マングローブの生態の理由

  • 更新日:2020/08/28

所属:埼玉大学

インターン生:O.Mさん

マングローブの生態の理由の写真

マングローブと聞いて、何が思い浮かぶでしょうか。テレビなどでマングローブの写真を見たことがあれば、根に特徴のある植物だということは想像できるかもしれませんが、それ以上は知らないと思います。日本ではあまり馴染みのないマングローブですが、年々数が減少しており、保護活動や植林活動が行われています。では、どんな原因でマングローブが危機に瀕しているのでしょうか。

マングローブとは

マングローブとは、「マングローブ」という種類の植物がいるわけではありません。熱帯や亜熱帯の潮間帯に生息する植物の総称を言います。潮間帯とは、満潮時の海岸線と、干潮時の海岸線の間のことです。水位が変動するので、満潮時は海水の中で、干潮時は陸地で生活します。普通の植物は海水では育つことができません。そのためマングローブには、海水で生きていくための特殊な機能があります。

またマングローブは世界で100種類以上あると言われています。日本では、メヒルギ、オヒルギ、ヤエヤマヒルギなどが生息していて、マングローブが生息する世界の北限が奄美大島です。オヒルギは沖縄県では10 mほどに育つのですが、海外では30 mくらいまで育つものもあります。場所や海水の条件などによって大きさや機能が少し変わってきます。

主な特徴

特徴的な根

マングローブといえばやはり根が特徴的です。その根にも主に4種類の異なった形の根があります。

①支柱根

たこ足状に四方に根が生えているのが支柱根です。支柱根では水を吸い込み木全体に運ぶ役割もありますが、体を支える役割もあります。さらに、本来根にはないはたらきとして、支柱根の水面から出ている部分では、光合成をしています。

②旬根(じゅんこん)

地中浅くから地面と平行にのびる根からさらに垂直に筍のようにのびる根があるのが旬根です。地面と垂直に伸びる根が呼吸根と呼ばれるもので、マングローブが生息する湿地では土壌中に酸素が少ないため、地表から酸素を得ています。

③膝根(しっこん)

膝を曲げたような形に似ていることから膝根といいます。膝根も還元状態の湿地では呼吸根の一種として働いています。

④板根

地表で板のような根がくねくねと曲がりながら伸びているものを板根といいます。熱帯雨林では腐食が速く進むため表土が浅く、根を深くまで伸ばすことができません。そのため、板根という形で自らを支えています。

胎生種子

すべてのマングローブではありませんが、ヤエヤマヒルギやメヒルギなどの種類では胎生種子を作って子孫を残します。胎生種子とは、樹木についたままの状態で種子が発芽するものです。通常の植物は、果実が成熟すると母樹から離脱し、風などによって運搬され発芽します。

胎生種子は、種子が発芽しても樹木についたまま約一年間母樹から栄養をもらって成長し、成熟後、母樹から離脱します。なぜこのようなことが必要かというと、マングローブの生息域は、潮間帯であるため、通常の種子を作っても海に流され発芽力がなくなったり、海中で沈んで発芽しても酸素が少ないために成長することができなかったりするためです。

胎生種子は成長すると細長いインゲンのような形になります。この形になれば、落下したときに土壌に突き刺さるか、水によって運搬され、根などにぶつかって定着することができます。

海水で生きられる理由

先ほど述べたように、マングローブは海水の中でも生きることができます。それは普通の植物にはない機能を持っているからです。そもそも植物が根から水や養分を取り入れるには、根の細胞の浸透圧を土壌水より高くしなければなりません。

普通の植物は海水よりも浸透圧を高くすることができないため、普通の植物は海水では生きることができません。したがって、マングローブは浸透圧を上げるためにポリオール化合物やアミノ酸などの有機物を体内に蓄積して海水を取り込みます。

そして、取り込んだ塩分は、根でろ過したり、葉の塩類腺から蒸散させたり、特定の葉に蓄積させ一定量以上になったら落葉させ、取り除きます。このようにして、必要のない塩分を排泄し、塩分のある環境で生息しています。

嫌気条件で生きられる理由

マングローブは泥中に根があるため嫌気性のもとで生息しています。そこで、根を地表に出し、呼吸をして補っていると言いましたが、具体的にどのように酸素を取り込んでいるのでしょうか。根が地表から出ていると、大気や呼吸根内空隙、根内空隙の酸素の分圧の勾配にしたがって、大気から根に酸素が入ってきます。

また、満潮時は根が海水に沈みます。そのとき根内の二酸化炭素が水に溶解するため、根内が減圧し、干潮時に根が露出すると、酸素が根に入ってくるのです。また、数種マングローブの呼吸根では日中に光合成が行われていることが実証されました。

これは、泥中の根の呼吸で発生した二酸化炭素が呼吸根で同化され、その時に発生する酸素が再び根で使われているということです。このように呼吸根における光合成により、呼吸根が海中にあるときでも日光があれば泥中の根に酸素を供給できるのです。

マングローブの役割

さまざまな特殊な機能を持ったマングローブはどんな役割を果たしているのでしょうか。

人間に対する役割

マングローブは海水の中に生息しているため、普通の木に比べ、腐りにくい丈夫な木材として知られています。したがって、家や船の材料として熱帯地域ではよく用いられています。また、火力の強い炭になるため、電気やガスを利用できない地域の人々にとっては、欠かすことのできない燃料です。

さらに、波による浸食から海岸を守る防波堤の役割も果たしています。バングラディシュでは毎年のようにサイクロンに伴う影響が報道されるようになりましたが、それはマングローブの減少が理由にあげられます。これだけでなく、マングローブにはたくさんの魚や生物が生息しているので、食料の確保にも重要な役割を果たしているのです。

生態系に対する役割

マングローブの周りの水域は、マングローブが落とした葉などによって栄養が豊富な水域ができており、プランクトンを食べる魚、その魚を餌とする生物、さまざまな生物が生息しています。また栄養場というだけでなく、陸上生物の産卵場や住処としても重要になっており、マングローブ近くの水域には大きな生態系が存在し、なくてはならない存在になっています。

さらにマングローブは、バイオマスを多く蓄積しています。特に地下部に多く存在し、地球上の炭素循環においてマングローブは重要とされています。

個体数の減少

今まで述べたような機能や役割があるにも関わらず、マングローブの数は年々大幅に減少しています。

エビの養殖地に

一つ目の理由として、エビの養殖地になっていることがあげられます。特にタイで盛んにエビの養殖池の乱開発が行われています。もともとエビが捕獲できていたのですが、人口の増加やエビ需要の増加が原因で、エビの乱獲が行われ、数が減少したことにより、養殖池が作られるようになりました。

マングローブ林の土壌は先ほど説明したように、栄養分が豊富なため、養殖池にした初めの数年は餌を与えずにも育つため、養殖する側としてはいいのですが、数年たつと栄養分がなくなり、餌を与えなくてはいけません。そうなると、またマングローブ林を伐採して新たな土地を作ります。この負のサイクルによってどんどんマングローブが伐採されています。

実は、日本はエビ大量消費国であるため、タイのエビがたくさん輸入されていて、この負のサイクルに大きく影響しています。エビはもちろんおいしいですし、食べないようにするというのは難しいと思いますが、影響があるという認識があるだけで、少しは何かが変わってくると思います。

薪木材として

先ほども述べたように、マングローブはさまざまな材料として用いられています。その中でも多く利用されているのが、薪や炭としてです。昔は、周辺に住んでいる人たちが自給自足の生活で使っているだけでいたため、それほど影響はありませんでしたが、人口の増加や、社会が発展したために、市場に売り出されるようになりました。そして乱獲が行われ、マングローブが激減しました。

保護活動・植林活動

マングローブの減少に伴い保護活動や植林活動が行われています。しかし、マングローブの生態がまだまだ知られていないことにより、問題もあります。例えば、植林をするといってもただ適当にたくさん植えればいいというものではなく、適切な間隔で植えなければなりません。

さらに植林した後も経過を観察する必要があり、場合によっては間引きをしなくてはなりません。このように、乱獲して少なくなったらまた植えればいいという安易な考えはよくなく、一回失ってしまったものを取り戻すのにはたくさんの時間と手間が必要になるのです。

最後に

私が今回この題材を選んだ理由は、さまざまな特殊な機能があるすばらしいマングローブをもっと知ってほしいからです。例えば耐塩性の機能は他の植物にも応用できるかもしれません。そして、このマングローブの数がこれ以上減少しないように、保護活動が活発になればいいと思います。

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エコモ博士
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