108万円の省エネ診断に100万円の補助、CO2排出が50トン以上3000トン未満の事業者が対象
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2017年04月11日
一般社団法人エネルギー情報センター

昨今、国際的にもCO2排出抑制に対する意識が高まっており、経済的かつ効果的な対策の重要性が増しています。そうした中、事業者による省エネの取り組みを促進するため、省エネ診断に係る費用を補助する制度が実施されます。5月から受付開始ですが、4月中の予約で上限まで埋まる可能性の高い補助金となっています。
省エネ診断や省エネ設備を導入する際に補助
昨今、パリ協定など国際社会から二酸化炭素削減への要請が高まっていることもあり、国としても対策をする必要性が高まっています。そのような環境のため、昨年から引き続き、平成29年度も環境省の「CO2削減ポテンシャル診断推進事業」が実施されることとなりました(図1)。この補助金の目的は、設備機器の効率的な運用や低炭素機器の普及を促進し、環境保全に資することです。この補助金により、企業等が省エネ診断を実施し、省エネ設備を導入する際の費用負担が軽減することが見込まれます。
図1 CO2削減ポテンシャル診断推進事業の概要 出典:環境省
108万円の省エネ診断に100万円の補助
補助金の内容としては、診断機関が派遣され、設備の導入・運用状況、エネルギー消費状況を確認し、現場に合った具体的なCO2削減対策が提案されるものです。対象は、直近年度のCO2の年間排出量が50トン以上3000トン未満の事業所であり、交付額は上限100万円です(表1)。消費税も含め、108万の費用が必要となる省エネ診断であっても、この補助金を利用することで消費税分の8万円の負担ですむこととなります。
年間CO2排出量 | 募集コース | 上限額(税別) | 公募期間 |
---|---|---|---|
50t以上3,000t未満 | 計測あり | 100万円 | 平成29年5月1日~5月31日の17時必着 |
計測なし | 50万円 |
表1 出典:低炭素エネルギー技術事業組合資料より作成
平成28年度の採択数は606件
平成28年度の採択実績では、606件の応募があり、その内557件が採択されました(表2)。採択率は9割以上と非常に高いですが、応募する事業者も多く予算額に達するのも早いです。そうしたこともあり、平成29年度においては5月から公募が始まりますが、確実性を高めるためには早め(4月中目安)に診断機関などに相談することが重要です。
なお、本補助金を受けたい場合は、当センターにおいても診断機関を紹介することが可能ですので、ご希望の方はお問い合わせフォームにてご連絡ください。
応募件数 | 採択件数 |
---|---|
606 | 557 |
表2 出典:低炭素エネルギー技術事業組合資料より作成
過去の事例、ピークシフトやインバーター導入で省エネ対策
これまでの事例として、例えばコネクタ、ICソケットを製造する企業の省エネ対策を見てみます。このケースにおいては、既に空調負荷対策、水銀灯のLED化などの省CO2対策を実施してきましたが、一層の対策実施の知見を得るため、省エネ診断を受けた背景があります。その結果、クリーンルームの運用改善を実施するほか、ファンのインバータ化やデマンドピーク対策により、計約170t-CO₂/年の削減が可能であると試算されました(図2)。これは一つの事例ですが、様々な業種・業態の事業所が専門的な省エネ診断に基づき、改善の知見を得ることが可能です。
図2 診断事例(コネクタ、ICソケット製造) 出典:低炭素エネルギー技術事業組合
省エネ診断を受けた企業、省エネ設備の投資も3分の1が補助
上記の省エネ診断を受けた事業所については、省エネ設備を導入すると対象経費の3分の1(中小企業は原則として2分の1)の補助を受けることも可能です。高効率空調機への更新など、診断の提案に基づいた低炭素機器の導入や運用改善等の対策を実施することで、CO2の年間排出量を10%以上(中小企業以外は20%以上)削減できる事業者が対象となります。下記の図は昨年度(平成28年度)の補助事業概要ですが、29年度も近い形になることが想定されます(図3)。
図3 平成28年度の事業による基本要件 出典:低炭素エネルギー技術事業組合
設備導入に対する補助金の公募は2度あり、一度目は5月開始、そして2回目は8月開始の各々ともに一ヶ月間です(表3)。なお、補助の対象となる経費は、当該事業における①本工事費(材料費・労務費・直接経費・共通仮設費・現場管理費・一般管理費)、②付帯工事費、③機械器具費、④測量及試験費、⑤設備費、⑥事務費となります。
対象 | 条件 | 上限額(税別) | 公募期間 |
---|---|---|---|
CO2削減ポテンシャル診断事業を受診した事業所 | CO2の年間排出量を10%以上(中小企業以外は20%以上)削減 |
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表3 出典:低炭素エネルギー技術事業組合資料より作成
設備投資の補助、昨年は111件の応募があり72件が採択
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