3部料金制

3部料金制とは

基本料金と電力量料金から成る2部料金制において、電力量料金(以下、「電気料金」とします)を決める電力量料金単価が使用電力量に応じて3段階に設定されている制度のことです。より簡潔に定義すると、使用電力量に応じて、電気料金の単価が3段階に逓増して徴収される制度のことを言います。

使用電力量が少ない方から順に、第1段階料金・第2段階料金・第3段階料金という単価がそれぞれ設定されています。そのため、3部料金制は、3段階料金制度とも言われます。

背景

電気料金の生活必需的性格、高福祉社会の実現、省エネルギーの推進といった観点が3段階料金制の背景にあります。特に、省エネルギーの推進という最大の課題が生まれる大きなきっかけとなったのが、1973年の第一次石油危機に伴う原油価格の高騰です。これらの背景から、昭和49年(1974年)3月の電気事業審議会料金制度部会答申を受けて、使用量に応じて料金単価が上昇する3段階料金制が同年6月に採用されました。

具体的な料金制度

①第1段階料金

趣旨

憲法25条の規定に基づいて国が保障すべき「健康で文化的な最低限度の生活水準」(ナショナルミニマムと呼びます)をすべての国民が営めるように、低廉な料金が設定されています。

対象

120kWhまで(東京電力エナジーパートナー従量電灯B・Cプラン、2017年10月現在)

②第2段階料金

趣旨

一般家庭の使用量を踏まえた、ほぼ平均費用に対する料金を指します。日本の一般家庭が消費する電力量を予測して設定した容量に対し、平均的な電気料金単価が設定されています。

対象

120kWhから300kWhまで(同上)

③第3段階料金

趣旨

限界費用の上昇傾向を示した、やや割高な料金を指します。電力の消費量を抑え、省エネを推進する目的で設定されました。

対象

300kWh以上の超過分(同上)

その他の基本的な電気料金の種類との比較

冒頭の「3部料金制とは」で述べたように、2部料金制と3部料金制は対立する制度ではありません。2部料金制の一形態として、電力量料金を3段階に分けて設定するという意味での3部料金制という制度があります。

2部料金制と比較されうるその他の料金制度(定額料金制、最低料金制)は、「2部料金制」の項目をご覧ください。

3部料金制のメリット

  1. 使用電力量が少ない場合、廉価な段階の料金の許容量に収まると考えられるので、電気代は定額料金制の場合よりも割安になります。特に、使用電力量の少ない一人暮らし家庭などは電気代を節約することができると言えます。
  2. 料金が使用電力量によらず一定である定額料金制と比較すると、3部料金制はより柔軟な料金プランが準備されています。自分のライフスタイルに適した料金プランで契約することにより、電気代を節約することができます。例えば、家事などで朝の使用電力量が多い人は朝得プランを用いると効率的です。逆に、夜の活動が多い人は夜型プランの方がお得になります。

3部料金制のデメリット

使用電力量に応じて電気料金の単価が逓増するので、たくさん電気を使うほど電気代がかさんで不利になってしまいます。特に、使用電力量の多い家庭やオール電化の家庭は不利となります。

どれだけ電気を使っても一定の電気料金しか徴収されない定額料金制と比較すると、このデメリットは明らかです。というのも、経済学上、一般的にモノやサービスは大量に購入するほど単価が安くなりますが、電気の場合は逆に使えば使うほど料金が高くなっています。

省エネの推進によって限りあるエネルギーを守っていくという政策的要請から、電力に関しては、一見経済学の原理に逆行するように見える料金制度が設計されているのです。

電力自由化との関連

2016年4月に電力小売が全面自由化され、従来の慣行であった3部料金制以外の料金プランも市場に登場するようになりました。つまり、新電力においては3部料金制に縛られず、市場競争に基づき自由な料金設定が可能となります。

しかし、2020年に予定されている料金面における電力全面自由化(規制料金の撤廃など)までの移行期間において、経済的弱者である小規模な需要家を保護する目的で、3部料金制は規制料金として残存しています。

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