何度も繰り返します。その時にメタンガスが発生しゲップとなって大気中に放出されます。大気中のメタンガスの20~30%が反芻動物のゲップによるものだと言われています。

最近では、ゲップを出しにくくする消化の良いエサの開発が進んでいるため、近い将来には反芻動物によるメタンガス排出量が減少するかもしれません。

消費者への影響

地球温暖化が農業に与える影響は農業従事者だけではありません。消費者にも大きな影響を与えると考えられます。様々な影響により日本の農業が収縮していくと私たち消費者は国産の農産物を食べることができなくなります。

日本の農産物はものによっては厳しい基準をクリアしたものだけがスーパーや八百屋などの店頭に並べられます。外国の農産物でも気にしない消費者もいるとは思いますが、アメリカのような大規模農業では効率よく大量に生産することも目的としているため、日本の農産物と比べ品質がやや劣ることも考えられます。

外国の農産物が主流になってしまうと、ただでさえ少ない農業従事者がさらに減ってしまうとも考えられます。外国からの輸入産物の方が国産のものより安く、たくさん売れてしまったら生産者は農産物を作っても売ることができず、利益を得られません。

それにより、翌年以降の農業を続けることが難しくなります。そうなると、国産の農産物を食べたくても食べられなくなる日がくるかもしれません。このように地球温暖化が日本の農業に及ぼす影響は生産者だけでなく消費者にもあるのです。

地球温暖化による良い影響

ここまで地球温暖化が農業に及ぼす悪い影響について述べてきましたが、温暖化により良い影響をもたらすこともあるのです。

温暖化により大気中の二酸化炭素が増加すれば植物の光合成が活発になり、人間を含めた動物(家畜も含む)にとっても増殖しやすい環境になります。

また、地球温暖化が進むと大気中の水蒸気の量が増えるため、一般的に雨が増えると言われています。降水量が増加すれば自然と農産物が成長し、農業従事者の負担が少し減るかもしれません。

他にも、ハウスやガラス室などの施設栽培において、室内を高温にすることができ、日本では作れなかった熱帯地域の農産物を作ることができるようになるかもしれません。

これからの日本の農業

これからは温暖化による被害の回避、軽減するための高温条件に適した新しい品種や技術の開発を進め、生産力の維持向上に努めていく必要があります。

例えば、なすでは高温に強く単為結果性(授粉なしで結実する性質)系統の育成が進んでおり、生産現場での実証が進められています。

施設栽培においても、気化潜熱利用培地冷却を付加したいちごの高設栽培装置、トマトの地中熱交換による部分冷却装置、細霧と遮光併用の低圧型細霧冷房システムなど、省エネ性が高く、できるだけ低コストで温室効果ガスの発生も少ない環境制御技術が開発されています。

果樹においても、ブドウの着色改善のための環状剥皮技術やミカンの浮皮防止のための植物ホルモン(ジベレリンとジャスモン酸)利用技術などが実用化されています。

モモなどの果樹では、冬季に低温に一定時間以上遭遇しないと発芽しない性質(低温要求性)があるために、低温遭遇時間の短くてすむ系統の育成や高温でも着色の良いブドウやリンゴの育成を進めています。

先にも述べたように農業が地球温暖化の一因ともなっているのでそこも改善できるように農業従事者は努めていく必要があります。

農業分野からの温室効果ガスの発生を抑制する方法や積極的に果樹園などの農地に貯留できる方法などの開発も行う計画で、日本が掲げる温室効果ガス発生の25%削減(1990年比)への貢献も大きな目標となっています。

最後に

私は大学で農業について学んでいくうちに農業の大切さ、大変さ、ありがたさを感じました。日本では食事の際に「いただきます」「ごちそうさまでした」と食べ物と作ってくれた人に感謝する習慣があります。

これは、調理してくれた人への感謝だけでなく、家畜などの生き物をいただくこと、農作物を作ってくれた生産者への感謝も含まれていると私は考えます。

「いただきます」「ごちそうさまでした」という言葉は義務ではなく、そういった感謝を込めて言う必要があると感じます。一人暮らしをしていると調理するのは自分自身であるため挨拶を忘れてしまうことがありますが、食べ物そのものと生産者の方への感謝を忘れずにこれからは挨拶を心がけようと思います。