オーストラリアの電力自由化

電力自由化とは

これまで政府が決めた一般電気事業者や電力会社の地域独占によって電力提供がなされていましたが、国の規制を緩和することで、既存の電力会社以外の電力業界への参入を促進し、企業や個人消費者の電力の選択肢を増やすことを言います。また「電力市場の自由化」とも呼ばれています。

オーストラリア電力自由化の背景

電力自由化以前は、オーストラリアの6つの州内で各州庁、各州保有の公社、あるいは厳しい規制下にある民間独占企業がそれぞれ 電気の発電から小売までを管理していました。

しかし、政府は電気代の価格の低下と市場の活発化と、電力の安定供給などを目的にエネルギー政策を行い始めました。そして1990年頃から政府がエネルギー業界全体に対しての自由化の動きを見せ始め、1998年には全面的にエネルギー面での電力自由化が完了したと発表されています。

電力自由化への取り組み

政府の産業委員会が 1991 年に発行 したレポート 「Energy Generation and Distribution」に後押しされる形で、まずは豪州最大の都市シドニーを有する NSW 州、及びメルボルンを有するビクトリア州から開始されました。

そして、1998年に開始した電力自由化に伴い、 全国電力市場運営会社(National Electricity Market Management Company: NEMMCO)による全国電力市場(National Electricity Market: NEM) の運営が始まりました。

NEMMCOは、全国電力市場価格の算定、市場参加者間の清算、需給バランスの維持、各種指標の公表など、全国電力市場の 管理及び運営を担っています。2017年7月現在、NEM には、ニューサウスウェールズ州、ビクトリア州、クイーンズランド州、南オーストラリア州、オーストラリア首都特別区、さらにタスマニア州など6つの州が参加しています。

NEMは各州の卸売市場を統合する形で発足した取引所であり、発電事業者及び小売事業者が積極的に参加し売買を行えるよう「強制プール方式」を採用しています。このシステムは電気を売りたい発電事業者は、前日の12 時 30 分までに卸電力市場に入札することが求められ、翌日の想定需要に 応じて、入札価格の安い順に蹴り落とされ決定する仕組みです。

このとき、最後に落札した電源の入札価格が卸電力市場価格 (電力プール価格)となります。電力小売事業は完全自由化されているため、多様な電力小売事業者が存在しており、消費者は電力調達先を複数の事業者から選定することが可能となっています。

オーストラリアにおける電力事情

オーストラリアは、もともと州が電気の発電から配電と小売までの全てを管理していました。しかし、エネルギー会社の生産性の向上や石炭燃料(二酸化炭素)の減少、たくさんの電気を作らせるという目的と電力価格を下げることの2つを目的として、政府はエネルギー政策を行いました。

オーストラリアは世界4位の石炭生産量があり(2012年末時点)、2008年のエネルギー消費のうち77%は石炭が占めていました。そのため主力は石炭火力発電を従来活用していて、国内資源が豊富であるため電力供給は安定していました。しかし石炭への依存や地球温暖化ともあり、政府が批判を浴びる結果となりました。

オーストラリアはRET 制度により、ハワード内閣が、2010年までに再生可能エネルギーによる発電を 2%に増やすことを目指し、2001 年にスタートしました。また、その後の労働党政権に替わってからは、2020 年までに国内電力の 20%以上(または 4 万 5,000GWh)を再生可能エネルギー源で賄うべく、2009 年に同政策を拡大しました。

再生可能エネルギーへの転換の影響

オーストラリア政府はクリーンエネルギーの供給量が増えれば自然と値段は下がると考え、人口増加に伴った多額な電力設備投資を行いました。しかしこれが原因で、オーストラリアの電気代は高額となり、豪州イノベーション・産業・科学・研究省 (Department of Innovation, Industry, Science and Research) によると2008年から2014年までの間に一般的な世帯の平均電気代は80%以上増加していると2016年に発表されています。

国民はこの急激な電気料金の増加にはもちろん不満を抱いていますが、自分たちの意思での選択の結果のため仕方なく値段の高騰しているクリーンエネルギーを使わざるをえなくなってしまったのです。ローウィー国際政策研究所(Lowry Institute) が行った世論調査によると2017年3月時点で81%の国民が石炭の使用をやめ高額な方の風力や太陽光発電などの再生可能エネルギーへの移行を主張しています。

電力自由化を活用し、国民の多くは電力会社を高い頻度で変え、なるべく安いプランに毎年のように乗り換えているそうです。オーストラリアエネルギー消費者協会(Energy Consumers Australia)が2016年12月に行った消費者調査(Consumer Sentiment Survey)によると過去3年間のうちにビクトリア州の27%が、またニューサウスウェールズ州の21%が電力会社を変えたと言われています。

電力を選ぶ際、多くの家庭は電力源(ソース)が何かに重点を置き、提供されるエネルギーのうち何%が再生可能エネルギーなのかなども選べられるようになっています。