エネルギーマネジメント関連市場、2025年度に約2700億円の予想、2016年度の2倍以上に

2017年08月16日

一般社団法人エネルギー情報センター

新電力ネット運営事務局

エネルギーマネジメント関連市場、2025年度に約2700億円の予想、2016年度の2倍以上にの写真

8月14日、富士経済は家庭分野と産業・業務分野におけるエネルギーマネジメント関連の国内市場を調査し、その結果を「2017 エネルギーマネジメントシステム関連市場実態総調査」にまとめたと発表しました。2025年度には約2700億円の市場となり、2016年度の2倍以上の規模となる予測となります。

富士経済、エネルギーマネジメント関連の国内市場をまとめた調査結果を発表

日本では、1970年代のオイルショック、そして1997年に制定された地球温暖化防止のための京都議定書を契機に、省エネ社会の実現に向けた活動が積み重ねられてきました。

また、2011年の東日本大震災により、電力・エネルギーに関する社会的関心が高まり、行政や産業界だけではなく、一般市民を含めた多様な活動が進められています。近年の省エネに関する活動・政策は、従来の機器の効率を向上させるといった方法とは一線を画し、社会・経済の構造や生活の在り方を変える可能性を持ちます。

産業・業務分野の省エネにおいては、エネルギーマネジメントがIoT/ビッグデータソリューションと連携することにより、エネルギー管理用途にとどまらない活用が期待されています。また、家庭分野においてはット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)の普及により創エネ・蓄エネ設備の標準化が進んでいます。そのため、各家庭が電気を生み出し、マネジメントしていくことが一般的になっていく可能性があります。

このように省エネの在り方が変化していく中、富士経済は家庭分野と産業・業務分野におけるエネルギーマネジメント関連の国内市場を調査し、その結果を「2017 エネルギーマネジメントシステム関連市場実態総調査」にまとめたと発表しました。

エネルギーマネジメント関連市場、2025年度には約2700億円、2016年度の2倍以上の予測

「2017 エネルギーマネジメントシステム関連市場実態総調査」では、機器・デバイス7品目、システム6品目、サービス3品目、発電設備・システム3品目、通信技術5品目、収集・分析・処理技術等5品目の市場を調査・分析し、家庭、産業・業務の各需要分野における市場の実態と方向性を明らかにしています(図1)。

調査方法は、富士経済専門調査員による参入企業および関連企業・団体などへのヒアリングおよび関連文献調査、社内データベースを併用しており、調査期間は2017年4月~6月です。

調査対象

図1 調査対象 出典:富士経済

家庭分野は2025年度で約1500億円の予想、ZEHの普及やエネルギーの自給自足ニーズで好調

家庭分野では、電力買取価格の下落、定置用蓄電システムの価格低下やZEH支援事業の推進などにより、太陽光発電エネルギーの自家消費ニーズが増加すると予測されています。また、創エネ・蓄エネのコントローラーとしてHEMSの需要が増加するとみられます。

今後は、電力小売り事業者などエネルギー関連事業者の参入により新しい活用方法の積極的な提案が行われ、市場は堅調に拡大していくことが見込まれます。そのため、2025年の市場は1544億円となり、2016年度の465億円から3倍以上になる結果となりました。

産業・業務分野は2025年度で約1200億円の予想、IoT/ビッグデータソリューションとの連携が進み拡大

産業・業務分野では、デマンド監視などのエネルギーコスト削減対策としてのEMS(エネルギーマネジメントシステム)の導入は一巡しています。そのため、リプレース需要が現状では中心となっています。

今後は、通信環境の整備が進み、IoT/ビッグデータソリューションとの連携が積極的に行われることが期待されます。そうなることで、設備監視や予防保全、空調・照明など空間快適制御など、多様なセンサーを活用したEMSの高付加価値化が進むと見込まれています。

市場としては、2025年には1175億円となり、2016年度の819億円から約1.4倍になる結果となりました。家庭用と合わせると、全体で2025年度に約2700億円の市場となり、2016年度の2倍以上の規模となります(図2)。

需要分野別エネルギーマネジメント関連市場

図2 需要分野別エネルギーマネジメント関連市場 出典:富士経済

注目市場1、HEMSは2025年度に約120億円の市場

HEMS市場は、HEMSの構成に必須なゲートウェイ、電力計測を行うための機器、データの閲覧や住宅設備の操作を行うための専用モニターが対象となっています。2016年は補助金が出るZEH支援事業において、HEMSの導入が支援の必須条件となっていたことから、大手ハウスメーカーだけではなく、中堅ビルダーや工務店での採用の増加が予想されました。

しかし、申請が通らなかった際の仕様変更の負担を懸念があり、交付件数自体は前年とほぼ変わらず、市場は大幅な拡大には至りませんでした。しかし、2017年以降は新築戸建住宅での採用が増加するほか、太陽光発電システムの自家消費ニーズの高まりが想定されます。そのため、住宅における蓄電池の導入が増加し、住宅内のエネルギーを最適化するために必要となるHEMSの導入が促進されると見られています。

また、HEMSと同様のシステム分野においてREMSがあり、こちらも市場が伸びていくと期待されています。REMSは、店舗の空調・照明設備のエネルギー使用状況を管理、最適化する業務分野向けのシステムです。エネルギー管理だけではなく、店舗設備の運転状況や温度を遠隔監視、自動制御することで省人化・省力化に繋がります。また、設備の予防保全などにも活用できることから、省エネにとどまらない導入メリットがあり、市場は堅調に拡大していくと見られています。

FEMSは、製造現場におけるエネルギー管理に特化したシステムであり、この分野市場が伸びていくと期待されています。ただ、現状のところ、FEMSのエネルギー管理や省エネ対策としてのニーズは一巡しています。しかし近年、ビッグデータの活用による生産効率改善や設備監視、予防保全など業務効率化・環境改善を目的としたシステムソリューションに対するニーズが高まっています。

そのため、2017年以降は従来どおりリプレース需要が中心となるものの、業務効率化・環境改善などの活用を組み合わせたソリューションのニーズが高まることから1システム当たりの単価が上昇するとみられ、市場は堅調に拡大していくと予想されています(図3)。

エネルギーマネジメントシステムの市場規模

図3 エネルギーマネジメントシステムの市場規模 出典:富士経済

注目市場2、EMS向けセンサーデバイスは2025年度に約50億円の市場

EMS向けセンサーデバイスは、EMSで採用される電流センサー、温度センサー、室温度センサー、人感センサーが対象となります。センサーはエネルギーの利用状況や施設の環境情報など、見える化を行うためのデバイスとして広く採用されています。

今後は複数のセンサーや認識技術による計測データを組み合わせることで、より細やかな設備制御を実現させる高付加価値なEMSへのニーズが高まり、市場も大きくなると想定されています(図4)。また、センサーは省エネだけではなく、計測・検知情報を別の用途に活用する動きもみられます。

この続きを読むには会員登録(無料)が必要です。

無料会員になると閲覧することができる情報はこちらです
電力の補助金

補助金情報

再エネや省エネ、蓄電池に関する補助金情報を一覧できます

電力料金プラン

料金プラン(Excel含)

全国各地の料金プラン情報をExcelにてダウンロードできます

電力入札

入札情報

官公庁などが調達・売却する電力の入札情報を一覧できます

電力コラム

電力コラム

電力に関するコラムをすべて閲覧することができます

電力プレスリリース

プレスリリース掲載

電力・エネルギーに関するプレスリリースを掲載できます

電力資格

資格取得の支援

電験3種などの資格取得に関する経済支援制度を設けています

はてなブックマーク

執筆者情報

一般社団法人エネルギー情報センターの写真

一般社団法人エネルギー情報センター

新電力ネット運営事務局

EICは、①エネルギーに関する正しい情報を客観的にわかりやすく広くつたえること②ICTとエネルギーを融合させた新たなビジネスを創造すること、に関わる活動を通じて、安定したエネルギーの供給の一助になることを目的として設立された新電力ネットの運営団体。

企業・団体名 一般社団法人エネルギー情報センター
所在地 東京都新宿区新宿2丁目9−22 多摩川新宿ビル3F
電話番号 03-6411-0859
会社HP http://eic-jp.org/
サービス・メディア等 https://www.facebook.com/eicjp
https://twitter.com/EICNET

関連する記事はこちら

4月からの容量拠出金による影響は?容量市場の仕組みと創設背景についての写真

一般社団法人エネルギー情報センター

2024年02月22日

新電力ネット運営事務局

4月からの容量拠出金による影響は?容量市場の仕組みと創設背景について

2024年度に供給可能な状態にできる電源を確保することを目的に、2020年7月、初めての容量市場でのオークションを実施。それに伴い4月から容量拠出金制度がスタートします。今回は、容量市場の仕組みや消費者への影響についてご紹介します。

物流業界の脱炭素化と中堅・中小企業のGX事例の写真

一般社団法人エネルギー情報センター

2023年12月29日

新電力ネット運営事務局

物流業界の脱炭素化と中堅・中小企業のGX事例

持続可能な未来に向けて物流業界の脱炭素化は急務です。その中でも大手物流企業のGX事例は注目すべきアプローチを提供しています。今回は、脱炭素化の必要性と大手物流企業が果敢に進めるGX事例に焦点を当て、カーボンニュートラル実現へのヒントを紹介します。今回は中堅・中小企業のGX事例です。

スコープ3の開示義務化が決定、脱炭素企業がとるべき対応とはの写真

一般社団法人エネルギー情報センター

2023年11月02日

新電力ネット運営事務局

スコープ3の開示義務化が決定、脱炭素企業がとるべき対応とは

2023年6月にISSBはスコープ3の開示義務化を確定。これを受けて、日本や海外ではどのような対応を取っていくのか注目されています。最新の動向についてまとめました。

電力業界の最新動向について/新電力の撤退等はピークアウト、3割が値上げへの写真

一般社団法人エネルギー情報センター

2023年09月12日

新電力ネット運営事務局

電力業界の最新動向について/新電力の撤退等はピークアウト、3割が値上げへ

厳しい状況が続いた電力業界ですが、2023年に入り、託送料金引き上げと規制料金改定により、大手電力7社が値上げを実施。政府は電気・ガス価格の急激な上昇を軽減するための措置を実施しています。値上げを実施する新電力企業も3割ほどあり、契約停止、撤退・倒産等もピークアウトしています。

“脱炭素先行地域”に62地域が選定。地域のエネルギーマネジメント推進や課題解決のキーワードになるかの写真

一般社団法人エネルギー情報センター

2023年08月31日

新電力ネット運営事務局

“脱炭素先行地域”に62地域が選定。地域のエネルギーマネジメント推進や課題解決のキーワードになるか

2030年度目標のCO2排出量2013年度比46%減を実現するために、地方から脱炭素化の動きを加速させています。今回は、事例を交えて脱炭素先行地域の取り組みについて紹介をします。

 5日間でわかる 系統用蓄電池ビジネス