原発ゼロは可能なのか ~日本のエネルギー事情を考える~

2015年09月11日

所属:東京大学

インターン生:R.Sさん

原発ゼロは可能なのか ~日本のエネルギー事情を考える~の写真

東日本大震災に伴う福島原子力発電所事故を受けて、国内では原発反対の動きが強くなっています。しばしば感情的な議論も耳にするように感じられますが、はたして原発を全面廃止したところで日本のエネルギー調達に問題はないのでしょうか。原発に代わる代替エネルギーについて考えます。

現状

低いエネルギー自給率

2012年時点で日本の1次エネルギー(ここでは石炭・石油・天然ガス・太陽光などの再生可能エネルギー・原子力・水力)自給率は、6%であり世界の先進国の中でも最低レベルにあります。特に、原発事故後の国内の原発停止を受けて火力発電が中心となった現在は、電力供給を海外の化石燃料に頼っているため、自給率はますます低下しています

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化石燃料依存によるさまざまな問題点

原子力に代わって輸入化石燃料を用いた火力発電に依存することになった結果、貿易収支の悪化や電気代上昇、CO2排出量増加など様々な問題が発生しています。これらの問題は、家庭生活や産業活動、地球環境に直結するものであり、克服が急務です。

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原発に代わる代替エネルギーとその問題点

再生可能エネルギー

太陽光発電

太陽電池によって、太陽光を電気に直接変換するシステム。

風力発電

風の運動エネルギーによって風車を回し、その際に生じる動力を利用して発電するもの。

問題点

これらの再生可能エネルギーは、天候によって発電量が変化してしまいます。太陽光発電の場合は、日が出ていないと発電できないため、夜間や悪天候時の需要に対応できません。風力発電の場合、は風況がよくなければ発電できないため、出力調整が難しいのです。このように天候によって十分な電力供給ができない事態に備えて、火力発電など出力調整の可能なバックアップ電源を用意しておく必要があります。 また、再生可能エネルギーは発電コストが高く、固定買取制度※による家庭への負担も大きくなってしまいます。

※固定買取制度:再生可能エネルギーで発電した電力を電力会社が一定価格で買い取ることを国が定め、その費用を電気利用者から賦課金として集める制度。

高効率石炭火力による発電

火力発電とは、石油、石炭、天然ガスなどの燃料を燃やすことで得た熱エネルギーを用いて発電を行うものですが、日本では、高効率石炭火力の導入が進められています。安定供給が可能で比較的単価の安い石炭について、日本は世界最高水準の熱効率技術で発電を行っています。

問題点

石炭火力は安定性や経済性に優れる反面、石油や天然ガスよりも温室効果ガスの排出量が多い。

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3.まとめ

原発停止後の日本は、火力発電に電力供給の多くを依存していますが、環境面や経済面に課題を残しています。火力発電に代わる再生可能エネルギーにも、コストや供給面に課題が残ります。原子力発電であろうと、火力発電や太陽光発電であろうと、いづれにしても解決困難な問題を抱える以上、感情論で原発ゼロを叫ぶのではなく、日本や世界のエネルギー事情を吟味して、より環境、社会にやさしいエネルギー供給の道を探していく必要があるでしょう。