総括原価方式

総括原価方式とは

ガス料金や水道料金、電気料金などの公共料金の金額を決める際に、消費したコストや事業を運営しておくための費用を利益が得られるように算出するための計算方法です。

背景

1931年度の電気事業法が改正され、料金認可制が導入されました。そして1933年度では総括原価方式が料金認可の基準に定められます。1937年度には総括原価方式による新料金体制に移行しますが、以降の総括原価方式に関する大きな変更は特にありませんでした。しかし2016年4月からの全面自由化によって今後、地域独占供給や総括原価方式による料金認可制が廃止される可能性があります。

具体的な内容とメリット

総括原価方式とは原価を基準とし、さらにその上に報酬率を上乗せさせることにより料金を決めるやり方です。つまり、最初から総収入と総括原価が釣り合うように計算しているので赤字になる心配が少なく、長期的な経営計画や設備投資計画を立てやすいことがメリットとして挙げられます。

デメリット

上記で説明した報酬率とは、固定資産(施設)に対する計算のことを示します。簡単に説明すると施設や設備を数多く所有している、さらに価値が高ければ高いほど利益が上乗せされます。これにより余分な施設投資が増え、その資産から別の施設や設備が生まれてしまい悪循環が発生します。そしてそれらは全て、電気料金として利用者が支払っているのが現状です。よって、総括原価方式のデメリットとは設備投資にかかるコストをすべてが総括原価として料金に反映することにあります。

また、電気自由化に係る制度設計の下では、総括原価方式が市場競争を妨げる要因となる可能性があります。これはつまり、総括原価方式は経済メリットを担保する内容となっているので、経営努力で他社との競争に勝ち抜くインセンティブを低下させることに繋がるからです。

価格上限方式との違い

類似方式として価格上限方式があります。価格上限方式は特定のサービスに対して政府が上限となる価格を定め各社で値段の調整を行います。総括原価方式と違い競争相手が少ない状態である場合、利益が過大になる可能性があるので将来的な利益の安定性という点では総括原価方式が優れています。英語では、プライスキャップ方式(Price-cap regulation)と言います。

比較基準方式との違い

比較基準方式も類似方式にあたります。比較基準方式とは他社との費用を比較し、基準となる標準コストを定めそこから料金を定める方式です。総括原価方式と違い費用削減努力がそのまま利益に反映されるため効率化を促進することができます。英語で、ヤードスティック方式(Yardstick regulation)と言います。

将来的な展開

総括原価方式は公共性の高い企業が経営不振や倒産になるケースを避け、安定した利益を出せるため採用されていましたが、電力自由化が開始されるとその保障がなくなります。理由は電力業界の活性化が目的なのに対し、総括原価方式は競争が進まなくなるからです。

しかし、料金規制をいきなり全て撤廃してしまうと消費者に過大な料金を負わせる可能性があります。よって一定期間は料金規制が続きますが、将来的には規制が撤廃される可能性があります。